石平の新解説・三国志「愚者」と「智者」に学ぶ生き残りの法則 | ギッコンガッタン 

ギッコンガッタン 

日々、気の趣くままに綴る雑記帳

 

 

 保守派の論客の一人である石平さんの著書です。石平さんは、シナから日本へ帰化した人ですが、普通の生粋の日本人よりも愛国者と言えます。ただ、この著書は、現代政治の論説書ではなく、三国志を題材に社会での人間の生き方を論じています。

 

 最初の題材が三国で一番の大国だった魏を最終的に乗っ取り三国時代を終わらせた西晋の太祖である司馬懿が魏の皇族で朝廷内の実力者であった曹爽を葬った高平陵の変です。司馬懿は、この事件をきっかけに魏の政治の実権をほぼ完全に掌握します。

 

 この事件では、隠忍自重しながら、機会を見つけて邪魔者を葬る策を果断に実行した司馬懿と相手を見くびる甘い考えで身の破滅を招いた曹爽を対比して論じています。百戦錬磨の策士と甘ちゃんの坊ちゃんの対比説明が良かったです。

 

 その次は、蜀の二代目にして最後の皇帝となった劉禅が題材です。結果的には、父親が築いた蜀を滅ぼすこととなりました。彼は、その為もあり、暗愚な君主いわゆる馬鹿殿とみられています。しかし、石平の視点では、評価は、変わってきます。

 

 劉禅は、即位前半期は、諸葛亮と言う傑物に政治を任せます。その後も波風立てず、後半期は、いよいよ魏に滅ぼされる前までは、平和な安定期を蜀にもたらしました。最後に魏に滅ぼされる時もあっさりと降伏し、子孫を永らえることにし成功しました。

 

 好戦的で征服地を広げていく英雄ではなく、自分の分を弁えて、波風を立てることなく、いい感じに賢臣に任せて政治を安定させていたことを石平氏は、大いに評価しています。単なる暗愚な馬鹿殿では、ない今までにないいい評価が面白かったです。

 

 その後は、窮地に陥りかけた夫を才覚を発揮して窮地を救うばかりか出世の道さえ切り開いた妻や曹操の妻として内助の功を大いに発揮した卞夫人等の女傑の話が出てきます。男尊女卑が日本に比べて目じゃないシナでもこんなにも女傑がいるのだと驚かされます。

 

 その後は、乱世の中を立身出世は、捨てて隠遁の道を模索して生き延びていく人たちの話が出てきます。いわゆる、竹林の七賢などです。今でいういわゆる自由人という感じで仕事に疲れている現代人には、いい手本のような話にも見えてきます。

 

 その後は、権力者に媚びへつらったり、傲慢な態度が災いして身の破滅を招いた愚者を色々な例を示して書いています。いつの世にも確実にいる愚者の典型的なパターンで人間の本質は、どれだけ時間が経っても変わらないものだと思えます。

 

 今回の本は、三国志でも黄巾の乱から諸葛亮が北伐の陣中で没するまでの世間一般に良く書かれる三国志の場面ではなく、その後の時期が中心でしたので知らないことも多かったです。ただ、石平氏の鋭い分析と分かりやすい語り口で楽しく読めました。この本の前にも第一弾があるのでそれも探して読んでみたいですね、