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吉原の遊女が死んだ時に、躯を投げ込む投込寺の用心棒を務める月ヶ瀬右近は、訳あって本名も身分も捨て、生家のある京を出て江戸に身を置く源氏天流の剣の遣い手であった。
右近は、自分の親友と駆け落ちして京を逃れたはずの女が売女として捕らえられているのを見かけ、女の住んでいた長屋を捜して訪ねた先で、昨夜自害した親友を供養していた、近く吉原に売られる事になっている近所に住むお千代と云う娘と知り合う。
数日後、また投込寺に吉原に売られた娘達と女衒が殺害されて投げ込まれ、そこから右近は、吉原遊郭総名主の配下の者達と共に、遊女になる娘を何人も捕らえて殺害する事件の下手人を探っていく。 そして、地元のヤクザ者の赤鬼の金造一家の動きを捉え、右近は殺害された女衒の切り口の見事な太刀筋から、道場破りを繰り返し剣の達人を捜し出そうとする。
やがて備前畷川藩士らが裏長屋住まいの母娘二人暮らしで、唇の左下に黒子のある十七の娘を捜しているという事が分かってくる。 そして、お千代は、その条件に当てはまっており、更にお千代は、ある大身の武士のご落胤という噂が広まっていた。
そして、腕の立つ二十代後半の旗本として、赤鬼の金造とも繋がりのある旗本次男坊で柳生新陰流の遣い手である堀田甲次郎が浮かび上がり、商人の遠州屋を軸に畷川藩と堀田甲次郎との繋がりも分かってくる。
事の真相は、堀田甲次郎の父である堀田上総守が、畷川藩の若き城主が病弱で死期が近い事から、行方知れずの城主と双子の姫君を捜し出し、息子の甲次郎と添わせ甲次郎を畷川藩の城主にしようと遠州屋を通して国許家臣を使い陰謀を画策したものだった。
最後は、もう潮時と堀田上総守が、国許から秘密裏に江戸に呼び寄せた畷川藩士ら全員を毒殺し、更に赤鬼の金造一家を使いお千代を拉致する。 右近は、遠州屋と堀田上総守を始末し、
本当は姫君などではないお千代を救い出すべく畷川藩下屋敷に向かい堀田甲次郎との一騎打ちとなるが、剣の技量では右近より勝る堀田に対して些か卑怯な手を使うが、それもまた命を懸けた剣豪同士の戦いとしては面白い。
途中までは、赤鬼の金造一家、畷川藩士、堀田父子、遠州屋、お千代の出生の真偽が、事件の中でどう結びついているのかが分からず、右近らの捜索も迷走し読んでいて散漫な感じがしていたが、真相に向けて話が収束していくとなるほどと改めて味わいを感じる事ができた。




