妻への手紙 -2ページ目

心にはもう、とっくに雪乃が巣食っていたのだが

大学は、冬休みに入り、
僕は、夏休みと同じようにほとんど誰もいない大学へ、毎日、サッカーの練習だけをしに出かけ、相変わらず、高橋や三本木とくだらないことを話して、
飯を食い、夜になったら眠る。
―そんな日々を送っていた。

けれど僕は
それまでの僕とは明らかに違っていた。
認めたくはなかったけれど、僕は遊園地へ出かけた日を堺に、
はっきりと、雪乃に恋をしたのだ。

四六時中、いつも、雪乃のことばかり考え、
高橋の口から雪乃の名前が出るたびに、なぜか緊張さえしていた。


そしてそれと同時に、
僕は加奈に対して自分がとんでもないことをしているのではないかと、
罪悪感を抱くようになっていた。

もちろん、僕は雪乃とどうこうあったわけではない。

それでも、加奈と上手くいっているふりをしながら、心の中で雪乃を想う。
それが、どうしようもなく、汚い気がして、それでいて、加奈に自分の気持ちを伝えることで、加奈を傷つけてしまうことが、怖かった。

いや、正確に言えば、加奈を傷つけるのが怖いのではなく、傷ついた加奈を見ることで、自分自身が傷つくことを恐れていたのだ。


おまけに、加奈には「看護婦になるための試験」が近づいていた。
それをいいことに僕は、
“勉強の邪魔になるといけないから”
と言って加奈と会う事を避け、
そのくせ、加奈にとって大切な時期に動揺を与えてはいけない、
などと自分の心に言い訳をして、
ずるずると加奈との関係を続けていた。


挙句に、そんな自分の行動を、加奈に対する優しさとさえ、思っていたのだ。
今考えれば、勘違いも甚だしいのだが。

そして、
心にはもう、とっくに雪乃が巣食っていたのだが。