今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
先日の記事（こちら）のコメント欄で、同じベルリン・フィルでも、フルトヴェングラーの時代とラトルの時代とで全く異なって聴こえるのが面白いという話題になった。
もちろん、時代が違うので当然といえば当然なのかもしれないが、それではベルリン・フィルが最も輝いていた黄金時代はいつということになるのだろうか？
曲や指揮者にもよるだろうけれど、ここでは団員の違いから考えてみるということで、ベルリン・フィル各時代の5種類のメンバー表（主だったメンバーのみ引用）を比較してみたい。
1. （ニキシュ後期？ ～） フルトヴェングラー前期
（1928年5月ロンドン公演プログラムのメンバー表より）
【第1ヴァイオリン】
Henry Holst ヘンリー・ホルスト
Wilfried Hanke ヴィルフリート・ハンケ
【第2ヴァイオリン】
Wolfgang Herold
Alfred Hornoff
【ヴィオラ】
Willi Hober
Lorenz Hober
【チェロ】
Gregor Piatigorsky グレゴール・ピアティゴルスキー
Nicolai Graudan ニコライ・グラウダン
【コントラバス】
Lebrecht Goedecke レーブレヒト・ゲデッケ
Linus Wilhelm
【フルート】
Albert Harzer アルベルト・ハーツァー
Friedrich Thomas
【オーボエ】
Gustav Kern グスタフ・カーン
Erich Venzke エーリヒ・ヴェンツケ
【クラリネット】
Ernst Fischer エルンスト・フィッシャー
Alfred Buerkner アルフレート・ビュルクナー
【ファゴット】
Karl Leuschner
Oskar Rothensteiner オスカー・ローテンシュタイナー
【ホルン】
Oskar Schumann
Leonhard Tiersch
【トランペット】
Anton Schuldes
Paul Sporri
【トロンボーン】
Ernst Heidrich
Friedrich Quante
【チューバ】
Friedrich Hassler
【打楽器】
Paul Kretschmer
August Lohse
【ハープ】
Otto Muller
2. フルトヴェングラー後期 ～ カラヤン前期
（1957年来日公演プログラムのメンバー表より）
【第1ヴァイオリン】
Michel Schwalbe ミシェル・シュヴァルベ （第１コンサートマスター）
Hans Gieseler ハンス・ギーゼラー （コンサートマスター）
【第2ヴァイオリン】
Johannes Klapka ヨハネス・クラプカ
Karl Schoengarth カール・シェーンガルト
【ヴィオラ】
Heinz Kirchner ハインツ・キルヒナー （第１独奏ヴィオラ）
Dietrich Gerhardt ディートリヒ・ゲルハルト （独奏ヴィオラ）
【チェロ】
Eberhard Finke エーベルハルト・フィンケ （第１独奏チェロ）
Ottomar Borwitzky オトマール・ボルヴィツキー （第１独奏チェロ）
Wilhelm Posegga ヴィルヘルム・ポセッガ （独奏チェロ）
【コントラバス】
Hermann Menzel ヘルマン・メンツェル
Wilhelm Soppart ヴィルヘルム・ソッパルト
【フルート】
Fritz Demmler フリッツ・デムラー
Aurele Nicolet オーレル・二コレ
【オーボエ】
Karl Steins カール・シュタインス
Lother Koch ローター・コッホ
【クラリネット】
Alfred Buerkner アルフレート・ビュルクナー
Herbert Staehr ヘルベルト・シュテーア
【ファゴット】
Oskar Rothensteiner オスカー・ローテンシュタイナー
Manfred Braun マンフレート・ブラウン
【ホルン】
Martin Ziller マルティン・ツィラー
Otto Machut オットー・マシュー
【トランペット】
Fritz Wesenigk フリッツ・ヴェゼニック
Horst Eichler ホルスト・アイヒラー
【トロンボーン】
Johann Doms ヨハン・ドムス
Karl-Heinz Dusl カール=ハインツ・ドゥスル
【チューバ】
Heinrich Juergens ハインリヒ・ユルゲンス
【打楽器】
Gerassimos Avgerinos ゲラシモス・アヴゲリノス
Werner Thaerichen ヴェルナー・テーリヒェン
【ハープ】
Fritz Hartmann フリッツ・ハルトマン
3. カラヤン後期 ～ アバド前期
（1981年来日公演プログラムのメンバー表より）
【第1ヴァイオリン】
Michel Schwalbe ミシェル・シュヴァルベ （第１コンサートマスター）
Thomas Brandis トーマス・ブランディス （第1コンサートマスター）
Leon Spieler レオン・シュピーラー （第１コンサートマスター）
Rainer Sonne ライナー・ゾンネ （コンサートマスター）
【第2ヴァイオリン】
Emil Maas エーミル・マース （首席）
Hanns-Joachim Westphal ハンス=ヨアヒム・ヴェストファル （首席）
【ヴィオラ】
Wolfram Christ ヴォルフラム・クリスト （第１ソロ）
Giusto Cappone ジュスト・カッポーネ
【チェロ】
Ottomar Borwitzky オトマール・ボルヴィツキー （第１ソロ）
Eberhard Finke エーベルハルト・フィンケ （第１ソロ）
Joerg Baumann イェルク・バウマン （ソロ）
Goetz Teutsch ゲッツ・トイチュ （ソロ）
【コントラバス】
Friedrich Witt フリードリヒ・ヴィット （ソロ）
Rainer Zepperitz ライナー・ツェぺリッツ （ソロ）
【フルート】
Andreas Blau アンドレアス・ブラウ （ソロ）
Karl-Heinz Zoeller カール=ハインツ・ツェラー （ソロ）
【オーボエ】
Lother Koch ローター・コッホ （ソロ）
Hansjoerg Schellenberger ハンスイェルク・シェレンベルガー （ソロ）
【クラリネット】
Karl Leister カール・ライスター （ソロ）
Peter Geisler ペーター・ガイスラー
【ファゴット】
Manfred Braun マンフレート・ブラウン （ソロ）
Guenter Piesk ギュンター・ピースク （ソロ）
【ホルン】
Norbert Hauptmann ノルベルト・ハウプトマン （ソロ）
Gerd Seifelt ゲルト・ザイフェルト （ソロ）
【トランペット】
Konradin Groth コンラディン・グロート （ソロ）
Martin Kretzer マルティン・クレッツァー （ソロ）
【トロンボーン】
Karl-Heinz Duse-Utesch カール=ハインツ・ドゥーゼ=ウテシュ （ソロ）
Eckart Wiewinner エッカルト・ヴィーヴィンネル （ソロ）
【チューバ】
Pau Huempel パウル・ヒュンペル
【ティンパニ】
Werner Thaerichen ヴェルナー・テーリヒェン
Oswald Vogler オズワルト・フォーグラー
【ハープ】
Fritz Helmis フリッツ・ヘルミス
4. アバド後期 ～ ラトル前期
（2008年の団員名簿より）
【第1ヴァイオリン】
Guy Braunstein ガイ・ブラウンシュタイン （第１コンサートマスター）
Daniel Stabrawa ダニエル・スタブラヴァ （第１コンサートマスター）
Toru Yasunaga 安永徹 （第１コンサートマスター）
Rainer Sonne ライナー・ゾンネ （コンサートマスター）
【第2ヴァイオリン】
Christian Stadelmann クリスティアン・シュターデルマン （第1首席）
Thomas Timm トーマス・ティム （第1首席）
Axel Gerhardt アクセル・ゲルハルト （首席）
【ヴィオラ】
Neithard Resa ナイトハルト・レーザ （第1ソロ）
Naoko Shimizu 清水直子 （ソロ）
Wilfrid Strehle ヴィルフリート・シュトレーレ （ソロ）
【チェロ】
Georg Faust ゲオルク・ファウスト （第１ソロ）
Ludwig Quandt ルートヴィヒ・クヴァント （第1ソロ）
Martin Löhr マルティン・レーア （ソロ）
Olaf Maninger オラフ・マニンガー （ソロ）
【コントラバス】
Nabil Shehata ナビル・シェハタ （第1ソロ）
Klaus Stoll クラウス・シュトール （第1ソロ）
Rudolf Watzel ルドルフ・ヴァッツェル （ソロ）
【フルート】
Andreas Blau アンドレアス・ブラウ （ソロ）
Emmanuel Pahud エマニュエル・パユ （ソロ）
【オーボエ】
Jonathan Kelly ジョナサン・ケリー （ソロ）
Albrecht Mayer アルブレヒト・マイヤー （ソロ）
【クラリネット】
Wenzel Fuchs ヴェンツェル・フックス （ソロ）
【ファゴット】
Daniele Damiano ダニエーレ・ダミアーノ （ソロ）
Stefan Schweigert シュテファン・シュヴァイゲルト （ソロ）
【ホルン】
Radek Baborák ラデク・バボラーク （ソロ）
Stefan Dohr シュテファン・ドール （ソロ）
【トランペット】
Gábor Tarkövi ガボール・タルケヴィ （ソロ）
Tamás Velenczei タマーシュ・ヴァレンシェイ （ソロ）
【トロンボーン】
Christhard Gössling クリストハルト・ゲスリング （ソロ）
Olaf Ott オラフ・オット （ソロ）
【チューバ】
Pau Huempel パウル・ヒュンペル
Alexander von Puttkamer アレクサンダー・フォン・プットカマー
【ティンパニ】
Rainer Seegers ライナー・ゼーガース
Wieland Welzel ヴィーラント・ヴェルツェル
【ハープ】
Marie-Pierre Langlamet マリー=ピエール・ラングラメ
5. ラトル後期 ～ ペトレンコ前期
（2018年5月現在の団員名簿より）
【第1ヴァイオリン】
Noah Bendix-Balgley ノア・ベンディックス＝バルグリー （第１コンサートマスター）
Daishin Kashimoto 樫本大進 （第１コンサートマスター）
Daniel Stabrawa ダニエル・スタブラヴァ （第１コンサートマスター）
【第2ヴァイオリン】
Christian Stadelmann クリスティアン・シュターデルマン （第1首席）
Thomas Timm トーマス・ティム （第1首席）
Christophe Horak クリストフ・ホラーク （首席）
【ヴィオラ】
Amihai Grosz アミハイ・グロス （第1ソロ）
Máté Szűcs マテ・ズーチス （第1ソロ）
Naoko Shimizu 清水直子 （ソロ）
【チェロ】
Bruno Delepelaire ブルーノ・ドルペレール （第１ソロ）
Ludwig Quandt ルートヴィヒ・クヴァント （第1ソロ）
Martin Löhr マルティン・レーア （ソロ）
Olaf Maninger オラフ・マニンガー （ソロ）
【コントラバス】
Matthew McDonald マシュー・マクドナルド （第1ソロ）
Janne Saksala ヤンネ・サクサラ （第1ソロ）
Esko Laine エスコ・ライネ （ソロ）
【フルート】
Mathieu Dufour マチュー･デュフォー （ソロ）
Emmanuel Pahud エマニュエル・パユ （ソロ）
【オーボエ】
Jonathan Kelly ジョナサン・ケリー （ソロ）
Albrecht Mayer アルブレヒト・マイヤー （ソロ）
【クラリネット】
Wenzel Fuchs ヴェンツェル・フックス （ソロ）
Andreas Ottensamer アンドレアス・オッテンザマー （ソロ）
【ファゴット】
Daniele Damiano ダニエーレ・ダミアーノ （ソロ）
Stefan Schweigert シュテファン・シュヴァイゲルト （ソロ）
【ホルン】
David Cooper デイヴィッド・クーパー （ソロ）
Stefan Dohr シュテファン・ドール （ソロ）
【トランペット】
Gábor Tarkövi ガボール・タルケヴィ （ソロ）
Tamás Velenczei タマーシュ・ヴァレンシェイ （ソロ）
【トロンボーン】
Christhard Gössling クリストハルト・ゲスリング （ソロ）
Olaf Ott オラフ・オット （ソロ）
【チューバ】
Alexander von Puttkamer アレクサンダー・フォン・プットカマー
【ティンパニ】
Rainer Seegers ライナー・ゼーガース
Wieland Welzel ヴィーラント・ヴェルツェル
【ハープ】
Marie-Pierre Langlamet マリー=ピエール・ラングラメ
長くなったが、以上である。
ここに掲載されていないメンバーにも重要な人はいて、例えばフルトヴェングラー前期のシモン・ゴールドベルクや、アバド前期のライナー・クスマウルは、私のとりわけ好きなコンサートマスターである。
とはいえ、この5種類のメンバー表で、各時代の代表的なメンバーは概ね網羅できているのではないだろうか。
それにしても、どの時代もなんと豪華なメンバーだろう！
どれが黄金時代かなんて、私には到底決められない。
強いて選ぶなら、
1. （ニキシュ後期？ ～） フルトヴェングラー前期
3. カラヤン後期 ～ アバド前期
4. アバド後期 ～ ラトル前期
の3つのいずれかになるだろうか。
これ以上はとても選べない。
ベルリン・フィルが、1世紀にもわたって世界の楽団の頂点に君臨し続けてきたことを、メンバー表からも改めて思い知った。
最後に、各時代の写真を引用したい。
フルトヴェングラーとベルリン・フィル （1925年 ベルリン 旧フィルハーモニー）
（画像はこちらのページからお借りしました）
カラヤンとベルリン・フィル （1957年）
（画像はこちらのページからお借りしました）
アバドとベルリン・フィル （1994年10月 東京 サントリーホール）
（画像はこちらのページからお借りしました）
ラトルとベルリン・フィル （2010年9月12日 ベルリン フィルハーモニー）
（画像はこちらのページからお借りしました）
ペトレンコとベルリン・フィル （2017年3月23日 ベルリン フィルハーモニー）
（画像はこちらのページからお借りしました）
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