「くぎぬき」(ヤットコ)や「めがね」は2つにわけることのできない一体であって、なんで複数形であらわさなければならないのか、日本人にとって理解しにくいことだと以前にかいた。
つぎのみだし語には、ごんざは訳語をかけなかった。
「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
「носилки」(nosilki) 「吊台、乗りかご、担架」『 』
ロシア語のことはよくわからないけど、担架は左右2本の棒に布をわたしてつくるから、複数形になっているんだろう。
「担架」とおなじものは江戸時代の日本にはない。
あるけない人をはこぶ時は、たぶん戸板にのせていただろう。
日本ではみたことがないものだけど、「нос–」(nos-)(はこぶ、もつ、身につける)という動詞から派生したことばだということは、形態素解析マニアのごんざにはわかっていたはずだ。
もし、日本人をまどわす複数形ではなく「носилка」(nosilka)という単数形の形になっていたら、ごんざは『こし』という訳語をかけたかもしれない。
「коляска」(kolyaska) 「馬車」 『こし』
「колесница」(kolesnitsa)「美装の馬車」 『こし』
日本国語大辞典 「こし(輿) ①乗物の一種。人を乗せる台の下に二本のながえをつけて、肩にかつぎ上げ、または手で腰の辺にさげて行くもの。台の四隅に柱を立て、屋根をつけた四方輿、側面を覆った網代輿、筵輿、板輿、塗輿などの種類がある。」