(エリック・ルーの新譜 シューベルト 4つの即興曲 D899) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

先日まで開催されていた、2018年リーズ国際ピアノコンクール(そのときの記事はこちらなど)。

せっかくなので、その優勝者であるエリック・ルーの新譜を聴いてみた(NMLApple MusicCD)。

CDの詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

17歳でショパン・コンクール入賞! 2017ドイツ国際ピアノ賞優勝!
期待の若手エリック・ルー堂々の名演!


ピアノ・ファン待望のCD。2015年の第17回ショパン国際ピアノ・コンクールで僅か17歳で第4位入賞した米国のピアニスト、エリック・ルーの初の独墺系レパートリーのCDが発売。
 エリック・ルーは1997年、米国マサチューセッツ州生まれの中国系米国人。2017年の国際ドイツ・ピアノ賞で優勝、かつ聴衆賞も得ており、その半年後にニュルンベルクで行われた演奏会をライヴ録音したもの。ショパン・コンクール第4位の実力はさすがに素晴らしく、じっくりとした落ち着きと深みのある演奏は、十代のピアニストのレベルを遥かに超えています。しかもモーツァルト、シューベルト、ブラームスのそれぞれ晩年の作品に挑んでおり、堂々と押し切っている様からは風格すら漂ってくるよう。一切情報なしに聴いて19歳の演奏と当てられる人はいないでしょう。ショパン・コンクールで彼の名を知った方にも、まったく初めて名前を聞くという方にも、ぜひ実際の演奏を聴いて若い逸材の凄さを実感していただきたいところです。(輸入元情報)

【収録情報】
● モーツァルト:ロンド イ短調 K.511
● シューベルト:4つの即興曲 D.899
● ブラームス:6つのピアノのための小品 Op.118


 エリック・ルー(ピアノ)

 録音時期:2017年10月27日
 録音場所:ニュルンベルク
 録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

聴いてみると、やはりいつもの彼らしく、音は大変に美しいし、歌心もある。

テクニック的にも申し分ない。

ただ、彼のつくる音楽は、テンポの設定といい呼吸のしかたといい、きわめて耽美的、陶酔的で、私のイメージするモーツァルトやシューベルト、ブラームスとは少し違っている。

彼のやり方は、ショパンにはぴったり合うのだが。

 

 

例えば、即興曲の第1番でいうと、長調部分(あるいは第2主題部分とでもいうべきか)から短調部分(再現部?)へ戻る直前、歌が深まる部分がある。

「ファミレミラー、ミレドレソー」(階名表記)という美しいメロディなのだが、彼はここで大きくテンポを落とす。

きわめてロマンティックなのだが、どうしてもショパン的に思える。

私の好きなピリス旧盤などは、ここでも一定のテンポを保っており、推進力を失わず、べたつくことがない。

その分、上記メロディの繰り返しで、高音部がオブリガート的に呼応する箇所で、一瞬テンポをぐっと落とすのが、きわめて強い印象を残す。

メリハリが利いていて、はっとさせられるのである。

 

 

つい先日の記事にも書いたように(その記事はこちら)、やはり東アジア系のピアニストには、モーツァルトやシューベルトやブラームスよりも、ショパンのほうが合っているのかもしれない。

西欧特有の整然とした均整美(西洋建築のような)は、ショパンのスラヴ的な情緒に比べると、東洋人からみて少し遠いところにある、ということだろうか。

音楽の「東西」性について、改めて考えさせられる演奏である。

とはいえ、こういったことには好みの問題もある。

完成度の高い、美しい演奏であることは確かだし、一聴をお勧めしたい。

 

 


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