読売日本交響楽団
第28回大阪定期演奏会
【日時】
2020年12月23日(水) 開演 19:00
【会場】
フェスティバルホール (大阪)
【演奏】
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
ソプラノ:森谷真理
メゾ・ソプラノ:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
テノール:AJ・グルッカート
バリトン:大沼徹
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)
管弦楽:読売日本交響楽団
(コンサートマスター:長原幸太)
【プログラム】
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
読響の大阪定期演奏会を聴きに行った。
指揮は、1961年ベルリン生まれで、2019年4月より読響の常任指揮者を務めているセバスティアン・ヴァイグレ。
彼の録音としてはヴァーグナー初期3作の名盤があり愛聴しているが、実演を聴くのは今回が初めてである。
今回の公演の曲目は、ベートーヴェンの交響曲第9番。
この曲で私の好きな録音は
●フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1937年5月1日ロンドンライヴ盤(CD)
●フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1942年3月22-24日ベルリンライヴ盤(CD)
●フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管 1951年7月29日バイロイトライヴEMI編集盤(NML/Apple Music/CD)
●フルトヴェングラー指揮 フィルハーモニア管 1954年8月22日ルツェルンライヴ盤(CD)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1962年10月8,9,12,13日、11月9日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1976年9月22,23日、12月6日、1977年1月28日、2月6日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1983年9月20-27日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●西本智実 指揮 イルミナート・フィル 2013年11月10日ローマライヴ盤(DVD)
あたりである。
第九というと日本の年末の風物詩だが、フルトヴェングラーやカラヤンの名盤を聴きすぎた私は、実演を聴きに行ってもなかなか感動することができない。
これまでに実演で感銘を受けた第九は、西本智実のものだけであった(その記事はこちらとこちら)。
それでは、今回のヴァイグレ&読響はどうだったかというと、かなりの名演だった。
ヴァイグレの特徴としては、まず第一に、テンポ設定やアーティキュレーション、デュナーミクが自然で垢抜けており、随所に工夫が凝らされているにもかかわらずわざとらしさがない。
これは、4年前の読響大阪定期で聴いたマルクス・シュテンツの指揮には、ないものだった(その記事はこちら)。
また第二に、音楽の展開がドラマティックであり、10型の小さめの編成にもかかわらず迫力がある(第1楽章再現部冒頭や第2楽章主部内再現部冒頭でのティンパニの強打など大変に印象的)。
これは、3年前の読響大阪定期で聴いたサッシャ・ゲッツェルの指揮には、ないものだった(その記事はこちら)。
そして第三に、ヴァイグレの音楽は一定のテンポを保ったまま、立ち止まることなくぐんぐん進み、常に推進力を持っている。
これは、西本智実の少し引きずるような重みのあるテンポとは、対照的である。
西本智実とヴァイグレの違いは、フルトヴェングラーとカラヤンの違いに似ている(もちろん、これら往年の巨匠よりもずっと今風のスタイルではあるけれど)。
カラヤンが学生オーケストラか何かを指揮するリハーサル映像で(曲目は確かベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲)、「テンポが遅れないようにしっかり保って、乾いたテンポで」と言っていたのを思い出す。
ただ、ヴァイグレの場合は少し乾きすぎているきらいがないではない(音色や表情付けの点で)。
例えば同い年の指揮者シモーネ・ヤングであったならば、ヴァイグレと同様のスタイルでありながらも、よりいっそうの洗練と芸術的香気とが加わったかもしれない(実際、ヴァーグナーの「ニーベルングの指環」で2人の録音を比べるとそんな傾向がある)。
とはいえ、それは贅沢な次元のこと。
少なくとも、今回のヴァイグレ&読響による第九が本格的な一級の演奏であったこと、また(西本智実を除いて)私が実演で感銘を受けた唯一の第九演奏であったことは、確かである。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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