ごんざの「オス」と「メス」1 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

 動物の名前で、オスとメスがロシア語の別の形で両方ともみだしになっているものが全部で12組ある。
そのうち、ごんざの訳語が『お~』『め~』で対応しているもの
『おんどり』『めんどり』
『おばと』『めばと』
『おねこ』『めねこ』

『~』『め~』で対応しているもの
『やまいん』『めやまいん』(オオカミ)
『からす』『めからす』
『が』『めが』(ガチョウ)
『くま』『めくま』

『~』『おなご~』で対応しているもの
『とら』『おなごとら』(ライオン)
『ふつじ』『おなごふつじ』

そのほか
『うしのこ』『わかうし』(わかい牛のオスメス)
ま』『だま』(馬)

区別していないもの
『うし』『うし』

 『おなご~』は、ヒトにつかうべきことばで、ごんざが日本でみたことのない、なじみのうすい動物につけたのだろう。
 牛のオスメスは鳩や猫よりもずっと大切だとおもうのだけれど、大型獣の肉食や乳製品の利用が一般的でなかった江戸時代の人にとって、牛は農耕用の動物だ。船のりたちにとっては、牛のオスメスはあまり意味がなかったのかもしれない。

ごん:師匠は、クマのオスメスが、一目みてわかる?
ボグ:いや、わからない。
ごん:鳩のオスメスは?
ボグ:わからない。
ごん:オスでもメスでもかわりのないものでも、よび名だけ別っていうのは面倒じゃないの?
ボグ:いや、神様がそういうふうにつくったんだから、そういうふうによぶんだ。