どうしても、自然(nature)について、手つかずであることが尊ばれる昨今ですが、日本において、手つかずの自然というのは限りなく少ないと聞いたことがあります。
私が好きなトレッキングコースの一つに、氷ノ山ぶんまわしコースというのがあります。
私が好きなトレッキングコースの一つに、氷ノ山ぶんまわしコースというのがあります。
ハチ高原の高丸山から、赤倉山、天狗岩などを通って行く西側のルートです。
私はハチ北に住んでいることもあって、ぶんまわしを行く場合には、必ず鉢伏山の稜線を通って、氷ノ山を目指します。
高丸山からの草原は、なかなかハチ北でも見られないもので、新緑の季節には鮮やかな緑色のジュータンの中を歩いているようです。
ですが、このハチ高原に広がる草原は、人が作り出したものです。
毎年、春には地元の方を中心に山焼きをします。
一度山を焼くことで、すすきの根などは焼かれずに、表面のこれから出ようとする灌木などを焼き払うのです。
実は日本は、とても植生が豊かで、山を放置しておくと、そこから灌木が生え、やがて森になってしまいます。
中国山地にも多くのスキー場が存在していますが、それらはもとは放牧場だったところです。
農耕用に飼育していた牛を高原に放すために、先人たちは山を切り開いて牧場にしてきました。
当時は、牛がその草を食んで、草原環境が保たれていましたが、トラクターが出現して、牛を飼わなくなってきました。
それと時同じくして、あちこちでスキー場が開発されるようになり、ちょうど高原になっていたところにリフトをかけました。
スキー場を維持するためには、草刈りをしたり山焼きをしたりして、維持をする必要があり、草原はそれからも維持されることになったのです。
ハチ高原に絶滅危惧種のチョウ『ウスイロヒョウモンモドキ』がいます。
昔はハチ北でも確認されたそうですが、今はハチ高原ぐらいしかいないのだそうです。
このチョウは、オミナエシを餌として繁殖するチョウです。オミナエシは、草原環境に生育する植物です。ウスイロヒョウモンモドキが絶滅しかけている原因は、草原環境がどんどん失われているからです。
先にも述べたとおり、日本は植生が豊かななので、草原をそのまま放置しているとやがて森に返ってしまいます。
人が山に手を入れることで、その草原は守られるわけですから、まさに人と自然が共生する象徴といえます。
世間では豊岡のコウノトリが野生復帰の象徴として有名ですが、コウノトリも実は手つかずの自然に放り込んでしまうと、生きていけないそうです。
広い視点で見れば、人間の営みも生態系のシステムの中の一つです。
里山(SATOYAMA)という言葉は今や、世界共通語になりつつあるそうですが、人と自然が関わって営みがあるというのが、まさに里山です。
遠すぎず、近すぎず…私たちも生態系の一つと考えば私たちがとるべき行動も少し変わってくるのではないでしょうか?