クラブ・ミッドナイト -再び- | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 10日、夜8時、北見店閉店。

 

 8時20分に「今から帰る。」というメールを娘に残して、オヤジは店から自宅に走り始めた。

 北見からオヤジの家まで約50km。

 これから地元の実習を終えた娘2号を、再び札幌まで送るために、いったん網走方面に戻ってから、再び北見経由で札幌に帰るのである。

 

 北見店に走ってから自宅に戻って約100km。それから札幌まで約300km。 

 

 ほとんど休み無しで走る。さらにトンボ帰りで帰ってくるという行為は、だれから見ても狂気の沙汰でしかありえなかった。

 

 9時前に自宅に到着したオヤジは、すぐにS2000に娘2号を乗せて走り始めた。

(もちろん、タイヤの空気圧とエンジンオイルチェックは、出社前に近くのGSで確認済み。)

 

 

途中、トイレタイム+夕食の為に、遠軽のコンビニに停車。

通常、オヤジの家から遠軽までは1時間30分ほどでるが、10時10分ごろ到着。

やや早いペースである。(というか、かなり早いペースである。)

 こいつに乗り始めたら、やはり自然と早いペースとなってしまう。

 ここで初めて、夕食としてサンドイッチと、ドリンクを買う。

 

 今日で勤務は6勤目。通常は5勤が限界なのだが、今回はスタッフたちがコロナの予防接種の関係もあって、特殊な長時間勤務となった。

 

 長時間勤務の上に、更に往復700Km以上の走行。

誰が考えても異常としか考えられえない。(普通なら早めに自宅で寝て、朝早くから出発。というパターンですね。)

 

 しかし、オヤジはクラブ・ミッドナイトの総長。

  真夜中に走る行為が異常に好きな人間なのだ。

 

まずは、遠軽からパイパスに乗って旭川へ向かう。

 途中、工事中の為、白滝から丸瀬布間で下道に降りる。

(かなり霧が濃くて、視界を奪う。

横を見たら娘はすでに狭いシートでぐっすりと眠っていた。

 

 オヤジ自身は何ともないと感じていても、60に近いからだは徐々に体力の限界が始まっていた。

 バイパスに乗り始めてから、何だか疲れ方がひどくなってきた。

 ヒップで降りる標識でさえ、かなりスピードを落として確認しなければいけない程となっていた。

 

 そして、その時は突然訪れた。

 旭川を抜けて、深川に入った途端、オヤジはハッ!!としたと同時に「危ない!!」という娘の叫び声。

 センター沿いの縁石にS2000のフロンドが異常により過ぎたのだった。

どうやら疲れでボーッとしていたようだ。

とっさにS2000のハンドルを左に切る。

 一瞬、右側を擦ったかなと感じたが、無事に切りぬた。

 おかげでそれ以来、眠気が出なくなって、運転は快適その物であった。

 

 娘のほうもすっかり目が覚めたようで、それから娘と色々な事を話し始めながらのドライブとなった。

亡くなった母親の事。

 

 そして、最近、娘はスポーッカーに興味を持ちだしてきたことなど。

 いま、若い子の間では、昭和のレトロなものが人気であるらしい。

その為、昭和の街並みを表したスタジアムも出来ているほどである。

 

 娘は最初、オヤジがスポーッカーを買った事を快く思ってはいなかった。

 娘のスポーッカーのイメージは、あの爆音仕様のバリバリという音と共に、けたましく走り去る、うるさい車というイメージしかなかった。

 しかし、札幌間の往復の為に、S2000で走っていると、考え方が変わったようである。

 

 S2000のスペックは硬派な割に、そのフォルムは実に優雅である。

女性が乗っても似合うようなスタイルである。

 

 前回の札幌から高速道路で帰る時である。

 一般車がどんどん加速して、オヤジ達の車を抜いていく中、一瞬にしてその追い越した車を置き去りにしたS2000の実力に、娘なりに何か感じるものがあったのであろう。

 

「望めばお前の手元に残して置いておくよ。」

オヤジは娘にそういった。

 

 娘1号ひとりで維持できるわけもないので、もともと、このS2000はオヤジが65歳になったら、手ばなすつもりであった。

 

「この車は、多分、後5年もしたら、普通の人が買えなくなるぐらい金額があがる車だ。だから、もし、お前が望めば、お前にために車は残しておくよ。」

 

「だって、残してもらってもマニュアルの免許ないもの。」

 

「1号の運転で、横にお前が乗っても良いし、お前がマニュアルの免許取ればいいじゃないか??」

「二人で維持するなら、何とか維持できるからね。」

 

「うーーん。考えておく。」

 

「まあ、後、5年間あるからな。ゆっくり考えておきな。」

 

「うん。そうするね。」

 

午前2時。岩見沢の24時間スーパーで、娘の当面の食材を買い求める。

それから一路、札幌の娘のマンションへ。

午前3時30分。無事に到着。

娘の荷物を置くと、オヤジはトンボ帰りで自宅に戻る。

 

 自宅に帰還へとナビに指示をすると、何故か今来た方向と反対方向に指示をする。

(後で気がついたのだが、ナビは高速道路優先の設定になっていたので、進行方向に一番近い高速道路に向かったと思う。)

 そして、右折を指示されたので、右折をしたらそこは3車線の一方通行であった。すぐに気がついたオヤジは、3車線を利用して180度ターンを行って逃げる。

 

 ナビはあてにならない為、感覚で先ほど走ってきた方向に向かい、今度はナビに隣町の江別に向かうようにする。

 途中、江別、岩見沢間でパトカーにつかまっている車があった。

ここは行きもパトカーに捕まっている車もあったし、過去に何度も、真夜中にパトカーに出くわして入るので、かなり気を付けなければいけない。

 

 午前4時30分。

 岩見沢あたりでガソリンが半分以下になっていた。峠越えでガス欠になったらシャレにならない為、ここでガソリンを補給した。

 量は30Lほど入る。やはりかなり消費していたようである。

 

少しお腹が空いてきたので、近くのコンビニでおにぎりとお茶を購入。

空を見上げたら、そろそろ空は開け始めていた。

 

 

 

 

おにぎりをほおばり、再び走り始めるオヤジ。

ひたすら何も考えないで淡々と走るオヤジ。

あたりはだんだん明るくなってきた。

 

 旭川あたりでかなり疲れてきたので、ここでマンガ喫茶で数時間仮眠してから、帰ろうと思った。

ところが、旭川に入った場所が、旭川の外れであったため、どこにもマンガ喫茶は無かった。

仕方なく隣町の当麻でトイレタイム。

もう完全に空は明けていた。

 

 ここでS2000を停めて過眠しようとしたが、やはりシートが倒れない為に、全然仮眠できなかった。

仕方が無いのと、まだ全然眠気が無いため、またバイパスに向けて走り始めた。

バイパスは事故車処理の為、通行止めとなっていた。

 

 そこでバイパスを諦めて、石北峠から帰ることにする。

 

パワーのある車は面白い。アクセルのオン、オフで簡単に鼻先が進行方向に向くために、オヤジは登坂を面白く走っていた。

 

 おかげで、眠気は全然気にならなくなっていた。

午前9時。ようやくオヤジに生活県内の北見に到着。

 ここで馴染みのスーパーで買い物を行い、更に大手ホームセンターでガレージに必要な金具を買い求める。

 

 1時間ほどの買い物を行ってから、帰宅するオヤジ。

そして午前11時。無事に帰宅。

 

 娘にラインで無事帰宅と連絡を行い、これで今回のオヤジのミッションは終了した。

 

 

 距離は約760km、時間にして29時間不眠と、ほとんど不休でのハードな仕事と走りであった。

 

 また、昨日の夜から、サンドイッチとおにぎりしか食べていない為、体重は一気に2kgも減って、過去最低の体重となっていた。

 

 いやーーーー。まさか60近くになって、こんなハードな走りを行うとは・・・・・

 

 やはりS2000は、まだまだオヤジに挑んでくる車であるなぁーーー。

 

 

 

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