第5回高松国際ピアノコンクールが終わって | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

香川県の高松市で開催された、第5回高松国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)が、終わった。

これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)、感想を書いてきた。

とりわけ印象深かったピアニストについて、改めて備忘録的に記載しておきたい。

ちなみに、第5回高松国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第4回高松国際ピアノコンクールが終わって

第5回高松国際ピアノコンクール 出場者発表

1次審査 第1~3日

2次審査 第1日

2次審査 第2日

3次審査 第1日

3次審査 第2日

本選 第1日

本選 第2日

 

 

 

 

 

05 ドゥレン・ワン Deren WANG (China 1997- age:25)

 

3次審査で選出されなかった外国人から一人選ぶなら彼か。

2019年ブゾーニコンクール(その記事はこちらなど)で好印象だった彼のスマートかつ丁寧な演奏が今回色々聴けて良かった。

モーツァルトのソナタ第14番ハ短調、リストの超絶技巧練習曲第11番や第8番、フォーレの四重奏曲第1番あたりが印象的。

 

 

09 西本 裕矢 Yuya NISHIMOTO (Japan 2002- age:20)

 

今大会の第4位。

こちらもスマートな技巧派タイプのピアニスト。

短調の大曲をクールかつ情熱的にまとめるのに長ける。

モーツァルトのソナタ第14番ハ短調、リストのソナタ、ベートーヴェンの「熱情」ソナタ、ラフマニノフの協奏曲第3番あたりが印象的。

 

 

10 アレナ・オスミンキナ Alena OSMINKINA (Russia 2000- age:22)

 

2次審査で選出されなかった外国人から一人選ぶなら彼女か。

ロシアには珍しい軽めのタッチが新鮮。

ショパンのエチュードop.25-10、スクリャービンのソナタ第5番、モーツァルトのソナタ第16番変ロ長調、シューマンの交響的練習曲あたりが印象的。

 

 

11 フィリップ・リノフ Philipp LYNOV (Russia 1999- age:24)

 

今大会の優勝者。

第11回パデレフスキコンクール(その記事はこちらなど)に引き続いての優勝はお見事。

迫力ある音と洗練された技巧とは両立が難しく、多くの場合どちらかに偏るが、彼の場合は一定の水準で両立できており、今回優勝にふさわしかったように思う。

メシアンの「星のまなざし」「喜びの聖霊のまなざし」、シューマンのソナタ第3番、ベートーヴェンのソナタ第28番、ブラームスのピアノ四重奏曲第3番、ラフマニノフの協奏曲第3番あたりが印象的。

 

 

12 ナイール・マヴリュードフ Nail MAVLIUDOV (Russia 1992- age:31)

 

今大会の第3位。

迫力あるロシアの音を持ち、室内楽や協奏曲でも他の楽器に負けず大きな存在感を発揮できる。

ベートーヴェンのソナタ第32番、ブラームスのピアノ四重奏曲第3番、ラフマニノフの協奏曲第2番あたりが印象的。

 

 

14 八木 大輔 Daisuke YAGI (Japan 2003- age:19)

 

3次審査で選出されなかった日本人から一人選ぶなら彼か。

明るい音を持つ華やかなヴィルトゥオーゾ。

メシアンの「喜びの精霊のまなざし」、シューマンのトッカータ、リストの「ドン・ジョヴァンニの回想」、ベートーヴェンのソナタ第28番あたりが印象的。

 

 

18 佐藤 元洋 Motohiro SATO (Japan 1993- age:29)

 

2次審査で選出されなかった日本人から一人選ぶなら彼か。

また、私の中での個人的な今大会のMVP。

整った技巧や音楽性に加え、音がきれいなのが特長。

柔らかいというよりは少し硬質な、硝子や水晶にたとえたくなるような音である。

バッハの平均律第2巻ト長調、ドビュッシーの前奏曲集第2集抜粋、スクリャービンのソナタ第9番、モーツァルトのソナタ第16番変ロ長調、ブラームスのソナタ第1番あたりが印象的。

彼の硬質な美音がドビュッシーやスクリャービンに向いているのは予想できたが、ブラームスにもこれほど合うとは嬉しい誤算だった。

 

 

27 マリア・ナロジツカ Mariia NARODYTSKA (Ukraine 1988- age:34)

 

今大会の第5位。

派手すぎない、流れるような即興的な音楽性を持つ。

ショパンのエチュードop.25-10、ドビュッシーのエチュード「組み合わされたアルペッジョのための」、ラヴェルの「道化師の朝の歌」、モーツァルトのソナタ第16番変ロ長調あたりが印象的。

 

 

40 青島 周平 Shuhei AOSHIMA (Japan 1998- age:24)

 

今大会の第2位。

一見ロシア・ピアニズムのような音の迫力でありながら、スラヴ風の憂愁よりむしろフランス風の美麗さを思わせる音色を持つ。

フォーレの四重奏曲第1番、サン=サーンスの協奏曲第5番あたりが印象的。

 

 

 

 

 

以上のようなピアニストが、印象に残った。

 

 

佐藤元洋が2次で落ちたのは残念だったが、考えてみれば、彼と同時に第7回仙台国際音楽コンクール(その記事はこちらなど)で入賞した平間今日志郎とダリア・パルホーメンコも、前回の第4回高松国際ピアノコンクールに出場し、2次で落ちている。

仙台の入賞者(あるいは後に入賞することになる人)は、高松では2次で落ちる、というジンクスができそうである。

仙台と高松では、評価法が異なるのかもしれない。

 

 

また、ナイール・マヴリュードフや青島周平のような、技巧的完成度よりも音の存在感で勝負するタイプのピアニストについて、私は(特にソロ曲において)低く評価しすぎかもしれない、と反省した。

私は、演奏を聴く際にまず技巧面の出来でふるいにかけ、その上で音楽性を味わう癖がある。

好きなピアニストであるバックハウス、ケンプ、リヒテル、ポリーニ、プラネスらにしても、テクニックバリバリの若い頃の古い音源ばかり聴いてしまう。

まず音そのものから聴く、という訓練をすべきかもしれない。

とはいえ、今さら聴き方を変えるのは難しいけれど(協奏曲や室内楽はまだしも、ソロ曲では他に音がないため、技巧面が白日の下に晒され、どうしても気になってしまう)。

 

 


音楽(クラシック) ブログランキングへ

↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。

 

YouTube(こちら)やTwitter(こちら)もよろしければぜひ!