【80】若 さ | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


本当の事を、彼に確認が出来ないまま、悪戯に時間だけが流れる。

会社では顔を合わせるものの、プライベートで会うことも、電話さえも無くなっていた。
河村さんから聞いた噂は、周囲では暗黙の了解みたくなっていて、気付いていないのは私だけ・・・みたいな感じだった。

あんなに仲が良かった由里ちゃんにも、岩田さんとの事をあまり話せなくなっていた。
もう、彼女の中では萩野さんが全てみたくなっていたし、すっかり変わってしまった由里ちゃんを見るのが悲しくて、見えない壁で遮られるような孤独感を覚えた。


ある日、何かのきっかけで、岩田さんが近々引越しをすると聞いた。

一人暮らしを始めるのかと思ったら、引越すのは実家。
何度かお邪魔をした、古い一戸建ての借家から、マンションへ移るらしい。


「何処に引っ越すの? いつ頃?」
「まだ判らない」


そんな事が、あるのだろうか?
間近に控えた、引越しの場所を知らないなんて・・・。


「それで、色々と忙しくなるから、しばらく会えなくなる」
「えっ・・・。今でも全然会えてないのに。しばらくって、どれくらい?」
「さあなー」
「・・・そんな」


私は、物分かりが良すぎた。
・・・若しくは、“世間知らず”。

彼が私に飽きて、距離を置きたがっていることを察していたが―― 認めたくなかった。
周りからの、「こんなに若い彼女を、捨てるはずがないじゃない」という、安い慰めの言葉で、自分を保とうとしていた。

岩田さんと私と田浦さんの三角関係を、きっと楽しんでいるだろう、他人の言葉を真に受けていた。

若さだけが、武器になるはずがないのに・・・。




・「この人誰?」と思ったら → 登場人物
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