我が家の納屋にあった本です。亡き母が読んでいたと思われます。妹が最近亡くなった人気女優の吉行和子さんである昭和の名文学作家の吉行淳之介先生の短編集です。表題の2作に3作合わさり計5編の短編小説が収録されています。
表題の2作は娼婦と客の間の恋愛感情がテーマです。この短編集は昭和30年に出版されています。だから、まだ赤線と言われた売春宿か存在していた時代です。今よりは娼婦と客の関係が密接であった時代背景を考えるとどこか腑に落ちる気もします。
3作目は薔薇売りと言う行商になりすました若き男が同居相手がいる女性に近づいて行く様を描いています。主人の男の心にある疾しさと女性の欲情が面白く描かれています。4作目は夏休みにとある離島で父の若い愛人らしき人と会わされてしまった少年の戸惑いが描かれています。
最後の5作目は2年にわたる結核用の長期療養施設に入っていた筆者の経験を元に描かれている作品です。まだ、病巣を切除して胸郭形成で肋骨を何本か取っていた時代の話です。こちらは恋愛も描かれてはいるのですが、今以上に非日常的で苦しい結核患者の健気さが,伝わってくる話でした。
このような文学作品を読むのはやや苦手でしたが、出来る限り家に残っている古本で挑戦してみたりします。古い文庫本らしく字が小さめなので270頁くらいなのに分量が多く感じられました。数ある人間の人間模様や1人の人間に絞ったにせよ色々な人々のないまぜな感情をよく切り取り上手く読ませている作家と思えました。また、からの作品を読んでみたいと思いましたね。
