ごんざの「ほとけ」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

「ロシア語」(ラテン文字転写)  「村山七郎訳」   『ごんざ訳』

「богъ」(bog')          「神」      『ふぉどけ』
「богоданный」(bogodannyi)   「神の賜わった物」『ふぉどけんたもったもん』
                             (仏のたまわったもの)
「богозданный」(bogozdannyi) 「神のつくりたる」『ふぉどけんしやったもん』
「многобожiе」(mnogobozhie)   「多神教」    『ふぉどけんうかこ
                             (仏のおおいこと)

「хр'стосъ」(khristos')      「キリスト」   『くりすとすち』

 ごんざの訳語の『ふぉどけ』は、全知全能の神格という意味でつかわれている。
 ロシア語の「богъ」(bog')(神)にあたる日本語がわからないから、くるしまぎれに『ふぉどけ』という訳語をつけたのではない。
 また、ごんざは(神)という意味で『かみ』ということばをつかっていない

「невЕрный」(nevernyi)  「不信心の」  『ふぉどけしたん』(仏をしらない)
「невЕрю」(neveryu)    「不信心である」『ふぉどけしたん』

 このふたつのロシア語を直訳すると(信じない)という意味で、「богъ」(bog')(神)ということばがはいっていないのに、ごんざは(「神を」信じない)という意味であることをしめすために『ふぉどけ』ということばを補足してつかっているのだ。