ブーリン家の姉妹1 | ギッコンガッタン 

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 家の納屋にあったので思わず読んでしまいました。16世紀前期のイングランドが舞台の小説です。歴史小説と言えばそうですが、実際は、王朝内の愛憎劇が主流です。小説の主人公は、イングランドの新興貴族であるブーリン家の姉妹の妹であるメアリー・ブーリンが主人公となります。

 

 冒頭は、メアリー・ブーリンが当時のイングランド王ヘンリー8世に見初められる所から始まります。王には、スペインから迎えていたキャサリン王妃がいます。そんな中、メアリーは、王からの寵愛を受け、夫はいましたが、王の愛妾となり男女一人づつの二人の子供をもうけます。

 

 その栄華の一方で、姉のアンは、結婚相手が決まりません。それでも、見初めた貴族の御曹司をたらしこむのに成功します。しかし、これを叔父さんの横やりでこの恋は、潰えます。王は、世継ぎとなる王子が王妃から授からないことにいら立っていました。傷心のアンは、今度は、王妃の座を狙います。

 

 メアリーに対しての王の寵愛は、衰えていきます。アンの策は、大当たりします。王は、アンにひかれて行きます。そして、スペインとの外交関係の悪化も後押しされ、キャサリン王妃を廃してアンを王妃に迎えようと算段します。かくして、立場が入れ替わった姉妹です。

 

 一方、イングランドの国内では、疫病が流行ります。この疫病でメアリーは、夫を失います。かくて、メアリーは、精神的にも痛手を受けます。そして、アンの次女と言う立場になります。アンは、王妃になる寸前まで来ます。そんな中、メアリーは、新たな恋の相手に出会います。ここまでが上巻の内容です。

 

 下巻の序盤は、新たな恋人との恋へと進んでいくメアリーのことと王の寵愛を一身に集める姉のアンのことが描かれる形で進みます。また、二人の叔父が策謀に満ちてあからさまに二人の事に絡んでくる様子も描かれます。メアリーと結婚するために王は、

キャサリンを冷遇して行きます。

 

 キャサリンの冷遇に対しては、廷臣に対しても厳罰であたる王の様子やそれでも、キャサリン王妃に同情的なイングランド国民の様子が描かれていきます。結局、メアリーは、ヘンリー八世の二代目の王妃となります。メアリーは、フランス仕込みの駆け引き術で王の気をさらに引きます。

 

 王の気持ちを思いっきり篭絡したアンは、どんどん傲慢になっていきます。そして、王の子が懐妊となります。叔父は、ここぞとばかりに色めきます。しかし、生まれた子供は、女子でした。後にイギリスを隆盛に導く名女王として歴史に名を残すエリザベス一世の誕生でした。

 

 一方、メアリーは、新しい恋人ウィリアムとの仲が進展します。彼の田舎の家に一緒に住み結婚まで行きます。更に子供ももうけます。私生活が充実しているように見えるメアリーですが、王との庶子にあたる二人の子供は、アンに取り上げられて自由に会えない状態に涙するという事もあります。

 

 アンは、傲慢な態度を崩さずに王妃としてふるまいます。しかし、二度にわたる流産、その後の懐妊も流産するのですが、流れた子は、かなり醜い外見でした。このような経過の中で王の心は、アンから離れていきます。アンは、自分の傍にメアリーを侍らせます。また、兄のジョージとその友達も侍ります。

 

 アンから心を離していく王は、一貴族の女性ジェーン・シーモアに傾いていきます。アンは、傲慢さと嫉妬心を燃え滾らせていきます。ただ、これは、逆効果で王の心は、ますます、アンの心を離れていきます。そして、遂にアンが侍らしていた兄とその近習遂には、アンが罪人にされてしまいます。果たして、ブーリン家の姉妹の運命や如何にです。

 

 まずは、新興貴族のブーリン家の娘達が野心家である周囲の親戚の策謀などとドロドロとした世界が描かれてかなりヘビーに描かれます。勝気なアンと宮廷よりも田舎に心を惹かれる対照的なメアリーの姉妹の対比も見事です。そして、ヘンリー8世と言う移り気が強く、愛憎の切り替えが強い強烈なキャラ設定も印象的です。もっとも、王子が出来ないことは、可愛そうに感じます。

 

 ただ、ドロドロとした宮廷劇の部分は、強い作品ですが、メアリーが泥臭さを和らげている部分も大いに感じます。下巻でのウィリアムとの純愛を大いに突き通すところが、余計にきれいに輝く心地がします。全体的に見所が多く、読み応えのある面白い作品でした。また、著者は、イングランド宮廷の女性を主題にした続編的小説も出しているので読んで行きたいですね。