
トヨタさんは、燃料電池車MIRAIを2014年に発売するにあたり、多くの特許技術を外部に開放し、さまざまな業界がそこに参入しやすくして、燃料電池車の普及拡大をはかるという戦略をとった、との記事を見ました。
燃料電池車という特許の塊みたいなものをもっていても、それが社会に普及しなくては、単なる絵に描いた餅にすぎず、特に自動車産業の場合、水素スタンドのようなインフラが必要だし、そこに付随するさまざまなものがあってこそ、成り立つものだからということが理由のようで、そういった生態系のように複雑にからみあって全体としての成り立ちがあるものをエコシステムと呼ぶようですね。
地域というのは、まさにエコシステムそのもので、『里山』などは、まさにその典型的なものですが、人だけをフォーカスしてみても、それはエコシステムにほかなりません。
私たちの産業たる、建設業は、まさにエコシステムです。物販とは異なり、建築物を他の場所にもっていくということができず、基本的にその地域の顧客がお客様です。
そして、多様な業種が集合する建設業は、家一軒建てるにも、そのどれかが欠けてもなりたちません。
大工さんだけでは家は建たないのです。
特に、地方経済という観点でいくと、地域そのものに力をつけていかないと、そのエコシステムは崩壊してしまいます。
過疎化というのは、もっとも大きなエコシステムのファクターであるにも関わらず、もっとも手のうちにくい問題です。
だから、多くの地域のエコシステムが崩壊寸前になるまで、そのことに気がついていても、どうにも手をつけられていないということなのです。
しかし、かといって、それを指をくわえてみているだけでは、何も変わらない。そして、実は、自分の身の廻りのことを一生懸命にやっているだけでは絶対に解決できない。
一見、自分から最も離れたところにその解決策はあると思って取り組まねばならない、そういうものです。
例えば、企業にとっては、売り上げは絶対必要で、そのためには、仕事を受注しなければいけません。
エコシステムの概念がなければ、とにかく目の前にぶらさがっているものをなりふり構わずとっていくだけです。
ですが、全体のマーケットを意識し、そのマーケットを広げるとかをやっていかなければ、単に、需要の先食いになってしまい、その先は困窮するしかありません。
だから、私たちは、農林漁業の一次産業、観光業、教育といった私たちの分野からかけ離れたものも注視し、そこに、手を加えていく努力をしていかなくてはいけないのです。
残念ながら、このエコシステムへの働きかけの効果は、即効性がまるでありません。
でもやらなければ、じわりじわりと蝕まれていくものです。
今、社会全体にかけているのは、そういうことだと思います。