先週あたりから少しずつ袋を開けてみていたのだが、今日11月6日に残っていた袋も含めて、全部開けて収穫した。


カラスアゲハとアゲハに合計5つ以上幼虫のものもあったが、それ以外は全部蛹になっていた。合計数は下記の通り。

幼虫は袋の中に残してあるが、少し遅すぎるため、病気かも知れない。



カラスアゲハ 67蛹


アゲハ 13蛹


クロアゲハ1 蛹

カラスアゲハは卵や孵化幼虫を採集し、少し室内で育てた後に袋に入れたものや袋をかけた場所にいたものである。アゲハやクロアゲハは意図的に飼育したものではなく、袋の中に入っていて勝手に成長し勝手に蛹になったものである。

意図せずに入っていたものとしては、寄生ハチの類も考えられ、したがってこれらの数は寄生されたものも含んでいる可能性は十分ある。



収穫した蛹に、面白い傾向があることに気付いた。



カラスアゲハの蛹の内訳


ハマセンダンの葉柄に着いていたもの 40蛹

ハマセンダンの葉面に着いていたもの 6蛹

ハマセンダンの枝先に着いていたもの 1蛹

カラスザンショウの葉柄に着いていたもの 7蛹

カラスザンショウの葉面に着いていたもの 11蛹

袋に着いていたもの 2蛹



アゲハの蛹の内訳


ハマセンダンの葉柄に着いていたもの 3蛹
ハマセンダンの葉面に着いていたもの 0蛹
ハマセンダンの枝先に着いていたもの 0蛹
カラスザンショウの葉柄に着いていたもの 1蛹
カラスザンショウの葉面に着いていたもの 1蛹
袋に着いていたもの 8蛹



ハマセンダンの方がずっと多いのは、主にハマセンダンの葉からカラスアゲハの卵や幼虫を採集し、ハマセンダンで育ててハマセンダンに袋がけしたことに対応している。アゲハの食樹選好とは無関係。


ハマセンダンでは葉柄に多く、カラスザンショウでは葉面の割合が高くなるのは、葉の大きさの違いによるものだろう。ハマセンダンの葉は小さく安定して蛹になりにくいが、カラスザンショウの葉は体を安定させやすいと言うことだ。

このような違いはあっても、両者には大きな共通点がある。冬になれば枝から離れ、落下すると言うことである。


枝先(幹の先端近く)に着いていた蛹は、放置すれば落下せずにそのまま枝先に残る。


袋に付着していた蛹は、他の幼虫が歩き回っている場所を避けて袋で蛹になったと言うだけの可能性もあるが、葉柄や葉を適当な蛹化場所として認めなかった蛹も含まれるだろう。本来なら自力で木を降りて、周囲で適当な蛹化場所を見つけて蛹になるつもりが、袋が閉ざされていたために外に出られず、やむなく袋に付着して蛹になった蛹である。これを落葉後も落下しない蛹に含まれると考えると、落下しない蛹はカラスアゲハでは67個の蛹の内の3個のみ、アゲハでは13個の内の8個である。


袋の中と言う人工的な条件であり、この結果がそのまま自然条件と同じと考えるのは無理があろうが、カラスアゲハは9割以上が冬になると落下する位置で蛹になったのに対し、アゲハではこのような蛹は4割にも満たなかった。これは大きな違いではあるまいか。


これは両種の蛹化習性に対応したものであろう。ミカンなどの低木を主要なホストとするアゲハは自力で木から降りて蛹化場所を探す。それに対して、カラスザンショウ、キハダなどのかなりの高木も利用するカラスアゲハは、樹上で蛹になり、落葉と共に地表に落ちるのだろう。

冬の落葉樹林の林床はフカフカの落ち葉におおわれていることが多く、これはそれほどリスキーな作戦ではない。

実際、ギフチョウの時期にたまたまキハダの木の下にあった石に座り、地面に緑色の物体が落ちているのを見つけて手に取ってみた所、カラスアゲハの蛹だった経験がある。まさしく地面に転がっていたので、あれは木から落ちてきた蛹だと思う。


家にいるだけで、カラスアゲハとアゲハがこんなことを教えに来てくれた。この夏から秋はミヤマカラスアゲハの採集は不調に終わったが、これはまさしく僥倖、大収穫と言えるだろう。


それにしても自宅でカラスアゲハの蛹を67個採集。途中で多少とも幼虫が死亡したとすると、産卵数は80、もしかしたら100近い。こんなことってあるんかいな。


まさしくアタオカな数だ。標本にするには多すぎる。この辺の話題はまた後日。