走れ!!パジェロ・ミニ!娘の想いを乗せて800キロ!!-ファイナルー | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 


 朝6時30分。


「お父さん!!まずい!!寝坊した!!」と、突然、娘の大声で、オヤジは叩き起こされた。

 どうやら温泉効果で、今迄の疲れが取れたみたいで、ぐつすりと眠れたみたいである。


 今日はこの定山渓から、娘の受験の学校まで行く日だ。距離にして約20kmだが、朝の渋滞に巻き込まれたら、何時間かかるか分からない。

 


オヤジは「安心しなさい。お父さんは着替えたらすぐに行けるから、後はお前だけ、準備をしなさい。」こうして、7時にホテルをチェック・アウトすることとなった。


 学校の集合時間は、午前9時30分までだ。



 チェック・アウト時に、ホテルマンから「バイキングの朝食はよろしいですか?」と尋ねられて、かなり心揺れ動いたが、この1食の為に、集合時間に遅れたら、娘に一生恨まれてしまう。

「はい。良いです。7時から走らないと間に合わないので。」と、言いながらホテルを出るオヤジ達である。







 朝早く出たのは大成功で、心配していた渋滞は起こらずに、すいすいと学校までたどり着いた。それでも、20kmの道のりであるが、1時間ばかしかかり、8時頃となっていた。



 ここでようやくオヤジは一息を付いたら、急にお腹が減ってきた。

 そして朝から何故だか急に餃子が食べたくなったので、このお店で朝食を取る。

朝から餃子18個を注文。この量の多さに思わず、

 


 ウォオーーーーツ!!朝から全開だぜ!!!と、叫びだしたい衝撃にとらわれたが、危ない人と思われて、警察を呼ばれても困るので、ひたすら黙々と食べるオヤジである。



 娘は娘で受験生のマスト・アイテムのカツカレーを頼んだ。


 朝食を食べて早めに学校に入ろうか。という事で、学校に行けば、受付は8時30分から行っていて、受付後すぐに娘は待合室に消えた。




 今回は試験は無く、全て面接のみで、しかも時間は一人10分間だけ。


 娘の高校生活の3年間は、この10分間のためだけにあったと言っても、過言ではない。

 


 オヤジはというと保護者の待合室で、今回、持ってきた本を読んでいたが、すぐに飽きてきた。

 周りを見ると、保護者の大人たちは、皆、深刻そうな顔をして、黙々とスマホを見ていた。


 そんな時に、娘からラインが入り、面接は10時30分から10分間だけ。そして、面接が終わるまで暇だったら、どこかに出かけたら?という連絡が来た。


 そのラインを見たオヤジはそっと保護者の待合室のドァーを開けた。


(娘にしてあげれる事は、もう全てしてあげた。後は娘の実力次第だ。もうここにオヤジがとどまっている意味は無い。)

 


 そう考えたオヤジは娘に、面接が終わるころには、保護者の待合室で待っているから、面接が会わった、真っ直ぐにおいで。とラインを入れて、学校から出た。



 これから娘が生きて行くであろう街の様子を知りたかったのだ。



 まずは、近くのホームセンターに寄る。流石は札幌だ。オヤジの住んでいる近隣のホームセンターとは規模が大違いだ。



ふと見つけたAE86。今時期はFR(後輪駆動)車は全然走れない中、いまだガチな車好きがいるんだなぁーー。

この車も今では綺麗にレストァされていたら、200万円は下らないという。


 街中をぶらぶらして時間が来たので、保護者の待合室に戻ったら、少しして娘は満身の笑みで戻ってきた。

 


 「どうだった??」と聞くと「多分、受かったと思う。」と答えてきた。


 試験官に最後に「この学校に入ったら、頑張って下さい。」と言われたそうだ。


 これでやっと、オヤジの役目も終わりだ、と、少しホットするオヤジである。

 


 

帰り際、娘は「学校に入ったら、早くバイトしてアウター買わないとな。」と、ふともらした。

「お前、そのジャケットではダメなのか??」と、オヤジが聞くと、

「だってこれ、中学校の時に買ってもらったやつだから、流石に来年からは似合わないと思う。」

「えっ!!中学校時代のもの??」そういえば、ここ数年、コートを買ってあげた記憶は無かった。

「まったくお前という奴は。親に遠慮なんかするな。」と言って、早速、近くにあるGUとユニクロに入った。




 娘が希望するアウター。とパンツ、スカート。と、新生活に必要な物をそろえて行った。


 時刻は午後12時。道路標識を見ると、近くに高速の入口が来ていた。


 そこで、札幌の混雑した道を戻らないで、高速から一気に帰って、昼食は旭川で済ませる事とした。





旭川で昼を無事に終えて、後は一気に家まで帰るだけだ。




 


 旭川からの峠はやはり雪が降り続いていたが・・・・・・・・・・・・・・



峠を降りたら雪がどんどん無くなり、かなり走りやすくなっていった。


 こうして午後6時に無事に、娘の受験という大役を終えたパジェロ・ミニであった。


 (ありがとうな。パジェロ・ミニ。)最後まで走りぬいたパジェロ・ミニをねぎらうかのように、ポンポンとオヤジは軽くボディを数回たたいた。



3日間の走行距離は800kmを超えていた。


 ーエピローグー


「どうだ??合格発表の封筒届いたか??」と、オヤジは娘2号に尋ねた。

「いや。まだ、届いていない。」と、娘2号はかなりがっかりした感じで答えた。


 今日は前回の面接した学校から、合格通知が来る日であった。


 通常、オヤジ達の町では郵便物は日中にくる。


 夕方、学校から帰ってきた娘であったが、ポストには何も入っていなかった。


「多分、明日かあさってあたり来るから、そんなに気にするな。」と、娘を慰めたオヤジは、その後、娘と買い物に行った。


 そして、買い物から帰ったオヤジは、無意識的に郵便ポストを覗いてみた。


「来たぞ!!学校からだ!!」オヤジは大急ぎで、娘を読んで封筒を渡した。



 はやる心を抑えながら、封筒の封を切った娘の目には合格通知書と大きく書かれた文字が飛び込んできた。



走れ!!パジェロ・ミニ!!

娘の想いを乗せて800キロ!! 


    --完ー