架空書評 -2ページ目

『旅館ギコ屋の名物』

 木下華太郎『旅館ギコ屋の名物』いろいろあります堂


 旅館ギコ屋の土産物や名物について、その実物の写真と簡単なレビューを記載したブックレットがこの度、発売された。あらためて見ると、ギコ屋にもいろんな土産物があることに驚かされる。中には、普通に宿泊するだけではお目にかかれないレアな土産物もあるようである。


 例えば、熱くてホカホカの「幽霊饅頭」。幽霊を旅館の名物にするというニダー的発想の元にできた本商品は、ギコ屋の幽霊さん好きの人にはたまらない土産物である。温かい饅頭なのであるが、三角巾をつけたモナーの顔が饅頭の形に掘り込まれている。これを買ったからといって、幽霊さんに取り付かれることはない。


 また、旅館ギコ屋の土産物コーナーでは、逝きのいいギコが売られており、値段がいろいろに変動するけれども、これもまた密かに売れているそうである。


 さらにまた、ギコ屋名物のニラ茶のパックがある。これは飲んでもいいし、お風呂に入れてもいいという優れもののお茶であり、あのニラチャエル様御用達の由緒あるお茶である。


 この本を見ると、どれか一つは手に入れてみたいと購買欲が増すので不思議である。是非、ギコ屋に行って実物を手にしてくだされ。

『モナーは妖怪か?』

 木村三太郎『モナーは妖怪か?』波平書店


 妖怪学博士木村三太郎氏が、モナーは妖怪であるかどうかを検証した本である。木村博士は目玉の親父に師事し、妖怪を外から研究するだけでなく、内から参与観察もした学者である。一応断っておくが、生粋の人間である。


 木村博士が、モナーは動物ではなく、妖怪ではないか、と疑ったのには二つの理由がある。第一に、顔がぬらりひょんのようで現世を超越しているその様態ゆえに、第二に全国にあるモナー地蔵の存在である。


 モナーの顔が、妖怪ぬらりひょんに似ており、何らかのつながりがあるのではないかという指摘は、モナー学の研究者からも指摘されていたことである。木村博士が丹念に文献を調べ、またモナ村モナの助さんの協力を仰いで研究したところによると、これは単なる偶然の一致であるようである。


 第二の点であるが、日本全国のあちこちにモナーの顔をしたお地蔵様モナー地蔵が点在しており、妖怪でなくとも、世俗を超越した存在ではないかという疑義を呈する事実がある。これについて古代からの文献を調べてみると、何らかの事件があって、しかし同時にモナーのような存在を目撃した人が、事件を記憶するために、モナーの顔をお地蔵様に採用したとのことである。このことから、少なくとも、モナーの顔を現実化させるような存在はいた、と類推できる。


 世の中にはモナーをペットにしたいと考えている御仁もおるようだけれども、どうも調べてみると、ペットというより、座敷童の存在に近いようである。


 木村博士は、「モナーは動物の進化した形にしては、あまりに人間に近く、人の想像物か、人が幻視した超越した存在であろう」と結論づけている。それゆえ、書名が疑問形になっている。モナーは珍妙な動物か、それとも妖怪か。読者の識見が俟たれる。

『満腹の技法』

 モララビッチ・カレーライスキー『満腹の技法』貯波里出版


 ポンチョンゲン国のカレーライスキー氏の『満腹の技法』は、カレーライスキー氏が方々に発表した論文・文章を集めたものである。最初の文章は「腹八分目」で、カラット・ベンの作品についての論評である。人間の実存の一つの形を表している満腹した人間の叫びについて書いてある。


 その他、多くの人に知られていないが、力のある作家へのインタビューが収録されており、カレーライスキー氏の卓越した問いかけが面白い。


 その次には、「あるべき満腹形態」と題する長大な論文が収録されており、満腹のあるべき姿について、古今東西の文献への詳細なレビューに基づいて考察している。


 なお、この本を読んでも満腹になるわけではなく、読めば読むほどお腹が空く。読む際には、食物を手元に置いておくとよい。また、なけなしの金でこの本を買うのはお勧めしない。本を窓から投げ捨てたくなること請け合いである。