スペシャルオリンピックス日本・東京/愛知/京都 支援チャリティーコンサート
ある偉大なる芸術家の思い出に ~神無月に送るスペシャルなトリオ~
【日時】
2017年10月7日(土) 開演 14:00 (開場 13:30)
【会場】
京都コンサートホール 小ホール(アンサンブルホールムラタ)
【演奏】
ピアノ:山本貴志
ヴァイオリン:マーク・ゴトーニ
チェロ:水谷川優子
【プログラム】
モーツァルト:ピアノ三重奏曲 第6番 ハ長調 K.548
チャイコフスキー:四季より(ピアノ三重奏版) 「10月 秋の歌」 「11月 トロイカ」
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 作品50 「ある偉大なる芸術家の思い出に」
※アンコール
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 作品50 「ある偉大なる芸術家の思い出に」 より 第2楽章 第6変奏 Tempo di Valse
山本貴志のピアノ・トリオの演奏会を聴きに行った。
彼については、先日素晴らしいソロ・リサイタルを聴いたばかり(そのときの記事はこちら)。
今回のピアノ・トリオでも、やはり素晴らしかった。
モーツァルトは、彼が弾くとそこはかとなくロマンティックで、「モーツァルトがこんなにカラフルで良いのか?」と一瞬思うのだけれど、それでもやっぱり魅力的である。
速い走句は生き生きとしているし、緩徐楽章では決してべたつくことなく、さわやかながらも歌ごころにあふれた演奏となっている。
メロディラインの表情の付け方が大変うまく、聴いていて心に染み入ってくる。
そして、ロマン派の代表格の一人であるチャイコフスキーは、まさに山本貴志の真骨頂といったところである。
「四季」より「秋の歌」と「トロイカ」(ピアノ三重奏編曲版)、ともに素朴な曲だけれども、彼が弾くと実に美しい珠玉の名品となる。
特に前者のメランコリックなメロディの歌わせ方は、ヴァイオリンもチェロも顔負けの美しさ。
先日のクレア・フアンチもそうだったけれど、一度音を出したら減衰するしかないピアノという楽器で、ここまで美しく「歌う」ことができるのか、という点で、彼らの演奏はもしかするとピアノ奏者だけでなく弦楽奏者や歌手でさえ参考になるのではないだろうか?
プログラム後半は、チャイコフスキーのピアノ三重奏曲「ある偉大なる芸術家の思い出に」。
この曲の録音で私が好きなのは
●オボーリン(Pf) オイストラフ(Vn) クヌシェヴィツキー(Vc) 1948年(セッション?)盤(Apple Music)
●ギレリス(Pf) コーガン(Vn) ロストロポーヴィチ(Vc) 1952年1月2日モスクワ(セッション?)盤(Apple Music)
あたりである。
今回の山本貴志の演奏は、美しい味わいという点で上記のオボーリンにも勝り、激しい情熱の表現という点で(第1楽章第2主題直前の分厚い和音の箇所など圧倒的!)上記のギレリスにも劣らない、素晴らしいものだった。
そして、第2楽章。
この楽章は変奏曲の形を取っているのだが、この最初の変奏は、ピアノがソロで弾くようになっている。
この主題が、こんなに美しく奏されるのを、私は初めて聴いた。
まるで、ショパンのピアノ協奏曲第1番の第2楽章のような、夢見る音楽である。
何のことはないシンプルな主題から、これほどの美しさ、憧れを引き出してくるには、いったいどのような鍵盤の押さえ方をすればいいものなのだろうか?
その後の変奏も素晴らしく、Wikipediaによるとこの楽章は「ピアノを用いるあらゆるチャイコフスキー作品のなかで、おそらく最も演奏が至難」とのことだが、困難さを感じさせない鮮やかな演奏だった。
特に、第3変奏での急速なアルペッジョ(分散和音)のきわめて繊細な扱いや、第5変奏でのオルゴールのように美しい高音部の響きが印象に残った。
なお、共演者の2人については、ピアノほどの強い印象は受けなかった。
チェロの水谷川優子は、丁寧だけれど音量・音色ともにやや地味な印象。
ヴァイオリンのマーク・ゴトーニは、音量的には3人の中で一番存在感があり、また音色には華やかさもあった。
しかし、先日の五嶋みどりの演奏会(そのときの記事はこちら)で耳が贅沢になってしまった私には、ヴィブラートのかけ方、音程、音色(特に同音のスタッカートが続くときなど)のムラが気になってしまった。
弦楽器、特にヴァイオリンという楽器は、なんと難しいことだろう!
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。