私が小学6年生のときに、学校で行われた健康診断で心雑音が出たので、精密検査を受ける必要があるということで、叔父に連れられて神戸に行ったことがあります。
叔父が乗る車に乗せられ神戸に行き、いくつかの病院を回り、検査を受けました。
ちょうど、ユニバーシアードがあった年だっと思いますが、夜はサッカーの試合を見に連れていってもらい、神戸の街のきらびやかさなどに田舎者は衝撃を受けたのを覚えています。
病院の検査といいながら、そんな楽しいひとときを過ごしたのも束の間、叔父が
『帰りは一人で帰ってね』
と言われ、一転、パニックに陥りそうになりそうになってしまいました。
なぜなら、電車に一人で乗るなんて経験をしたことがなかったからです。まして、自分で切符を買ったりしたこともありません。
果たして、自分は間違わずに家にたどりつけるのだろうかという不安が一機におそってきて、楽しい思いなどぶっとんでしまいました。
新長田駅の近くの喫茶店に連れていかれ、ポケットタイプの時刻表を購入し、時刻表の見方、電車の乗り方を細かく説明してくれました。
新長田から姫路まで行き、姫路から播但線に乗り換え、和田山駅さらにそこから乗り換え、八鹿駅までの道のりです。
この年になれば、まったく苦にならない移動ですが、変なおじさんにつれていかれないだろうか、まったく訳の分からない違うところに行きついてしまうんじゃないか…
一歩間違うと死ぬんじゃないか…今思えば笑える話ですが、小学6年生の自分にとっては、そんなふう思うぐらい深刻に考えてしまいます。
姫路駅なんて行ったこともないし、果たして乗り換えホームというのはどこにあるのか…
わからない事づくしで、電車に乗っている間中ずっと緊張しっぱなしでした。
しかし、そんな小学6年生のプチ冒険は、それから以降の自分の世界観がまるで変る出来事でした。
『日本中の行きたいところにはどこでも行ける』
そんな自信を手に入れた瞬間だったのです。
以後、毎年のように、プチ冒険を繰り返すようになりました。
中学3年の時に、スキーのジュニアオリンピックで、岩手県に行くことになったときも、父と二人でそこに行きましたが、私が全部の行程を調べました。
田舎の自分たちにとって、車を手に入れた今は違いますが、そういうものがなかった人にとっては、公共交通機関が限られていて自分たちの世界はとても狭いものです。
しかし、そうやって移動できる自由を手に入れたことは自分の人生にはかりしれないインパクトを与えてくれました。
大人になれば、必然的にそういう経験をしていくのですが、私はできるだけ早い段階でそういうものを経験してほしいなぁと願っています。
かわいい子には旅をさせろ…という言葉は真なり…だと確信しています。