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私の小説レビューG

私の読んだ小説の記録です

               メガバンク最終決戦

 

★★★★★

都市銀行である帝都銀行と東西銀行が合併した後に、帝都側は意にそぐわなかったが、関西を拠点とし全国展開していた大栄銀行と、中部地方を基盤とする名京銀行も吸収してできた日本一のメガバンクの東西帝都EFG銀行。 その中身は、多くの帝都の役員が占めて実権を握っていた。 東西帝都EFG銀行の頭取は、何とか銀行名を帝都銀行に戻したくて、金融庁長官の五条、財務省の事務次官、政党の幹事長らの罠に嵌り、超長期国債の四十年債を五兆円で購入してしまう。

 

そんなある日、アメリカ経済発の国債大暴落で一夜にして東西帝都EFG銀行は、推定損失4兆2千億円もの負債を抱えてしまう。 資産負債管理を統括し東西銀行出身者の中では最高の地位にある専務の桂は、頭取の勝手な行為を何も知らされておらず憤り茫然自失となるが、自身が責任を被ってこの銀行経営破綻の超難局を回避するための舵を取る事になる。

 

その頃、マスコミ情報で今回の東西帝都EFG銀行の一大事を知らされた多くの預金者が、預金解約のために押し寄せていた。 その騒ぎを総務部部長代理の二瓶(通称ヘイジ)は、本店並びに各支店で新聞紙で作った偽札を沢山の紙袋に詰めて預金者に見せ、銀行にはまだ金があるから大丈夫だと落ち着かせ騒ぎを収める事に成功する。 そんなヘイジの機転に一目置く桂。 

 

その後、桂が五条長官に掛け合い損金処理は行わないとしてもらい取り敢えずひと段落ついた

かに思えた。 一方で、香港で機関投資家になり大成功を収めているヘイジの高校時代の同級生の塚本が、ヘイジに東西帝都EFG銀行を買収するからヘイジにスパイになってくれと頼む。 名京銀行出身で虐げられてきた過去からヘイジの心が揺れる。 そして、塚本の心には、高校時代に失恋した女性に対するいまだに消えない深い情念があった。 そして、その女性はヘイジの昔の恋人であり、現在は桂の恋人の珠季であった。

 

そんな中、アメリカ上院議員が議会で日本の金融庁の東西帝都EFG銀行に対する裁量を批判した事から、五条長官が記者会見で一転して「東西帝国EFG銀行の負債会計処理に対する特別措置を認めない」と発表し、東西帝都EFG銀行は再び経営破綻の危機に陥ってしまう。 

 

ヘイジは、スパイとなって桂の下で働きつつ、塚本と組んで銀行を買収した後に自身は役員になろうと目論み、桂は大栄銀行出身の2人の常務と組み行内で革命を起こそうとしていた。

そして、五条長官は、アメリカのファンド会社の日本担当であり桂の死んだ親友の不倫相手だった佐川瑤子、それから何と内部の裏切り者の東西帝都EFG銀行の副頭取と組んで東西帝都EFG銀行の息の根を止めようとしていた。 副頭取は、東西帝都EFG銀行がアメリカに売られ、その後に

新しくできる銀行の頭取のポストを五条長官に約束されていての裏切りだった。

 

五条長官の妨害で、桂や塚本とヘイジは計画が頓挫し、悪の黒幕である五条長官を打ち倒す為に桂とヘイジは奔走する事になる。 五条長官は、戦前から続く日本の闇の官僚組織と繋がりがあり、日本を裏で操るフィクサーで、東西帝都EFG銀行をアメリカに売り払い甘い汁を吸おうとしていた。 しかし、父親を死に追いやった張本人が五条だと知った瑤子が、愛する人を裏切り、仕事も、地位も捨て五条に復讐する為に桂に協力し、財務省の事務次官も日本を守るための義侠心で桂に協力する。

 

最後は、臨時株主総会で、珠季が桂とヘイジを救うために自身の財力に物を言わせた真の力を発揮しアメリカのファンド会社に止めを刺し大逆転すると同時に、五条長官は、これまでの陰謀、裏工作の数々が明るみに出て失脚する。 更に五条は、闇の組織の工作で自殺を偽装し行方を晦ませる。 

 

この手の銀行を舞台にした小説は、必ず池井戸潤の作品と比較されると思うが、どちらもエンターテイメント性があるけど、大衆娯楽という意味では池井戸潤の作品の方が少し優れているかもしれない。 でも、この作品での話のスケールのデカさや、四転五転六転する展開のインパクトが凄まじく池井戸作品を圧倒し凌駕していて非常に楽しめた。

               邪神の天秤

 

★★★☆☆

主人公の元刑事部捜査一課の鷹野警部補は、後輩同僚が目の前で職質中に殺害された事件が迷宮入りしたのを自身が解決する為に、公安部に移動を願い出て公安五課に配属される。

刑事部と公安部での捜査方法の違いや考え方の違い、五課のメンバーらのスカした態度に戸惑い

ながらも共に猟奇殺人事件を追う事になる。

 

事件は、大物政治家が廃墟ビル内で何者かに殺害され、内臓を取り出された上に心臓が天秤に載せられ、天秤のもう片方には羽根が載せられていた。 それは古代エジプトの埋葬書「死者の書」の内容を模倣したものだった。 公安分析班は、政治家が殺害される直前にいっしょにいた私設秘書の森川の関与を疑いつつ、政治家を犯行現場に誘導するために使われた爆弾から、爆弾を製造したと思われる元過激派の男をマークしていたが、その男と秘書が接触する所を確認する。

 

更に秘書の森川を調べたら、森川に成りすましていた別人である事が分かり、森川の郷里に行き

消息を調べたら、本物の森川は新興宗教絡みで両親に殺害され家の中に遺体が隠されていた。 そして、殺害された大物政治家は、破防法の法改正で、その新興宗教団体を摘発、解体しようとしていて、新興宗教団体に殺害されたものと考えられ、偽森川も新興宗教団体の人間だった。

 

鷹野の相棒の女性捜査官は、その新興宗教に入信している人物を何年も前から買収してスパイとして使っていて、爆弾テロの情報を入手しテロを未然に防いだが、今度は大物政治家の殺害事件と同じ手口で大学教授が殺害され同じ犯人による犯行と思われた。 鷹野は、改めて最初の大物政治家の事件を検証し、犯人がドライブレコーダーに映っていると思われる車を割り出し意外な犯人を見つけ出し逮捕する。

 

しかし、確かに犯人の男は殺害の実行犯であったが、新興宗教団体から依頼を受け犯人を陰で操り「死者の書」を模倣した現場工作をしたのは、鑑定士と呼ばれるまったく謎の人物だった。

今後、公安分析班シリーズとして、公安第五課と鑑定士との闘いを描いていくのだろうが、公安の偏見のある捜査方法はダメで、捜査一課の捜査方法の方が優れていて、公安は無能、刑事は優秀という事を作品全編を通して作者は言いたいようだ。 確かに公安五課のマヌケな捜査体制とかもあったが実際はどうなんだろうか?

                                                                   

 

★★★★

高校時代のイジメが原因で引きこもりになった人生という大そうな名前の24歳の青年は、父親と離婚した母親と2人で安アパートで自身は自堕落に生活していたが、ある日突然に母親が書置きを残していなくなってしまう。 

 

その書置きには、今年来た10枚ほどの年賀状の中に、あなたを助けてくれる人がいるかもしれないから連絡を取ってみなさいと書かれていた。 人生は子供の頃に何度も遊びに行って大好きだった父方の祖母のマーサばあちゃんから来た年賀状を頼りに東京から長野の蓼科まで訪ねる事にする。 でも、何で人生は、出て行った母親に電話やメールをしてみたり、母親の職場を通じて捜そうとはしなかったのだろうか。 それは、母親から捨てられたという思いからなんだろうか。 

 

人生がイジメられる場面は胸が痛かったし、1人になって心細く不安な人生や、息子を捨てて部屋を出なければならなかった母親の苦しみも気がかりだった。 途中で幸運な出会いもあり無事マーサばあちゃんの家に辿り着いたが、 ばあちゃんは認知症で人生の事を何も覚えていなかった。 そして、ばあちゃんの家には、中学生くらいに見えるが21歳で初対面の父親の再婚相手の連れ子のつぼみという女性が居ていっしょに暮らしていた。 更にそこで、ずっと会っていなかった人生の父親が病死していた事を知る。

 

ばあちゃんの家に泊まった翌日、ばあちゃんが人生のケータイを水没させてしまい、人生はショックと怒りで東京に帰ると家を飛び出すが、駅で電車に乗る決心がつかずまた戻ってくる。

そんな人生を涙で再び温かく迎え入れるばあちゃん。 こうしてマーサばあちゃん、つぼみ、

人生の3人での共同生活が始まる。 そして、人生は清掃会社のアルバイトで働き始め、初任給でケーキを買い給料をばあちゃんに渡す。 母親にもこうするべきだったと後悔する人生。

 

人生とつぼみは、ばあちゃんの持つ小さな田んぼで特殊で非常に面倒な方法での米作りを始めようとするが、その矢先にばあちゃんの認知症が急激に悪化してしまう。 それ故に人生とつぼみは、米作りを通してばあちゃんを励まそうと決心する。 それにしても人生らにいろいろ親身にアドバイスをして力を貸してくれる食堂の志乃さんが非常に頼りになる存在でマーサばあちゃんと共に仏様のような人だ。

 

しかし、ここまで読んできてベタで典型的な登場人物達と展開が、米作りを手伝うために親から無理やり参加させられた大学生とかも含め、この後の展開がミエミエだし、最初の方で余命短い病気だと思っていたばあちゃんが、そうでないと分かった時から、人生とつぼみを蓼科に呼び寄せた年賀状の秘密も察しがついていたし、もう少しラストへの展開に向けての意外な捻りがほしかった。 凄くいい作品なのは間違いないと思うが、予定調和過ぎて泣ける作品ではなかったのが、ちょっと残念だった。

              黄色館の秘密

 

★★★☆☆

偏屈で好色の実業家、阿久津又造が家族と暮らす黄色館は、世界の珍品を集めた秘宝館が併設されていて、そこにある黄金仮面を盗むと窃盗団から予告がある。 館に宿泊していた知り合いの虹子から呼び出された密室殺人事件マニアの黒星警部が成り行きで警備に当たる事になるが、

はたして黄金仮面は盗まれてしまい密室で阿久津が殺害されてしまう。 

 

これにより大雪で陸の孤島となっている館に残されたのは、黒星と虹子の他には又造の後妻の貞子、前妻との長男の隆一郎、貞子の連れ子のユリと麻衣、又造と貞子との間の次男の洋二、秘宝館の管理人の鶴田、使用人の虎山夫婦、又造の秘書の明美だが、洋二と鶴田は、事件が起こる前の夜の早い内に館を出て山を下りていた。 館の後ろは断崖絶壁で大雪で麓から上がってくる外部からの侵入も不可能と見た黒星は、館に残された者の中に犯人がいると推理する。 

 

そうこうしている内に、今度は明美が密室で殺害され、鶴田が帰る道で車が動けなくなり歩いて館に戻ってくる。 そして、次は洋二までもが館内で殺害されて発見される。 何かここまでは、いつも捻りに捻りまくって訳が分からない折原一にしては珍しいオーソドックスな王道ミステリーの展開という感じが続き驚いた。 

 

結局、又造に部屋に押し入られ犯されそうになった明美の又造の殺害方法だが、予めコンドームに雪を詰めて凍らせての撲殺って、氷の棒で相手を殴って死に至らしめるには、結構大きい棒じゃないとダメだと思うが、それだけの氷の量を、悲鳴を聞いてみんなが駆けつけるまでの短時間に証拠隠滅のために全部食べて、コンドームは又造の股間に装着するなんて、そんな時間があったとは到底思えない。 もっと理に適った犯行方法を期待したのだがちょっと残念。 

 

作中の些細な描写から鶴田と明美が男女の仲なのではと薄々感づいていたし、ミステリーってアリバイがハッキリしている者とか、犯行時間に現場にいなかった者が犯人というパターンが多いから鶴田が何か犯行に絡んでいるのではと思っていたが、鶴田は黄金仮面を盗んだだけで、本当の殺人事件は、明美が又造を殺害したものだけで、明美と洋二の死因はアクシデントによる事故死とか、更に潜入していた窃盗団の工作で事件が混ぜ返されて変に複雑になったとか、無能で役立たずの黒星警部のコミカルなキャラに合わせて中途半端なコミカル風になってしまっていて、途中までせっかくの王道ミステリー路線だったのに、わざとショボく終わらせなくてもいいのではと思った。