「・・・? どうした?」
彼の気配に、ビクッと振り返った私に、彼は何もなかったかのように声を掛けてくる。
よく解らないけれど、無意識に身体が震えていた。
「まだ寒いのか?」
言いながら、シャワーを浴びる私を、後ろから抱きしめる。
「・・・うわっ! 何でこんなに熱いの浴びてるんだよ」
あまりの熱さに驚き、一瞬私を放した。
自分でも解らない。
不思議と、熱さを全く感じなかった・・・。
どうしてだろう。
岩田さんと付き合っているのに、彼の事が解らない。
付き合っていなかった、井沢さんの事の方が解るのは―― 何故?
二人を取り巻くものから言えば、間違いなく、井沢さんの方が難解なはず。
それなのに、何故・・・?
決定的に違うものは、“話す時間と、私の想い”。
ただそれだけなのに、全然違うんだ。
「こっちに来いよ」
言われるまま、手を引かれるまま、二人して浴槽に浸かる。
優しい言葉を言われる事も、甘くいやらしく囁かれる事もなく、岩田さんは私の身体を隅々まで指先と唇で愛撫した。
(私のこと、もう、どうでも良いんでしょう?)
言葉に出来ず、頭の中で呟くだけ。
考えながらも、彼の指先だけで、身体の中心が熱くなってくる。
私は、これだけは言おうと、絶え絶えに漏らしていた吐息を飲み込み、声を振り絞った。
「さっきの電話、誰だったの・・・?」
ピクリと、彼の動きが止まった。
動作一つで、あの電話の相手が、“カノジョ”なのだと決定づけた。
「・・・電話? ・・・あー。あれは、民団の人だよ。ちょっと色々あってさ」
「女の人?」
「はあ? 男に決まってんだろ」
「・・・・・・」
「で、話聞こえたの?」
確認してくる辺りが、もう・・・。
それに、男相手に、あんな声を出すの?
私には、判断材料は、それだけで充分だった。
「ううん。内容は聞こえなかったけど、話し声がしたから・・・」
「ふーん。ならいいや。・・・ってお前、ンな事気にしてんなよ」
どういう事?
気持ちはまだ少し残っているから、気にするなって?
――もう、ワカンナイ。
ビクン・・・!
浴槽の淵に手を掛けて、私は腰を反らせた。
彼が私の中に入ってきて、奥深くへと突き上げる。
久しぶりの感覚に、身体が勝手に動いてしまう。
「・・・美雪」
耳元で名前を呼びながらも、緩急をつけて腰を動かしている。
――ゾクゾクする。
このままセ ックスに溺れられたら良いのに、思考回路は結構冷静だった。
(今の私は、彼にとって、都合の良いだけの女なんだろうな)
濡れる頬を、汗と湯のせいにして、私は静かに涙をこぼした。
・「この人誰?」と思ったら → 登場人物
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