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私の小説レビューG

私の読んだ小説の記録です

                弁天殺

 

★★★☆☆

吉原の遊女が死んだ時に、躯を投げ込む投込寺の用心棒を務める月ヶ瀬右近は、訳あって本名も身分も捨て、生家のある京を出て江戸に身を置く源氏天流の剣の遣い手であった。

 

右近は、自分の親友と駆け落ちして京を逃れたはずの女が売女として捕らえられているのを見かけ、女の住んでいた長屋を捜して訪ねた先で、昨夜自害した親友を供養していた、近く吉原に売られる事になっている近所に住むお千代と云う娘と知り合う。

 

数日後、また投込寺に吉原に売られた娘達と女衒が殺害されて投げ込まれ、そこから右近は、吉原遊郭総名主の配下の者達と共に、遊女になる娘を何人も捕らえて殺害する事件の下手人を探っていく。 そして、地元のヤクザ者の赤鬼の金造一家の動きを捉え、右近は殺害された女衒の切り口の見事な太刀筋から、道場破りを繰り返し剣の達人を捜し出そうとする。

 

やがて備前畷川藩士らが裏長屋住まいの母娘二人暮らしで、唇の左下に黒子のある十七の娘を捜しているという事が分かってくる。 そして、お千代は、その条件に当てはまっており、更にお千代は、ある大身の武士のご落胤という噂が広まっていた。 

 

そして、腕の立つ二十代後半の旗本として、赤鬼の金造とも繋がりのある旗本次男坊で柳生新陰流の遣い手である堀田甲次郎が浮かび上がり、商人の遠州屋を軸に畷川藩と堀田甲次郎との繋がりも分かってくる。

 

事の真相は、堀田甲次郎の父である堀田上総守が、畷川藩の若き城主が病弱で死期が近い事から、行方知れずの城主と双子の姫君を捜し出し、息子の甲次郎と添わせ甲次郎を畷川藩の城主にしようと遠州屋を通して国許家臣を使い陰謀を画策したものだった。

 

最後は、もう潮時と堀田上総守が、国許から秘密裏に江戸に呼び寄せた畷川藩士ら全員を毒殺し、更に赤鬼の金造一家を使いお千代を拉致する。 右近は、遠州屋と堀田上総守を始末し、

本当は姫君などではないお千代を救い出すべく畷川藩下屋敷に向かい堀田甲次郎との一騎打ちとなるが、剣の技量では右近より勝る堀田に対して些か卑怯な手を使うが、それもまた命を懸けた剣豪同士の戦いとしては面白い。

 

途中までは、赤鬼の金造一家、畷川藩士、堀田父子、遠州屋、お千代の出生の真偽が、事件の中でどう結びついているのかが分からず、右近らの捜索も迷走し読んでいて散漫な感じがしていたが、真相に向けて話が収束していくとなるほどと改めて味わいを感じる事ができた。

                 巨悪利権

 

★☆☆☆☆

湯布院温泉で、九州の大物ヤクザが毒を仕込まれた吹き矢で暗殺される。

やがて事件は、宗教団体やチャイニーズマフィアも絡んだ巨大な悪の利権へと繋がっていき、

暴力団系列内部での対立もあり、それらに警視庁公安はどう対峙していくのか。

 

警察小説って大抵それなりに面白いというのが私のこれまでの印象だが、本作はかなりつまらなかった。 何でこんなにつまらないのだろうか。

本作は、事件や犯人を含め事件に関わっている人物に焦点を当てているというより、警察機構に焦点を当てているために、事件そのものより警察組織に興味のある人は楽しめるかもしれないが、事件を通しての公安や暴力団組織関係者の人間模様に期待していた人には期待外れな内容だろう。

 

それに警察小説って現場の最前線で地道な捜査に当たる刑事が主人公というのが多いと思うが、先にも述べたが警察機構を中心に描いてあるから、警視という階級の管理官クラスの人達の横の繋がりを中心に描いたものというのもつまらない一因かもしれない。 更に登場人物らの所属先や階級の漢字数が多く分かりにくくて読みづらいというのもあり人を選ぶ作品だと思う。 

                ロマンシエ

 

★★★☆☆

ロマンシエとは、フランス語で小説家の事なんだそうだ。

主人公のアーティストの卵である男性は乙女で只々気色悪かった。

これまでもLGBTの人が出てくる小説を結構読んだ事がある気がするが、気色悪いと思ったのは今回が初めてかもしれない。

 

さすがに主人公が恋焦がれる大学の同級生の男性に、抱かれたいとか結ばれたいとか、とにかく終始乙女々してキュンキュン・クネクネしている姿は、私的にはちょっと無理だった。

 

本作はコメディー寄りだと思うが、普通コメディーなら主人公のようなオネェキャラは面白い要素なのだが、本作の主人公は、同性に恋焦がれる想いがあまりに強く一途過ぎるためにドン引きしてしまう。 作者は面白さとマジなキモさのさじ加減を間違えているような気がする。 

 

終わりの方で主人公が、同級生の男性に大失恋する所の悲痛な切なさにグッとくるものがあったけど、別に主人公をLGBTに設定する必要なんかなくて、普通の女性で全然良かったと思う。

でも、そうするとありきたりな失恋と再生の物語になってしまうのかもしれないけど、人の人生って大抵ありきたりなもので、それを巧みに描いて読ませ、読者の心に届けるのも"小説家”ができる大事で素敵な仕事だと私は思うけど。

                麒麟の翼

 

★★★☆☆

東京都中央区にある日本橋の上で胸を刺された男性が死亡した。 男性は少し離れた別の場所で

刺され日本橋にある麒麟の像まで何とか自力で移動してきた様子だった。 その後に、巡回中の警察官に職務質問された20代の男性が急に逃げてトラックにはねられ意識不明の重傷を負う。 逃げた男性は刺された被害者の財布を所持しており警察は容疑者として捜査を進めていく。

 

被害者男性は、建設部品メーカーの本社製造本部長で、妻と2人の子供がいるが、家族からは

疎外されていて特に息子との関係が上手くいってなかった模様。 一方の容疑者の男性は、同じ郷里出身の同棲している恋人がいて貧しい暮らしの中で相手女性は妊娠していた。

 

容疑者は、被害者が会社の工場で工場長をしている時に派遣社員として働いていて、警察は、その時の労災トラブルの恨みで被害者を襲ったものと考えた。 そうこうしている内に容疑者が病院で意識が戻らないまま死亡する。

 

加賀刑事は、被害者の不可解な行動を調べていく中で、被害者が七福神巡りをしていた事を突き止める。 そして、ここから話は思わぬ方へ急展開して、被害者の一連の行動は、被害者の息子が中学時代に起きた学校の部活でのプール事故に息子が関わっていた事で被害者生徒に対する、加害者生徒の父親としての償いだった。 タイトルの麒麟の翼というのも、その被害者生徒とその家族の苦悩、並びに回復の祈りを込めた深い意味合いのあるものだった。

 

そして、事件の真犯人は、プール事故に被害者の息子と共に関わっていた息子の友人で、被害者が息子の友人に自首を説得したために起こった事件だった。 そして、中学の水泳部の顧問の教師も真犯人と共に自己保身しか考えない非常に悪質な人物だと思う。 それから死んだ容疑者だった男性は、たまたま犯行時に通り合わせただけで、生活苦から魔が差して被害者の財布を盗んだのだった。 でも、いくら生活苦でお金に困っていても、瀕死の重傷の人物から財布を盗んで逃げるなんて事するだろうか。 普通すぐに救急車を呼ぶだろう。 

 

本作は、被害者の父親と息子の関係を、加賀親子とも多少重ね合わせながら描かれているが、

この作品には他に解せない所がある。

冒頭の、加賀の父親が3年前に死んだ時の病院の担当看護師が、三回忌の法事まで面倒を見るなんて職務範囲を超えた事を普通するか。加賀の気を引くためならちょっとキモいし、加賀刑事シリーズの別作品で、彼女は加賀の親戚筋とか加賀と深い仲だとか描写があったかな?

 

私は東野圭吾の加賀刑事シリーズを、ほとんど読んでいると思うが、加賀刑事の頭脳明晰でそつのない姿に人間味を感じず、いつもただの文章の中の人という薄い印象しかない。

                円卓

 

★★☆☆☆

かなり風変わりでめんどくさい性格の小学3年生の琴子(通称こっこ)は、祖父母、両親、三つ子の姉の8人家族で暮らし、家族みんなからとても愛されていた。 タイトルの円卓は、近所の

中華料理店から貰った大きな円卓が、こっこの家庭の居間に所狭しと置かれていて家族の団らんの象徴的存在だからか。

 

とにかくこっこは、目新しい事、未知な事、変な事に興味があり、普通の人が嫌がるモノ、みっともなくて恥ずかしいと思う事が、クールでカッコイイ事だと感じ、自身は大家族の影響か孤独を愛し常に凡人ではいたくないと強く思っていた。

 

いくら見た目が可愛い女の子でも、クラスにこんな変人がいたら私は積極的に関わりたいとは思わない。 でも、同じ公団に住むこっこと仲の良い男の子のぽっさんは、吃音で少しスムーズには喋れないけど(こっこは、吃音もクールに感じてる)、心優しくて賢くて誠実で、このぽっさんの存在が作品全体を通して凄くいい。 私の子供時代にも、こんなぽっさんのような子が友達としていたら良かったなと思えた。 

 

きっとこっこは、年頃の女性になったらダサい変な髪形をし、ダサい変な服を着て、ダサい変な色の車に乗るんだろうなぁ。 私の職場にも顔は凄く可愛いのに、野暮ったい服を着て、年寄りが乗るような色の車に乗っていた若い女性がいたが、彼女曰く若い女性が着るような服や、若い女性が乗るような車の色は絶対に選ばないと言っていた。 なるほどなぁ。 そりゃ野暮ったくなるはずだわ。 何かこっこの将来も不安になるが、ぽっさんがいてくれるから大丈夫か?