小ネタ『高村恭司と直死の魔眼』(PC版舞-HiME×TYPE-MOON)
旧拍手御礼小ネタ第一弾
「舞-HiME 運命の系統樹」ネタ。
クロスオーバー。
◇◆◇◆◇◆
風華学園裏山の神社、その境内。
鴇羽舞衣は、パニックに陥っていた。
ただ、お参りに来ただけのはずだった。
弟の病が癒えるよう、祈りに来ただけのはずだった。
それなのに、何故かやってきた変態教師(だと舞衣は固く信じている)高村。
そして……まるで二人を狙うかのように現れた、大きな怪物。
足が竦んでいないのは、あまりにも現実離れした光景に脳が正しい指示を下せていないだけの話だろう。幸運と呼ぶべきかどうか、舞衣にはわからない。
一つだけはっきりしているのは、考えるよりも先に逃げなければならないということだ。
明らかに害意を持った人外の存在(信じたくはないけどそうとしか思えない)を相手に無事でいられると思うほど、舞衣は楽観的ではなかった。
だというのに。
「離れてろ、鴇羽。こいつは、俺がなんとかする」
「む、無理よ! とにかく逃げなきゃ──」
悠長に眼鏡なんぞを外し胸ポケットにしまう高村。身の危険を察知する感覚が壊れているかのようなその姿。強烈な焦燥感に駆られた舞衣は、彼の腕を掴んだ。
そのまま引っ張ったことで、高村と向かい合う体勢になる。
そして彼女は見た。
目の前の怪物などより遥かに世の理を“外れ”た、その恐るべき眼を。
「任せてくれて大丈夫だ、鴇羽。俺の眼は、ちょっと特別製でな」
「え──先生、その眼……?」
舞衣は己が目を疑った。
眼鏡を外した高村の瞳。日本人としてごく普通の色彩でしかなかったはずのそれが、異様な“蒼”に、染まっていた。
◇◆◇◆◇◆
ツギハギだらけの世界が広がる、高村の視界。“魔眼殺し”である眼鏡を外した途端、縦横無尽に浮かび上がった黒い線。それこそが“モノの死”であると知ったのは、もう随分と前のことだ。
ただ、少し力を込めて触れてやる。あるいは、刃物でなぞってやる。たったそれだけのことで、全ては死に至るのだ。
故にその名を“直死の魔眼”。
生命、非生命を問わず、万物に悉く終焉をもたらす究極の一である。
昔、ごく幼き日のこと。交通事故で重傷を負った高村は、一度死んだ後に蘇っている。
何の因果か、それによって彼の脳は“死”を認識することが可能になってしまった。
元より人の領分を超えた力だ。死を視る眼は、激しい頭痛と吐き気を伴った。
そして、死を視続けるとは、セカイが死に満ちていることを常に意識させられるということでもある。
“彼女”に会えなかったら、高村恭司は数日の内に発狂していたに違いない。
……自らを魔法使いと名乗った彼女は、この眼を抑える眼鏡をくれた。同時に残してくれた助言は、今でも一言一句違わずに胸に刻み込まれている。
「滅多なことでは外しちゃダメ。異常は異常を呼び寄せる。自ら進んで平穏を離れる必要なんてないわ。危ない目に合いたいなんて思わないでしょう?
──それでも。あなたがよく考えて、どうしても必要だと思ったのなら。
その時は、眼鏡を外しなさい。あなたの眼は、きっとそんな時のために授けられたのだから……」
ならば今がその時だ。高村は向き直った。
眼前には得体の知れない怪物。背後には出会って間もない一人の少女。
男として女の子を守るのは当然のことだ。ましてや教師たる今の彼にとって、鴇羽舞衣は自分の生徒なのだから。
薄闇垂れ込める森の中。
高村の瞳が放つ蒼い光が、ただ鮮やかに怪物を見据える。
「かかってこい、化け物。
俺のこの眼は飾りじゃない。生きているなら、神さまだって殺してみせる──!!」
銅剣を抜き放つ。その柄は、まるで自身の肉体の一部であるかのように高村の掌に馴染んでいた。
************
<注>
というわけで、ご存知の方は分かるでしょうが「月姫」とのクロスオーバー。
かつ、最後のセリフは「空の境界」から借りています。
裏山に探索に向かい、舞衣と出会う高村。
ここで確か、オーファンとの初めての戦闘になるはずです。
当然ながら大苦戦するのですが、このSS未満作品の高村は直死の魔眼の持ち主ですから独力で倒せてしまいます。凪の段取りはいきなり狂うのでした(ぉ
もっとも、彼は別に武術家でも暗殺者でもありませんので、苦戦するのは確かなのですが。
「舞-HiME 運命の系統樹」ネタ。
クロスオーバー。
◇◆◇◆◇◆
風華学園裏山の神社、その境内。
鴇羽舞衣は、パニックに陥っていた。
ただ、お参りに来ただけのはずだった。
弟の病が癒えるよう、祈りに来ただけのはずだった。
それなのに、何故かやってきた変態教師(だと舞衣は固く信じている)高村。
そして……まるで二人を狙うかのように現れた、大きな怪物。
足が竦んでいないのは、あまりにも現実離れした光景に脳が正しい指示を下せていないだけの話だろう。幸運と呼ぶべきかどうか、舞衣にはわからない。
一つだけはっきりしているのは、考えるよりも先に逃げなければならないということだ。
明らかに害意を持った人外の存在(信じたくはないけどそうとしか思えない)を相手に無事でいられると思うほど、舞衣は楽観的ではなかった。
だというのに。
「離れてろ、鴇羽。こいつは、俺がなんとかする」
「む、無理よ! とにかく逃げなきゃ──」
悠長に眼鏡なんぞを外し胸ポケットにしまう高村。身の危険を察知する感覚が壊れているかのようなその姿。強烈な焦燥感に駆られた舞衣は、彼の腕を掴んだ。
そのまま引っ張ったことで、高村と向かい合う体勢になる。
そして彼女は見た。
目の前の怪物などより遥かに世の理を“外れ”た、その恐るべき眼を。
「任せてくれて大丈夫だ、鴇羽。俺の眼は、ちょっと特別製でな」
「え──先生、その眼……?」
舞衣は己が目を疑った。
眼鏡を外した高村の瞳。日本人としてごく普通の色彩でしかなかったはずのそれが、異様な“蒼”に、染まっていた。
◇◆◇◆◇◆
ツギハギだらけの世界が広がる、高村の視界。“魔眼殺し”である眼鏡を外した途端、縦横無尽に浮かび上がった黒い線。それこそが“モノの死”であると知ったのは、もう随分と前のことだ。
ただ、少し力を込めて触れてやる。あるいは、刃物でなぞってやる。たったそれだけのことで、全ては死に至るのだ。
故にその名を“直死の魔眼”。
生命、非生命を問わず、万物に悉く終焉をもたらす究極の一である。
昔、ごく幼き日のこと。交通事故で重傷を負った高村は、一度死んだ後に蘇っている。
何の因果か、それによって彼の脳は“死”を認識することが可能になってしまった。
元より人の領分を超えた力だ。死を視る眼は、激しい頭痛と吐き気を伴った。
そして、死を視続けるとは、セカイが死に満ちていることを常に意識させられるということでもある。
“彼女”に会えなかったら、高村恭司は数日の内に発狂していたに違いない。
……自らを魔法使いと名乗った彼女は、この眼を抑える眼鏡をくれた。同時に残してくれた助言は、今でも一言一句違わずに胸に刻み込まれている。
「滅多なことでは外しちゃダメ。異常は異常を呼び寄せる。自ら進んで平穏を離れる必要なんてないわ。危ない目に合いたいなんて思わないでしょう?
──それでも。あなたがよく考えて、どうしても必要だと思ったのなら。
その時は、眼鏡を外しなさい。あなたの眼は、きっとそんな時のために授けられたのだから……」
ならば今がその時だ。高村は向き直った。
眼前には得体の知れない怪物。背後には出会って間もない一人の少女。
男として女の子を守るのは当然のことだ。ましてや教師たる今の彼にとって、鴇羽舞衣は自分の生徒なのだから。
薄闇垂れ込める森の中。
高村の瞳が放つ蒼い光が、ただ鮮やかに怪物を見据える。
「かかってこい、化け物。
俺のこの眼は飾りじゃない。生きているなら、神さまだって殺してみせる──!!」
銅剣を抜き放つ。その柄は、まるで自身の肉体の一部であるかのように高村の掌に馴染んでいた。
************
<注>
というわけで、ご存知の方は分かるでしょうが「月姫」とのクロスオーバー。
かつ、最後のセリフは「空の境界」から借りています。
裏山に探索に向かい、舞衣と出会う高村。
ここで確か、オーファンとの初めての戦闘になるはずです。
当然ながら大苦戦するのですが、このSS未満作品の高村は直死の魔眼の持ち主ですから独力で倒せてしまいます。凪の段取りはいきなり狂うのでした(ぉ
もっとも、彼は別に武術家でも暗殺者でもありませんので、苦戦するのは確かなのですが。
SS『ここから始まる物語・おまけ』(マクロスF・アニメ版)
もう三度目ですが……
注:このSSはジョークです。
「シェリルさぁん♪」
「く、クランっ、助けてちょうだ――ぁんっ!」
「しぇ、シェリル……」
「ランカさん……」
「やれやれ。――なあ、アルト」
「なんだ?」
「これは……楽しいな」
「だろ?」
アルトとミハエルは囁きあった。
背後からシェリルに抱きつくランカ。
必死でクランに助けを求めるシェリル。
そのシェリルの表情に艶かしさを感じて顔を赤らめてしまい、その倒錯を自覚して戸惑うクラン。
そして、ランカに抱きつかれるシェリルを羨ましげに見つめるナナセ。
百合萌えの人間にとって、これほど素晴らしい情景は無い。
少年二人は、新たな友情を結び合ったのである。
「楽しくないですよぅ!」
年長二人とは違い“目覚め”ることがなく、しかもそもそもナナセに想いを打ち明けてすらいないかわいそうなルカ・アンジェローニは、想い人の視線がランカだけを追い続けてい る現状に泣きそうだった。
君も仲間になれ。きっと素晴らしい世界が待ってるぞ。
【今度こそおわり】
注:このSSはジョークです。
「シェリルさぁん♪」
「く、クランっ、助けてちょうだ――ぁんっ!」
「しぇ、シェリル……」
「ランカさん……」
「やれやれ。――なあ、アルト」
「なんだ?」
「これは……楽しいな」
「だろ?」
アルトとミハエルは囁きあった。
背後からシェリルに抱きつくランカ。
必死でクランに助けを求めるシェリル。
そのシェリルの表情に艶かしさを感じて顔を赤らめてしまい、その倒錯を自覚して戸惑うクラン。
そして、ランカに抱きつかれるシェリルを羨ましげに見つめるナナセ。
百合萌えの人間にとって、これほど素晴らしい情景は無い。
少年二人は、新たな友情を結び合ったのである。
「楽しくないですよぅ!」
年長二人とは違い“目覚め”ることがなく、しかもそもそもナナセに想いを打ち明けてすらいないかわいそうなルカ・アンジェローニは、想い人の視線がランカだけを追い続けてい る現状に泣きそうだった。
君も仲間になれ。きっと素晴らしい世界が待ってるぞ。
【今度こそおわり】
SS『ここから始まる物語・2』(マクロスF・アニメ版)
別名『アルト様がみてる』。
注:このSSはジョークです。
「シェリルさん♪」
「ら、ランカちゃん、その、ね? 人が見てるから――」
「大丈夫ですよ、女の子同士だもん」
そう言って、シェリルの腕にしがみつくランカ。
戸惑いつつも、その行動を止められずにいるシェリル。
そんな二人を温かく見つめるアルト。
あれから早くも半月が経過した。
ランカの攻勢は収まるところを知らず、シェリルの困惑もひとしおであった。
だんだん陥落しつつあるなーというのは、見てる者にしかわからない事実である。
『見てる者』ことアルトは思った。これはちょっと楽しいぞ、と。
恋人に他の人間が言い寄っている。
見紛うことなき浮気フラグだが、アルトは色んな意味で達観していた。
他の男がシェリルに言い寄ったなら、メサイアを私的利用してでも“穏便に話し合う”つもりだし、もしシェリルが他の男に愛を囁いているのを目撃してしまったら自分はきっとその場で自殺したくなるに違いないなどと阿呆なことを大真面目に考えているアルトであったが、先だって呟いたとおり、
「まあ、ランカならいいか」
と思っている。
ランカがシェリルのことを好きだと知った時、アルトは驚きこそしたが、嫉妬は欠片も浮かばなかった。
第一にランカは男ではなく女であり、
第二にランカは自分とシェリルと一緒にフロンティアを守った同志であった。
そして第三に、なんといっても、彼女が想うのはアルト自身が心底惚れ抜いたシェリル・ノームなのである。
だってシェリルはかわいいもんなー。
アルトの内心はデレデレだった。もう誰にも手のつけようがないほどにシェリルに惚れていた。ランカの恋心を認めるどころか、同士として歓迎する勢いである。作者的「抵抗感無く萌えられる男のツンデレ」第一位を突っ走っていた頃の面影はもうない。
シェリルの心がランカに向かうとしても――遠からず強制的にそうなりそうな雰囲気だが――それで自分が捨てられる、とはアルトは思っていなかった。自分とシェリルの絆はそう簡単に切れるものではないというくらいの自信はある。帰ってきてから言うつもりだった『続き』はまだ告げていないが、しかしいくらなんでもあの雰囲気でアルトの気持ちを理解できてないなんてことはないだろう。ランカと二人でシェリルを愛し、二人ともがシェリルに愛される。アルト的にはそういうイメージが既に見えていた。
……いや、二人で愛するっつっても、別に性的な意味じゃなくてね?
ここで「あわよくば両手に花を……」なんて思いつきもしないところが、早乙女アルトの早乙女アルトたる所以であった。彼は確かにランカを愛しているが、それはどちらかというと男女の愛よりも友愛、家族愛に近い。性欲は否定しないが、それを彼女に向ける気は毛頭無かった。だってそれは言い訳のしようもなく浮気ではないか!
こういうところではひどく一本気な男、早乙女アルト。
ランカが自分を慕ってくれていたのに気づけなかったことは、アルトの中に後味の悪い罪悪感としてずっと残っていたのだが、完全に吹っ切れてシェリル愛を叫ぶランカの姿に、アルトも気が楽になった。
それと、もうひとつ。
ランカが顔を赤らめてシェリルに抱きつき、シェリルが別の意味で顔を赤らめてされるままになっているあの構図は、アルトの中の何かを目覚めさせたのだ。
端的に言えば、 百 合 萌 え 。
フロンティアを救った凛々しい英雄の嗜好としては色々と台無しだが、仮に「お前、それは一応恋人関係にあるはずの男としてどうなんだ」などと言われたとしてもアルトは何ら痛痒を感じなかったであろう。そしてそれがわかるから、周りも何も言わず諦めた。
彼にとって大事なのは自分が「守れた」という事実であり、自分の外面などどうでもよかったのである。
かくしてアルトは、助けを求めるシェリルの視線に知らないふりをして、少女達のじゃれあう姿を特等席から眺め続けるのであった。空を飛ぶことの次に楽しい、アルトの第二の趣味となりつつある。
ミハエル・ブランが健在ならば、「やれやれ」とか言いつつ楽しげにそこに加わったのかもしれないが、残念ながら彼はここにはいない。
死んだから? いや実は生きてたんだよこれが。
ただ今は入院して静養中なのである。
バジュラとの戦いで負傷した状態で船外に放り出され、誰もが死んだものと思っていた彼だったが、ついこないだひょこっと帰ってきやがったのであった。
軽薄を装う態度も口調も以前のミハエルのままで、だがしかし怪我はまだまだ全然治りきっていない。どこにいたのだかは知らないが、ようやくかろうじて動けるようになった程度の身体で、無理をして戻ってきたに違いないと思わせた。
クールな彼にそこまでさせた原因も、人々は簡単に理解した。
その原因たるクランが大泣きしつつ手加減抜きで抱擁してしまったせいであっさり失神したミハエルは、前述のとおり現在入院中である。
実のところ、アルト達三人はその見舞いに行く途中なのであった。きっとクランが付きっ切りで面倒を見ていることだろう。
やたらと密着する二人の美少女アイドルと、その後ろについて歩く超絶美形の青年。
人々の視線を否応もなく集める三人組は、賑やかに病院へと向かっていった。
【了】
注:このSSはジョークです。
「シェリルさん♪」
「ら、ランカちゃん、その、ね? 人が見てるから――」
「大丈夫ですよ、女の子同士だもん」
そう言って、シェリルの腕にしがみつくランカ。
戸惑いつつも、その行動を止められずにいるシェリル。
そんな二人を温かく見つめるアルト。
あれから早くも半月が経過した。
ランカの攻勢は収まるところを知らず、シェリルの困惑もひとしおであった。
だんだん陥落しつつあるなーというのは、見てる者にしかわからない事実である。
『見てる者』ことアルトは思った。これはちょっと楽しいぞ、と。
恋人に他の人間が言い寄っている。
見紛うことなき浮気フラグだが、アルトは色んな意味で達観していた。
他の男がシェリルに言い寄ったなら、メサイアを私的利用してでも“穏便に話し合う”つもりだし、もしシェリルが他の男に愛を囁いているのを目撃してしまったら自分はきっとその場で自殺したくなるに違いないなどと阿呆なことを大真面目に考えているアルトであったが、先だって呟いたとおり、
「まあ、ランカならいいか」
と思っている。
ランカがシェリルのことを好きだと知った時、アルトは驚きこそしたが、嫉妬は欠片も浮かばなかった。
第一にランカは男ではなく女であり、
第二にランカは自分とシェリルと一緒にフロンティアを守った同志であった。
そして第三に、なんといっても、彼女が想うのはアルト自身が心底惚れ抜いたシェリル・ノームなのである。
だってシェリルはかわいいもんなー。
アルトの内心はデレデレだった。もう誰にも手のつけようがないほどにシェリルに惚れていた。ランカの恋心を認めるどころか、同士として歓迎する勢いである。作者的「抵抗感無く萌えられる男のツンデレ」第一位を突っ走っていた頃の面影はもうない。
シェリルの心がランカに向かうとしても――遠からず強制的にそうなりそうな雰囲気だが――それで自分が捨てられる、とはアルトは思っていなかった。自分とシェリルの絆はそう簡単に切れるものではないというくらいの自信はある。帰ってきてから言うつもりだった『続き』はまだ告げていないが、しかしいくらなんでもあの雰囲気でアルトの気持ちを理解できてないなんてことはないだろう。ランカと二人でシェリルを愛し、二人ともがシェリルに愛される。アルト的にはそういうイメージが既に見えていた。
……いや、二人で愛するっつっても、別に性的な意味じゃなくてね?
ここで「あわよくば両手に花を……」なんて思いつきもしないところが、早乙女アルトの早乙女アルトたる所以であった。彼は確かにランカを愛しているが、それはどちらかというと男女の愛よりも友愛、家族愛に近い。性欲は否定しないが、それを彼女に向ける気は毛頭無かった。だってそれは言い訳のしようもなく浮気ではないか!
こういうところではひどく一本気な男、早乙女アルト。
ランカが自分を慕ってくれていたのに気づけなかったことは、アルトの中に後味の悪い罪悪感としてずっと残っていたのだが、完全に吹っ切れてシェリル愛を叫ぶランカの姿に、アルトも気が楽になった。
それと、もうひとつ。
ランカが顔を赤らめてシェリルに抱きつき、シェリルが別の意味で顔を赤らめてされるままになっているあの構図は、アルトの中の何かを目覚めさせたのだ。
端的に言えば、 百 合 萌 え 。
フロンティアを救った凛々しい英雄の嗜好としては色々と台無しだが、仮に「お前、それは一応恋人関係にあるはずの男としてどうなんだ」などと言われたとしてもアルトは何ら痛痒を感じなかったであろう。そしてそれがわかるから、周りも何も言わず諦めた。
彼にとって大事なのは自分が「守れた」という事実であり、自分の外面などどうでもよかったのである。
かくしてアルトは、助けを求めるシェリルの視線に知らないふりをして、少女達のじゃれあう姿を特等席から眺め続けるのであった。空を飛ぶことの次に楽しい、アルトの第二の趣味となりつつある。
ミハエル・ブランが健在ならば、「やれやれ」とか言いつつ楽しげにそこに加わったのかもしれないが、残念ながら彼はここにはいない。
死んだから? いや実は生きてたんだよこれが。
ただ今は入院して静養中なのである。
バジュラとの戦いで負傷した状態で船外に放り出され、誰もが死んだものと思っていた彼だったが、ついこないだひょこっと帰ってきやがったのであった。
軽薄を装う態度も口調も以前のミハエルのままで、だがしかし怪我はまだまだ全然治りきっていない。どこにいたのだかは知らないが、ようやくかろうじて動けるようになった程度の身体で、無理をして戻ってきたに違いないと思わせた。
クールな彼にそこまでさせた原因も、人々は簡単に理解した。
その原因たるクランが大泣きしつつ手加減抜きで抱擁してしまったせいであっさり失神したミハエルは、前述のとおり現在入院中である。
実のところ、アルト達三人はその見舞いに行く途中なのであった。きっとクランが付きっ切りで面倒を見ていることだろう。
やたらと密着する二人の美少女アイドルと、その後ろについて歩く超絶美形の青年。
人々の視線を否応もなく集める三人組は、賑やかに病院へと向かっていった。
【了】