【89】サボリの時間 | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


倉庫の隅で、大きな音を立てて振動している裁断機。
業務用だけあり、相当煩い。

普通紙なら、十枚以上重ねても裁断出来るのだが、時間をかけて少しずつ機械にかけていく。
時には手を休めて、終業までの時間を僅かでも潰したい気分だった。


「いつまで、こんな事が続くんだろ…」


騒音紛れに呟いてみた。
独り言が自分でも聞こえないほどに煩くて、近くに誰が来ても気付かないくらい。

倉庫に来ることは、あまりない。
仕事内容にもよるだろうが、私を含む一課の事務員がここまで下りてくる頻度はそうないと思う。
しかし、笹原さんは別で―― 彼女は、倉庫でもヌシ的な存在だ。

数人いる物流担当の人達にも、横暴な口を利いたりしているが、誰も文句を言わない。…言わないというよりも、あの感じは、“諦めている”といったところか。

ついさっきまで倉庫にいた笹原さんに声を掛けられて、「美雪ちゃん、調子はどう?」なんて、遠回しに様子を探られているのか、楽しまれているのか判らない事を聞かれた。


(もう、ウンザリ…)


大袈裟に溜息をつきながら、加藤さんを待っていた。
さっきの彼女の調子では、ナンダカンダ言いながら、ここまでサボリに来るはず。
田浦さんから指摘されたミスの訂正なんて、そんなの後でいい…って感じ。

裁断にやる気など関係なく、ダラダラと紙を落としていく。


(…声が聞こえる? ああ。そろそろ、倉庫作業も終わりだから、集まってお茶でも飲んでるのかな)


さっき、倉庫のシャッターを下ろす大きな音がしたから、いつものように隣の控室で夕方のお茶でもしているのだろう。
倉庫担当は年配の男性が多くて、女性は一人だけ。その女性も私の親世代くらいだから、皆でのお喋りが大好きのようで、いつも大声で笑っている。


(…っていうか、耳が痛いかも)


ほんの数分の裁断でも、音が凄すぎて休み休みやらないと続かない。
コレ、実は何処かが壊れている、とか言わないのかな?

右横の電源を切ったところで、私はようやく気付いた。
すぐ後ろに、人が立っている。


「――!―― いつからいたの!? ゴメンね、順番待ってた?」


振り向けば、浅尾くんが「あはは」と笑っていた。




・「この人誰?」と思ったら → 登場人物
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