★★★☆☆
昔は日本の領土だったらしい南の島で、父親が経営するホテルを手伝う12歳の少年ティオの日常
や島の人達、ホテルの宿泊客らとの関りを描いた11編の作品からなる連作短編集。
11編の内の半分ほどが島の精霊や島を訪れた人が見せる不思議な魔法や、人が落ちて死ぬ事を予言する島の老婆の話や、戦時中に島で戦死した多くの日本兵らが霊となって日本に帰る話もあり、摩訶不思議なファンタジー要素のある児童文学作品と云える。
しかし、主人公のティオが、12歳とは思えない妙に落ち着いた少年で淡々としているから、作品全体も淡々とした可もなく不可もなしといった薄い印象を受ける。
そんな中で印象に残ったのが「ホセさんの尋ね人」で、島で出会った若いホセとマリアは、5年ほど島でいっしょに暮らしたが、ホセは故郷のフィリピンへ一時帰国し、またすぐにマリアを迎えに来るつもりだったが、いろいろあってそのままマリアの元へ帰ってくる事はなかった。
マリアはホセを5年待った後に追いかけてフィリピンへ渡ったが、ホセの住所も知らず会う事ができないまま20年間フィリピンで暮らした。
その20年間のフィリピンでの暮らしで、どんな苦労をしたのかは分からないが、マリアは大金を稼いでまた島に戻って来た。 そして、ずっとひたすらホセが来るのを更に島で10年待ち続けたが会える事なく死んでしまう。 その後、ホセが35年ぶりに島へマリアを尋ねてきたが、マリアはもう死んだ後だった。 2人それぞれの40年の歳月とはどのようなものだったのか。
マリアを知る島の人物が、誰かを待つというのは心の支えになる。 だからマリアは満ち足りた生涯を終えたのかもしれないと云うが、果たして本当にそうなんだろうか。 悲しみと淋しさでずっと辛い人生だったのではなかったかと私は思ってしまったが・・・。
どちらにしても悲しい話だった。
