パン作りを通じて
野生の力を取り戻す
五感パン職人の
ジェニーです
の続きです。
過酷な労働条件の中でも、ジェニーは文句一つ言わずに頑張っていました
ジェニーの頑張りは上司からは着実に認められていたし、後輩からも(たぶん)慕われていました。
2年間のオーブン担当で、
その頃には腕は火傷だらけ。
ある日、
普段は別店舗にいた社長が来た時に、
私の火傷をみて、
長袖の白衣を発注するようにと
一言言って去りました。
私も、一緒に仕事をしていた専務も、
「え?ただでさえ暑くて汗だくなのに、長袖?」
と、ぽかーん
社長は私が女性なのに
火傷だらけになっているのを
気にしてくれたのですが、
パン屋で働いている時は、
仕事に関しては女性だから…
という価値観なんて、ほぼなし。
きっとパン屋じゃなくても
働く女性はみんな経験しているのだと思います。
女性だからという理由で、
ほかの人と違う待遇を受けるなんて
思いつきもしなかったので、
一同戸惑ったのでした。
でも、専務も「そうやんなー」
と長袖を発注してくれたので、
ジェニーは汗をかきかき、
長袖を捲り上げてまた仕事に励んだのでした。
さて、
そんなこんなでパン職人3年目を迎える春、
ジェニーは仕込み係に大抜擢されました
これはかなりすごい事でした
前にも書いたけど、
その店は店舗販売だけでなく、
宅配業者への卸もやっていたので
普通のお店よりも規模の大きな工房でした。
普通の街のパン屋さんなら、
粉5キロぐらいが捏ねられるミキサーが
1つあれば間に合いますが、
その店には
・粉5キロの縦型ミキサー
・粉30キロのスパイラルミキサー
・粉100キロのスパイラルミキサー
の3つのミキサーがあり、
仕込みはその3つを同時に動かして
次々と生地を捏ね上げていきます。
その後の分割・成形の係、
オーブンの係、
全ての工程に影響を与える、
工場全体の司令塔。
それがミキシング係です
その店で女性がその担当になるのは、
ジェニーが初めてでした
新しい店舗を作る予定があるから、
仕込みを覚えて、
その店を任せたいと思っている

と、専務に言われました。
2年間、1階のオーブン担当をやってきて、
2階の仕込みチームの仕事を
全然みていないので不安はありました。
先輩の社員さんの中にも、
大丈夫か?という声はありました。
でも、みんな
「ジェニーなら大丈夫やろ」
って言ってくれました。
それはどういうことかと言うと、
2階の仕込みチームのリーダーは、
大手パン屋から移ってきた、
職人歴の長い、仕事のできる人だったのですが
とってもコミュニケーションが
とりにくい方でもありました。
要するに、怖かったんですな
背が高くて仕事は出来るけど、
アレルギー&喘息持ちだったため、
しゃがれて小さく、聞き取りにくい声でした。
でも、怖いので、みんな
聞き取れなくても聞き返せないんです。
それで伝達が上手くいかなくって
また怒る…
出来る人だけど、
まぁまぁのトラブルメイカーでもありました。
仕込みはその人について
習わなくてはならないので、
コミュ力高めのジェニーなら、
きっと出来るよ…
という、皆んなの同情と心配だったのでした。
しかし、結論から言うと、
ジェニーがその人の元で仕込みを習ったのは
とても短い期間でした。
仕込み係になってまだ間もないときに
ミキサーに腕を巻き込まれる
事故を起こしてしまったからです。
続く…

