今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
前回と同様、「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続きを書きたい。
これまで、フルトヴェングラーの指揮によるコンサートがもし聴けたならということで、彼の振るベートーヴェン、ヴァーグナー、ブラームス、ブルックナー、マーラー、R.シュトラウスについて延々と書いてきた。
そして最近は、チャイコフスキーについて書いている。
今回は、フルトヴェングラーの指揮によるチャイコフスキーの交響曲第6番を取り上げたい。
今回もこれまでと同様、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏による、ベルリンでの演奏会で、かつ1929~1934年頃に行われたもの(できれば1929年のもの)から探してみたいと思う(その理由はこちら)。
探してみると、下記の演奏会があった。
1932年2月16日、ベルリン
指揮:フルトヴェングラー
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
プログラム
Brahms: Variationen über ein Thema von Haydn
Wagner: Siegfried-Idyll & der fliegende Holländer, Overture
Tchaikovsky: Symphony No. 6
ブラームスの「ハイドン変奏曲」、ヴァーグナーの「ジークフリート牧歌」と「さまよえるオランダ人」序曲、そしてチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。
王道のプログラムである。
なお、この直前の2月14、15日にはブルックナーの交響曲第9番とベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番(ピアノはシュナーベル)を演奏している(その記事はこちら)。
また、この直後の2月18日にはシューベルトの「未完成」やベートーヴェンの交響曲第7番を演奏している。
いずれも、ベルリンである。
フルトヴェングラー&ベルリン・フィルが連日このようにバラエティ豊富なコンサートをやっているなんて、なんて贅沢な環境なのだろう。
この3種の演奏会を全て聴いて、またヴァイマール共和国末期のベルリンの文化的活況を見てまわって、4泊5日くらいで帰ってくるようなツアーをぜひやりたいものである!
ただしタイムマシンはまだないし、またこの演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。
●ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1949年3月30日、4月2日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ヴァーグナー:ジークフリート牧歌 フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1949年2月16、17日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ヴァーグナー:「さまよえるオランダ人」序曲 フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1949年3月30、31日、4月4日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●チャイコフスキー:交響曲第6番 フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1938年10、11月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
ブラームスの「ハイドン変奏曲」と、ヴァーグナーの2曲は、いずれも1949年の2~4月にウィーン・フィルと録音された状態の良いセッション盤である。
いずれもフルトヴェングラーの得意とした曲であり、広くお勧めしたい名盤である。
そして、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。
フルトヴェングラーの戦前の代表的な録音である。
フルトヴェングラーは1937年頃にDGからEMIに契約を変更して、ベートーヴェンの交響曲第5番や、ヴァーグナーの「トリスタン」「パルジファル」の第1幕前奏曲などを録音したのち、1938年にこのチャイコフスキーの「悲愴」を録音することとなった。
「運命」や「トリスタン」に続いて録音されたことからも、「悲愴」がとりわけフルトヴェングラーの得意とする曲だったことが窺える。
演奏は、全く素晴らしい。
ドイツ的に過ぎる、という意見もあるだろうが、私にはしっくりくる。
重厚でロマンティックでスケールの大きい、最高の名盤である。
上記の演奏会のわずか6年後の録音であり、かつ同じベルリン・フィルであるため、きっとよく似た演奏だったことだろう、と思いを馳せることができる。
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