心が壊れる前に。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 今日の午前0時。札幌に行っている娘2号から、「お父さんに相談したい事があるから、今度話したい。」とラインで連絡が来た。

 

 「夜、時間があるときで良いから、電話できるかい??」と、さらに連絡が来た。

 

 普段、頑張り屋の娘2号であるが、何か不吉な感じがして、今日、オヤジが会社から帰ってきて、食事を終えて落ち着いたら連絡をするように答えた。

 またどんな内容かと尋ねたら、学校の事だそうだ。

 その途端、ますます不吉な考えが、オヤジの頭をかけ巡った。

 

 オヤジは物事を考えるときは、常に最悪の事をまず考える。

 

 真っ先に考えたのは、何らかの理由があり、2年間の学校生活の延長。(これはなんとしても避けたい)

 

 そして、あれだけ希望して入った学校だが、まさかの退学。(まあ、これは絶対にありえないだろう。)

 

 一番確率が高いのは、今期の学費の入金日の事だろう。

 

 常に頭は娘の事を考えながら、まんじりともせず、帰宅したオヤジである。

真っ先に食事をすませる。

 

腹が減っては戦は出来ぬ!!

腹が減ってはまともな考えも浮かばない!!(オヤジの持論。)

 

 という事で、夕食も終わり、40分の運動時間の時に、娘からの連絡を待った。

 

娘は9時30分過ぎにようやく学校のピアノの練習も終わって帰ってきたみたいだ。

 娘からの連絡。

とっさにスマホを取った。

「もしもし。●●か??(娘2号か??)」

電話はつながっているものの、なかなか出ようとしない。

「どうした??大丈夫か??●●。」と何度か呼びかけると、電話の向こうでは泣きじゃくっていた娘がいた。

 

 しばらく落ち着かせて、話の内容を聞くと、何とオヤジの最大に恐れていた、学校を退学したいとのことであった。

 

「どうした??いじめにでもあったか??」と、心配するオヤジ。

 

 話を要約すると、今までコロナで自宅内学習と学校内学習と次から次に変わっているのと、毎回、毎回レポートの提出やピアノの練習を夜遅くまでやって、気が休まらない。

 さらに土曜日や日曜には、バイトでこの1年間行い、学校とバイトの毎日で、心が疲れ切った。という事であった。

 

 それだけ聞いたオヤジはある確信を持った。

 

 要するに娘2号は自分の夢に向かって、頑張りすぎたのだ。

 

 話が分かれば早い。

 

「分かった。まずはバイトを休むかやめるかしなさい。」

 

「しばらくバイトを止めて、のんびりしたり、どこか好きなとこに遊びに行きなさい。」

 

「そして今の状態がひと段落して、心が落ち着いても、どうしても学校が嫌なら、止めて帰ってきなさい。」と、オヤジは娘にアドバイスをした。

 

 学校を辞めると言ったら、オヤジにひどく怒られると思っていた娘2号は、あっけにとられた。

 

 それはそうだろう。娘を学校に入れるために、300万円ものお金が動き、さらに今年も100万円単位の授業料が必要で、毎月の家賃代を払っているのだ。

 

 それをあっさり捨てて、帰って来いという親なんかどこにもいないだろう。

 

「お前がいじめにあって、学校が嫌なら、あっさり帰ってこい。と、オヤジは言うが、お前は頑張りすぎて、今、心に余裕が無い状態だ。」

 

「オヤジは心を壊してまで、お前を頑張らせたくない。」

 

「だから、いったんバイトを止めて、心を落ちつかせてから学校の事を考えて見なさい。」と、静かにオヤジは話した。

 

「それでもどうしても学校に行けないのなら、安心して戻ってきなさい。お前の帰る家は、まだあるんだから。」そうオヤジは答えた。

思ってもみない言葉に、娘はようやく心が落ち着き始めた。

 

「帰る場所と食べるとこぐらいは、お前のためにまだ残してあるからな。」

そこまで話すと、ようやく娘はおずおずと言葉を開いた。

「どうしておとうさんは怒らないの??」不思議そうに娘は聞いてきた。

 

「確かにお前を学校に入れるために、昨年は300万円ぐらいかかったし、今年も200万円位かかるだろう。」

 

「正直、もうお前に用意したお金は無いから、今年の学費は貯金を下ろして使おうかと思っていたんだが、もういそれもいらなくなる。」

 

「家賃もいらなくなるから、その金で車の支払いを終えて、余ったお金でガレージが建てられる!!と、考えている鬼畜なオヤジだ。」と、オヤジは嬉しそうに話したら、

 

「お父さん。それってひどい親だよ。」と、初めて娘は笑いながら答えた。

 

「冗談はさておき、本音はお前が頑張りすぎて、心を壊してもらいたくないからだ。」

 

「そこまでして頑張るぐらいなら、住むところと食べることは心配なくなるから、いざ、就職できなくても、コンビニのバイトでもして。自分の小遣いぐらいは稼げるだろう??まずはのんびりした生活をしなさい。」と言いさらに、

 

「もし、本当に辞めるなら、なるべく早いほうが良いぞ。4月は会社も入社募集が多いけど、それを逃したら、まともなとこはほとんどないしな。と、実践的な事をアドバイスした。

 

最後に「お前がもし学校を辞めたとしても、決して自分は落ちこぼれてやめた。と考えながら帰ってくるなよ。お前は学校の紹介でモデル学生として選ばれているんだからな。」

 

「どうどうと胸を張って帰ってこい!!」と励ました。

 

 最後に「娘よ。大事なのは(大学の)最初でも途中でもなくて、(人生の)最後なんだよ。」そう話したオヤジに、娘はもう少しだけ頑張ってみる。と答えて電話を切った。

 

時間にして1時間30分ぐらいであったろうか??

可愛そうに娘はここ数日、食べ物も満足に食べられなかったようだ。

 

 

 こう対応したオヤジだが、これを読む読者の方々は、なんて娘に甘い親なんだと呆れるかもしれないであろう。

 

 普通なら叱咤激励して何としてでも卒業させないといけないのかもしれない。

 

が、誰もが娘の行う行為に反対しても、オヤジは娘の親として、唯一の娘の味方でいたいと思っているのだ。

 

 PS:この「大事なのは最初でも途中でもなくて、最後なんだよ。」というセリフ。

 実はあの有名なアニメReゼロの主人公に主人公の母親が言うセリフです。

 

 たまたま見ていて、心に残っていた言葉を、自然と娘に話していました。

 

 さてさて、娘はこれからどう生きていくのでしょうか??