オーストラリアのシドニーで開催されている、第13回シドニー国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
7月12日は、セミファイナルの第1日。
ちなみに、第13回シドニー国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第12回シドニー国際ピアノコンクール ファイナル結果発表)
11. Carter JOHNSON (25 September 1996)
Dmitry Shostakovich: from 24 Preludes and Fugues Op.87
Paul Hindemith: Piano Sonata No.3
Johann Sebastian Bach: Capriccio in B♭ major BWV 992
Maurice Ravel: Le tombeau de Couperin M.68
ピアノはスタインウェイ。
どの曲も完成度が高くて隙がないし、フーガつながりで統一した選曲も興味深いが、曲目が少し地味なのは否めない。
味付けで勝負するタイプではない分(バッハなど予選のPhilipp LYNOVの同曲演奏のほうが歌心があった)、予選でのヴァインのトッカティッシモ、クレメンティやバツェヴィチのソナタのような、彼の圧倒的な腕前を見せつける派手な曲がないと、他の人たちとの差別化は難しいかもしれない。
彼ほどの弾き手、ぜひファイナルでも聴いてみたいのだが。
08. Yungyung GUO (11 September 2003)
Wolfgang Amadeus Mozart: Piano Sonata No.1 in C major K.279/189d
Ludwig van Beethoven: 33 Variations on a waltz by Anton Diabelli Op.120
ピアノはスタインウェイ。
こちらもまた、細やかな良い演奏ではあるが、予選の曲ほどには、彼女特有のこだわりの表現を最大限に活かせる曲目ではなかったかもしれない。
つまり、上機嫌な曲調の今回の古典派の2曲は、もっと自然で開放的な解釈でもいいように思うのだが、どうか(好みの問題もあるか)。
彼女の歌わせ方には特有の輝きがあるのも確かだが。
22. Korkmaz Can SAĞLAM (18 October 1999)
George Frideric Handel: Suite in D minor HWV 428
Maurice Ravel: from Miroirs M.43
Sergei Rachmaninoff: Piano Sonata No.1 in D minor Op.28
ピアノはファツィオリ。
派手な音を持つタイプではないが、その分シックなロマン性や情熱があり、また技巧的にも優れていて、そうした彼の特質がこれらの決して派手ではない曲によってむしろしっかりと活かされている。
先の2人よりも自身の持ち味がアピールできている印象。
13. Jeonghwan KIM (10 July 2000)
Ludwig van Beethoven: Piano Sonata No.26 in E♭ major Op.81a Les Adieux
Robert Schumann: 4 Nachtstücke Op.23
Sergey Prokofiev: Piano Sonata No.6 in A major Op.82
ピアノはファツィオリ。
切れ味のよさはピカイチ。
ただ、音色のアピールがあまりないのと、音の線が細いため、ベートーヴェンやプロコフィエフではパワー不足の感も否めない(シューマンは渋い良さがあるが)。
これらのディスアドバンテージを補って余りあるほどの切れ味かといわれると、微妙なところか(他の人たちも相当うまいので)。
12. Uladzislau KHANDOHI (7 October 2001)
Frédéric Chopin: from Nocturnes Op.48
Frédéric Chopin:: Polonaise in F# minor Op.44
Maurice Ravel: from Gaspard de la nuit M.55
Sergey Prokofiev: Piano Sonata No.8 in B♭ major Op.84
ピアノはファツィオリ。
クセの強いタイプのピアニストだが、ショパンはスラヴ風のメランコリックな音色で朗々と歌い上げるし、ラヴェルはそのクセの強さがむしろ妖怪スカルボの変幻自在な動きを余すところなく表現している。
プロコフィエフも、この曲の妖艶なロマン性がよく出ている。
洗練よりは勢い重視なタイプではあり、終楽章コーダなどオクターヴ連打部分が失速してしまっているが、それでもこれだけテクがあれば大したもので、おそらくファイナルに進みそう。
19. Philipp LYNOV (6 January 1999)
Robert Schumann: Piano Sonata No.3 in F minor Op.14
Claude Debussy: Images Book II L.111
Samuel Barber: Piano Sonata in E♭ minor Op.26
ピアノはファツィオリ。
彼は、今回の錚々たるメンバーの中にあっては、テクニックはあまりない部類になるだろうが、それでも相当弾けるほう。
細かいところでは綻びもあるが、それを補うだけの音の存在感を持っており、バーバーなどかなりの迫力。
そういうタイプは逆にドビュッシーの繊細な曲で大味になりがちだが、彼の場合そうならないのがまた良い。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは
11. Carter JOHNSON (25 September 1996)
22. Korkmaz Can SAĞLAM (18 October 1999)
12. Uladzislau KHANDOHI (7 October 2001)
19. Philipp LYNOV (6 January 1999)
あたりである。
しかし、他の2人が選ばれても全くおかしくない。
これだけ皆うまいと、曲との相性や好みで選ぶしかなくなる。
Carter JOHNSONは少し贔屓目で選んだが、さてどうなるか。
次回(7月13日)はセミファイナルの第2日。
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。