自分の趣味と日課は、昔のテレビ番組情報誌に掲載の、いま現在と同月同日の番組表を眺めること。当時の番組に想いを馳せたり、スカパー!での再放送録画やソフト化されているものを持っているのならば、当時の気持ちになって観てみたりすることを楽しみにしている。

 

いにしえの人は、赤鉛筆で放送前に観たい番組を囲ってチェックしていた

これぞ!正しいテレビ番組情報誌の使い方で、いまとなっては味がある

 

先日の5月25日、その39年前である同月同日の1985年5月25日(金)の番組表を眺めていて、日本テレビ金曜8時『太陽にほえろ!』第650話「山村刑事左遷命令」と後時間帯のテレビ朝日9時『特命刑事 ザ・コップ』第6話「さらわれた女を追え!」が同じ児玉進の監督回であることに気付く。

 

ご存じ、『太陽にほえろ!』は年柄年中休みなしに放送していて、しかも手間がかかるフィルム撮影であったので、制作スケジュールに追われていたものの、それを軽減するため、二班体制の撮影チームを同時で進行(もちろん二本撮りで)させていたことから、フィルム撮影に比べて簡易なVTR収録のドラマと同じように、一か月前~三週間前に撮影したものを放送出来たワケなのである。

 

一方、『特命刑事 ザ・コップ』の成り立ちはかなり特殊。アクション刑事ドラマなのにもかかわらず、当時のスタンダードである、劇場用映画と同じフィルム撮影ではなくてVTR収録であった。その理由は、制作プロが元TBSのドラマディレクターだった人物が興した会社のテレキャストが担当していたことから。

 

 

さらに、以前から何度も言及していることではあるが、あらためて説明させてもらうと、当初から1985年春改編期にテレビ朝日系金曜9時枠での放送開始を予定したものの、スケジュールの関係で放送前年の同時期に全13話分の撮影が行われていて、その撮影終了後に制作プロのテレキャストが倒産してしまったことからキャストとスタッフに未払い分のギャラが発生してしまい、制作局の朝日放送がそれを負担して放送に漕ぎ着けたものなのである。

 

同じ刑事ドラマながら作品作りの体制が全く違うのに、どちらも児玉進が監督をやっていて、それも同日の放送だったという奇遇さ。

 

1980年代半ば、フィルム撮影とVTR収録のテレビドラマは半々ぐらいであったろうか。以前までは、フィルム撮影ドラマの監督は映画撮影所出身で、VTR収録の演出(監督)はテレビ局の自社制作だけではなく制作プロのでもドラマ制作部署出身によるディレクターと棲み分けされていたのだけど、1980年代以降、VTR収録作品の比率が多くなるにつれ、フィルム作品専門だった監督も多く流入してきた。

 

『特命刑事 ザ・コップ』は他にも西村潔、雀洋一といった映画撮影所出身でフィルム撮影の劇場用映画・テレビドラマ作品を撮ってきた監督を起用している。NHK以外、時代劇とアクション&刑事ドラマのジャンルはまだまだフィルム撮影がスタンダードではあったが、『特命刑事 ザ・コップ』と同じ1985年春開始の『刑事物語’85』もVTR収録だったりするなど、その端境期に入っていたことを象徴している。

 

『刑事物語'85』を知っているかい?、刑事ドラマ下火のなかで放送された失敗作 | 茶屋町吾郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

でまぁ、“児玉進監督によるフィルム撮影ドラマとVTR収録ドラマが同日に放送されていた!”をネタにして今回の記事を書いてみようとして、いつも参考程度にではあるが、ウィキペディアで『特命刑事 ザ・コップ』の項目を何気に開いてみたら…

 

特命刑事ザ・コップ - Wikipedia

 

なんと驚いたことに、1985年5月25日放送分の回が、雀洋一監督回「たの死い旅をとめろ!」になっているのである。他の回もかなり放送順が違っていた。

 

テレビ番組情報誌とウィキペディア、果たしてどちらが正しいのか?、これはもう当日発行の新聞ラテ欄を探るしかないわけで、図書館まで行って調べたところ…

 

やはり番組情報誌のほうが正確であり、ウィキペディアは初期と末期の二話ずつだけが正確であって中間の九話分がまるで間違っていた。以下の黄色で示した範囲がそれである。

 

その書き込み履歴を見ると、2007年3月15日に『特命刑事ザ・コップ』自体の項目が作られ、2009年11月2日に「放送リスト」の欄が各放送日の視聴率とともに追加で書き加えられ、2018年12月20日に各放送日の視聴率が削除されている。間違っている「放送リスト」の各話放送順は2009年11月2日の書き込み分からずっと変わってない。

 

十五年もの間、間違っているものが載っているわけであり、誰もそれを訂正していないのである。

 

なぜ、このようなことが起きているのか?

 

まず、『特命刑事ザ・コップ』は、ソフト化がされていない、スカパー!でもやったことがない、そして本放送以降は2000年代以前に地方局でひっそりとしか再放送されただけの視聴困難作品で検証が叶わないのである。

 

「特命刑事 ザ・コップ」が観たい! | 茶屋町吾郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

また、この間違った放送リストもいくつかの推測が立つ。一番目は悪意を持って間違ったものを記載。二番目は地方局でやった再放送分を録画していてその放送順序を本放送分と同じだと思って記載。三番目は放送録画ではなくて全話の台本を持っていて、そこに記載されている、ザ・コップ=暗殺官の結成編第1・2話と完結編第12・13話以外の各話における制作ナンバーが本放送分と違っていてそれを記載。

 

まあ、そんなところである。

 

ウィキペディアはやはり信用ならないし、それを鵜呑みにしてこういった記事を書いていくのは危ういことだとあらためて肝に銘じることであった。

 

 

【だん吉・なお美のおまけコーナー】

 

 

これは『特命刑事 ザ・コップ』制作前年の1983年にテレキャストが制作してTBS系(制作局は毎日放送)で放送された『ひと夏の復讐』という連続ドラマの番組宣材写真(第1話のもの)。何者かに夫を殺された平凡な主婦が復讐鬼となって夫を謀殺した奴らを探し出して次々と殺していくアクションサスペンス&ミステリー。十朱幸代が復讐鬼となる主婦役で、『特命刑事 ザ・コップ』にも出る宅麻伸がその弟役で出演している。こちらもまた視聴困難というか、誰も知らない。