追悼・スペシャルウィーク | POG is the spice of life !! 

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Paper Owner Game(POG)と競馬をメインに気分次第に綴っております。

スペシャルウィーク
スペシャルウィーク posted by (C)M-Kou

 

 

先日2018年4月27日、競馬の楽しさを教えてくれた1頭のサラブレッドが旅立ちました。

 

 

生きとし生きるもの、いつかは終わりが来る事は避けられず。

しかし、その報を目にした時はやはりショックが大きく、まだあんなに元気だったのにと

悲しい思いや、現役当時の素晴らしいレースでの感動の数々が頭に駆け廻りました。

 

 

その馬は天才・武豊騎手に初の日本ダービーの栄冠、そしてジャパンカップのタイトルを

もたらし、天皇賞・春秋制覇を成し遂げた名馬

 

 

 

スペシャルウィーク 勝負服(スペ)

 

 

 

とにかく、その容姿も恰好良く、鞍上の武豊騎手と相まって正に 「主役」 という言葉が

自分にはしっくりくる馬でした。そんな 「主役・スペシャルウィーク」 を追悼として改めて

振り返りたいと思います。

 

 

 

 

- 出生、幼少期 -

 

1995年5月2日、北海道沙流郡門別町の日高大洋牧場にて誕生。

父はサンデーサイレンス、母はキャンペンガールで5番目の仔だった。

 

母キャンペンガールは本馬を宿しながら疝痛を幾度も起こし、衰弱した状態で出産。

産後5日でこの世を去り、母子で過ごす時間は全くなかったという。

 

母を失った本馬は、ばんえい競馬用の重種馬の桃姫を乳母としてあてがわれたが

乳母の気性が激しく馴染む事なく、幼少期の殆どを人間の手によって育てられた。

 

 

駲致は、NZからワーキングホリデーで牧場にやって来ていたプライス・ティナという

女性が担当、彼女から沢山の愛情を受け、順調に駲致をこなす。

 

駲致を終え、臼田浩義オーナーと白井調教師の要請でノーザンファーム空港牧場

にて育成が行われた。

 

サンデーサイレンス産駒は激しい気性の馬が多いが、スペシャルウィークが人に

従順だったのは、この幼少期の人間との関わりが非常に大きかったと思われる。

 

 

 

- 現役競走馬時代 -

 

・ 3歳(現2歳時)

 

1997年秋頃、栗東・白井寿昭厩舎へ入厩。

オーナー直々の願いで、白井調教師が武豊騎手に騎乗依頼を行い主戦騎手となる。

 

同年11月29日、阪神競馬場7Rの3歳新馬(現2歳新馬)にてデビューし、快勝。

デビュー戦前、白井調教師が鞍上・武豊騎手に「ダンスパートナーに似てるだろ?」

尋ねると「ダンスインザダークに似ていますね」と返したエピソードは有名で、この時点

で2頭のG1馬に例えられた事は、府中での大舞台を意識した発言だったと思われる。

 

 

 

・ 4歳(現3歳時)

 

2戦目は年明けすぐの京都競馬開催、白梅賞(500万下)に出走するも、地方デビュー馬

アサヒクリークにまさかのハナ差惜敗。先のクラシック出走へ向け賞金加算が必須だった

だけにこの敗戦は大誤算も、武豊騎手の進言できさらぎ賞(G3)へ向かう事に。

 

3戦目のきさらぎ賞(G3)では何の問題も無く、後にダービー2着するボールドエンペラーを

子供扱いし、あっさり重賞初制覇を達成。

 

4戦目は皐月賞TR弥生賞(G2)に出走。

以後クラシック戦線でライバルとなるセイウンスカイ、世界的超良血馬キングヘイローらを

相手に、ここでも完勝し重賞連勝を飾る。鞍上・武豊騎手はこのレース3連覇達成。

 

 

5戦目、牡馬クラシック第1弾となる皐月賞(G1)を単勝1.8倍の支持率で向かえる。

+10kgの馬体重、最内のグリーンベルト、大外枠など様々な要因が重なり、最速の末脚を繰り

出すも、弥生賞で下したセイウンスカイ、キングヘイローに先着を許す結果に。

 

6戦目、迎えた大一番、日本ダービー(G1)

皐月賞での敗戦からか単勝2.0倍と前走の時よりは支持率は下がったが、1番人気となった。

皐月賞の時から馬体重は-8kgで468kgと絶好の仕上げを施され、その仕上げ通りの走りで

2着ボールドエンペラーに0.9秒差を付ける圧勝、第65代日本ダービー馬となった。

 

当時、「武豊騎手はダービーを勝てない」等のジンクスが囁かれていたが、スペシャルウィーク

でのダービー制覇でジンクスに終止符。いつも冷静なイメージのあった当騎手が、ダービーで

の最後の直線、興奮からか鞭を落とすアクシデントがあり、必死で追い通した事から、如何に

ダービーを意識していたかを物語るエピソードとなっている。

 

この日本ダービー制覇を、スペシャルウィークの駲致を担当したティナさんもNZで知り、大いに

喜び、牧場へ喜びの報を伝えたという。

 

 

ダービー後は放牧へ出され、ノーザンファームにて秋に向け調整。

この時、骨折休養で当牧場で調整されていたグラスワンダーと共に調整されている姿が

DVDの映像や写真集などに納められており、当時そんなに仲が悪くはなかった模様。

 

 

秋初戦となる7戦目は京都新聞杯(G2)

+10kgの馬体重で軽めの調整ながらもキングヘイローを相手にクビ差で勝利を収める。

この時もう1頭のライバルであるセイウンスカイは、古馬相手に京都大賞典(G2)を制し、共に

菊花賞の舞台に進んだ。

 

8戦目、牡馬クラシック最後の1冠、菊花賞(G1)

単勝1.5倍の支持を受けるも、皐月賞と同じく最内のグリーンベルトをスイスイ気分良く逃げる

横山典騎手のセイウンスカイを最後まで捉えられず2着。とは言え、セイウンスカイも古馬撃破

後に3000mの世界レコードで駆け抜けた事を考えると、脚質、完成度の差を感じたレースだった。

 

 

9戦目、古馬との初対決となるジャパンカップ(G1)は、主戦の武豊騎手が後の日本ダービー馬と

なるアドマイヤベガに騎乗した新馬戦にて、斜行の判定を受け騎乗停止に。代打で岡部騎手が

騎乗するも、同3歳馬エルコンドルパサー、古馬エアグルーヴに完敗。

 

この年の有馬記念には、武豊が騎乗するエアグルーヴが出走することもあり、鞍上を変えてまで

出走する事はしないとの事から休養に。同12月には出身牧場である日高大洋牧場が火災で全焼

するという悲しい事件もあった。

 

 

 

・ 5歳(現4歳時)

 

10戦目は主戦武豊騎手の海外遠征のタイミングと重なり、AJCC(G2)にオリビエ・ペリエ鞍上で

出走。追い切りに跨ったペリエ騎手が余りにも動きが悪く「本当にダービー馬なのか?」との

疑問を投げかけたがレースは快勝、レース後に「本当にダービー馬だった」と訂正している。

思い起こせば、調教でのズブさはこの頃から出てきており、この秋にそれが顕著になる。

 

11戦目は2戦ぶりに主戦武豊に鞍上が戻り阪神大賞典(G2)に出走。

人気は菊花賞の敗戦からか、前年の天皇賞(春)の勝ち馬メジロブライトに次ぐ2番人気も、終始

メジロブライトの前で競馬し、先行抜け出しで長距離王者に完勝。

 

 

12戦目は天皇賞(春)にて前年王者メジロブライト、菊花賞で敗れたセイウンスカイとの対決。

前哨戦同様に先行策でセイウンスカイの後ろ、メジロブライトの前で競馬をして、直線入り口で

セイウンスカイを交わし、最後の最後までメジロブライトに交わされる事なく日本ダービー以来の

G1制覇となった。

 

阪神大賞典の3走前の岡部騎手から先行策で競馬をする様になり、自身より後ろの馬に差された

事がないから先行策が板に着いた様に思えたが・・・それは次走で打ち砕かれる事になる。

 

 

13戦目は宝塚記念(G1)にて、栗毛の怪物グラスワンダーとの初対決。

ここ3戦で他馬を圧倒した先行策で競馬をするが、相手はスペシャルウィークのみと決め込んだ

グラスワンダーの鞍上・的場均騎手の徹底マークに合い、直線で3馬身差を付けられ完敗。

それも、自身より後ろで競馬をしていた馬に交わされての敗戦だった。

 

負けたとは言え、勝ち馬と共に本馬も夏負けしていたとの事や、3着ステイゴールドと7馬身差が

あった事を考えると、如何に2頭が強かったかが判る。このレースを制した場合は秋に凱旋門賞

遠征プランも上がっていたが、この敗戦で消滅。年内は国内に専念し、有馬記念で引退を発表。

 

 

14戦目となる秋初戦は京都大賞典(G2)に出走するも、勝負付けが済んだはずのメジロブライトや

昇り馬ツルマルツヨシに敗れ、年下のテイエムオペラオーにも先着を許してしまう。夏負けが尾を

引き、調教でも良い頃の動きが感じられず「終わってしまった馬」などと言われたりもしたが・・・

ちなみに、このレースでも先行策を取っており、以後先行策での競馬はしなくなった。

 

 

15戦目は天皇賞・春秋制覇を賭け、天皇賞・秋(G1)へ出走。

追い切りでも500万下の馬に遅れるなど、相変わらずズブさが見られた事から主戦・武豊騎手も

「ピークが過ぎたのかも」と弱気な発言をしていたが、白井調教師は馬にやる気を促す為、究極

の仕上げを施し、日本ダービー出走時と同等の馬体重まで絞り込みレースへ送り込んだ。

 

ここ6戦で先行策を取ってきたが、この日は以前同様の後方待機での差しの競馬に徹する。

直線で13頭を目の覚める様な末脚で一気にごぼう抜きして1分58秒フラットのレコードで勝利。

G1レース3勝目、史上2頭目の天皇賞・春秋を達成した。

 

 

16戦目は昨年の雪辱を晴らす為、ジャパンカップ(G1)に出走。

エルコンドルパサーを凱旋門賞で破ったモンジュー、英国ダービー馬ハイライズなど海外の

強豪達が集った豪華な1戦。パドックで武豊騎手を向かえた白井調教師が「ダービーと同じ

馬体重や、豊おめでとう」と言ったエピソードは有名で、その通りに強豪相手に鋭い末脚を

繰り出し、ジャパンカップ制覇。武豊騎手にダービーに続く初タイトルをプレゼントした。

 

レース入線直後、フジTV三宅アナが「やはり日本総大将!スペシャルウィークが勝ちました!」

というフレーズが、如何に凄いメンバーが揃っていたかを物語っている。

 

 

17戦目の引退レースとなる有馬記念(G1)では、再び栗毛の怪物グラスワンダーと対峙。

宝塚記念では徹底マークされ直線で3馬身差をつけられた相手に、今度は間逆の徹底マークで

挑み、最後の最後2頭の馬体が並んだ所でゴール。超スローペースの競馬で究極の瞬発力勝負

となった。

 

グラスワンダーの鞍上・的場均騎手は「交わされた」と思い待機所2着の所に馬を入れ

「勝った」と思った本馬鞍上・武豊騎手はウイニングランで場内を沸かせたが、電光掲示板に

出た馬番には1着7番グラスワンダー、2着3番スペシャルウィークを示す結果に。

 

写真判定の末、わずか4cmの差でグラスワンダーに屈する形で競走生活にピリオド。

この時、主戦の武豊騎手が「競馬に勝って、勝負に負けた」とコメントしているのが感慨深い。

 

 

 

・ 6歳(現5歳時)

 

引退式は1月頭に2度行われ、関西、関東のファンに別れを告げ種牡馬入り。

 

 

 

[ 主な競走成績 ]

17戦10勝 (10. 4. 2. 1)

 

[ 主な勝ち鞍 ]

G1 : 日本ダービー、ジャパンカップ、天皇賞・春秋

G2 : 阪神大賞典、AJCC、京都新聞杯、弥生賞

G3 : きさらぎ賞

 

[ 受賞歴 ]

1999年 JRA特別賞

 

 

 

 

- 種牡馬時代 -

 

【 スペシャルウィークの血統表 】

 

スペシャルウィーク
スペシャルウィーク posted by (C)M-Kou

 

スペシャルウィーク
スペシャルウィーク posted by (C)M-Kou

 

 

[ 繋養歴 ]

・ 社台スタリオンステーション 2000 ~ 2011年、2012年(途中在厩)

・ ブリーダーズスタリオンステーション 2012年

・ レックススタッド 2013 ~ 2017年

 

 

[ 血統 ]

父は日本競馬を大きく変えたスーパーサイアーのサンデーサイレンス、母キャンペンガールは

小岩井農場の名牝フロリースカップからシラオキに連なる日本の名牝系の出身で、同牝系での

活躍馬は古くはコダマ、近年ではシスタートウショウ、ウオッカなど活躍馬多数。

 

 

[ 産駒 ]

これまでグレード制重賞勝ち馬を19頭輩出。

シーザリオ、ブエナビスタ、ゴルトブリッツ、ローマンレジェンド、トーホウジャッカルのG1馬が5頭。

 

父系としてはリーチザクラウン、トーホウジャッカルがこれからどれだけ枝を伸ばせるか。

シーザリオの仔であるエピファネイア、リオンディーズが種牡馬入りしており、今後も日本競馬

にスペシャルウィークの血を持つ活躍馬が多数現れそうなので、血が残るのは嬉しい限り。

 

 

リーチザクラウン
リーチザクラウン posted by (C)M-Kou

 

トーホウジャッカル
トーホウジャッカル posted by (C)M-Kou

 

リオンディーズ 超良血のお坊ちゃん登場
リオンディーズ 超良血のお坊ちゃん登場 posted by (C)M-Kou

 

 

 

2014年の7月には、函館競馬場にて「両雄再会」としてグラスワンダーと共にパドック展示

され、多くのファンを喜ばせるイベントも行われました。

 

 

 

 

現役時代ノーザンファームで一緒に並んで仲良く調教してたのに、何故か

 

「スペシャルウィークが栗毛の馬を見ると興奮する」

 

との事で、現役時代の2度の敗戦に余程恨みを持っているのか!?何て思ったり。

当時の様子は、競走馬ふるさと案内所さんの馬産地ニュースの記事をご覧あれ。

 

 

 

 

- 種牡馬引退後 -

 

2017年2月から生まれ故郷の日高大洋牧場にて功労馬として戻りのんびりと余生を

送っていたが、2018年4月末に放牧中の転倒で腰を強打し経過観察中に急死。

誕生日を目前に23歳で天へと昇った。

 

 

 

 

 

スペシャルウィーク
スペシャルウィーク posted by (C)M-Kou

 

スペシャルウィーク
スペシャルウィーク posted by (C)M-Kou

 

 

こうやってスペシャルウィークの事を振り返ってみましたが、やはり 「主役」 だなぁと。

 

 

クラシック戦線ではセイウンスカイ、キングヘイロー

   古馬となり長距離戦線では先輩のメジロブライト

      中距離路線ではグラスワンダーと、エルコンドルパサーを破ったモンジュー

 

 

漫画のヒーローの様に、次から次へとライバルが現れ対峙する姿は正に「主役」

 

毎回、勝ってきた訳ではないけれど、改めて素晴らしいライバル関係があったから

こその 「主役・スペシャルウィーク」 がより輝いて見えるもの。

 

 

 

スペシャルウィーク
スペシャルウィーク posted by (C)M-Kou

 

 

自分が競馬に嵌ったのがグラスワンダーの走りを見て、98年クラシック世代前後の

馬達との素晴らしい走りを見たからなので、最大の好敵手であるスペシャルウィーク

が天に昇った事は、悲しい限り。。。

 

ただ、種牡馬生活を終え、自分の生まれ育った場所で最後を迎える馬がそう多くは

ない事を考えると、スペシャルウィークはとても幸せだったと思います。

 

2年前の馬産地巡りで実馬を見れた時の嬉しさは、今後も忘れる事はありません。

 

 

 

そんな沢山の思い出や、喜びをくれたスペシャルウィークには感謝の念しかなく

彼への手向けとして、誕生日の5月2日に間に合わせる様この記事を書きました。

 

 

先に天に昇ったセイウンスカイ、エルコンドルパサー、そして母キャンペンガールと

再会し、思う存分空の上で駆け回って欲しいと思います。

 

 

スペシャルウィーク 勝負服(スペ)

 沢山の素晴らしい思い出をありがとう!!

 

 

 

 

最後に、大切に保管しているスペシャルウィークのグッズを飾っておきます。