黒岩航紀 京都公演 リスト ハンガリー狂詩曲第6番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

黒岩航紀 ピアノリサイタル

 

【日時】

2017年 9月2日(土) 開演 15:00 (開場 14:30)

 

【会場】

青山音楽記念館バロックザール (京都)

 

【演奏】

ピアノ:黒岩航紀

 

【プログラム】

ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23

パデレフスキ:ミセラネア(作品集) Op.16-2 メロディ

ヴァーグナー/リスト:イゾルデの愛の死
リスト/ホロヴィッツ:ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調 S.244-2
リスト:ハンガリー狂詩曲 第6番 変ニ長調 S.244-6
ラフマニノフ:前奏曲 Op.3-2 , Op.23-5 , Op.32-12
ラフマニノフ:ピアノソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36

 

※アンコール

(最初の曲は不明)

リスト:パガニーニ大練習曲 より 第3曲「ラ・カンパネラ」

ドビュッシー:ベルガマスク組曲 より 第3曲「月の光」

ドビュッシー:前奏曲集 第1巻 より 第8曲「亜麻色の髪の乙女」

 

 

 

 

 

黒岩航紀のピアノリサイタルを聴きに行った。

彼というと、2015年浜コンのときにネット配信で演奏を聴き、ベートーヴェンの「月光」ソナタの終楽章がテクニック的に鮮やかだったことが思い出される。
実演を聴くのは初めて。

 

実際に聴いてみると、やはり素晴らしいテクニックである。
特に、リストのハンガリー狂詩曲第2、6番は圧倒的な演奏だった。
相当速いテンポなのに破綻がなく、また打鍵は力強く迫力に満ちていて、まさにリストの曲にぴったりな演奏である。
よくありがちな、いわゆるヴィルトゥオーゾ風の「崩し」というか、ルバート(テンポの揺らし)がほとんどなく、ストレートに勝負しているのも、好ましく感じた(ルバートによる技巧的な「逃げ」が彼にはない)。
ハンガリー狂詩曲第2番など、ホロヴィッツがさらに難しく編曲した版を使用していて、これでもかというくらい難しそうだったが、難しければ難しいほど彼の演奏はよりいっそう輝きを増していた。

 

ただ、その分、ショパンやラフマニノフではむしろ「簡単」すぎて物足りなさそうというか、少し持てあましている感じがあった(言うまでもないが、ショパンやラフマニノフだってほとんどの人にとっては十分すぎるほど難しい)。
彼は、抒情的な表現を得意とするタイプのピアニストではないように思われる(上記の浜コンの「月光」でもそう感じたのだったが)。
音色も比較的モノクロームな印象で、音色のパレットが多彩というわけではないようだった。

 

全体の印象として、彼は先日聴いた反田恭平(そのときの記事はこちら)と好対照をなすピアニストと思われる。
先日反田恭平が弾いていたドビュッシーの「月の光」を、今回黒岩航紀もアンコールで弾いたため、そう感じたのかもしれない。
彼ら2人の「月の光」は、まるで別の曲に聴こえるほどに異なった演奏だった。
情感の反田、技巧の黒岩、といった感じか。
あるいは、濃厚の反田、淡白の黒岩、か。
変化球の反田、直球の黒岩、ともいえる気がする。
全く別の個性であり、どちらが良いとも言いがたい。
ただ、今回黒岩航紀が弾いたリストに関しては、これを超える演奏はそう簡単には聴かれないと思う。

 

終演後、CDを購入してサイン会に並んだが(余談だが、このCDの演奏は実演に比べだいぶおとなしくなってしまっている。実演はこんなものではなかった。彼にはぜひライヴ録音してほしい)、特に知り合いでもない私に「お近くにお住まいですか」と気さくに話しかけてくれた。
とてもさわやかな好青年である。

 

 

 


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