漢(おとこ)達よ!!再び!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 今朝の8時、友人kは青い車でオヤジの家に現われた。



  今日の車は軽のココアです。

「で、今日はどこに行く??」と、オヤジが聞くと、

「そうだな。今日は釧路にでもいって見るか??」

 

「そうか。釧路か??釧路のどこに行く??」

 

「うん。タイプRの夏タイヤの中古が無いか調べてこよう。」

 

「分かった。中古タイヤ屋さんだな。」という事で、今日の休みは釧路まで片道2時間弱のドライブとなった。


 思えば彼と一緒にドライブする事は、あのパジェロの事故以来、実に2ヶ月ぶりの再会である。お互いに休みがなかなかかみ合わず、ようやく今日の再開となったのだ。


 途中、「そういえばオヤジ?お前、前にステッカー作成がどうのこうの?と言っていたよな??」と、友人Kが聞いていた。

「クラブミッドナイトのか??」

 

「そう。お前の走り屋集団のクラブミッドナイトのステッカー作成の話し。」

 

「ああっ。あれか。簡単なロゴだし、あまり大きなステッカーでないから、大体、1枚1,200円ぐらいで作れるらしい。2枚作ったら、1枚1,000円ぐらいで安くなる。」

 

「そうか、それなら2枚作って1枚俺の車にくれっ。」

 

「えっ??お前のタイプRにクラブミッドナイトのステッカーを貼るの??」

 

「悪いか??」

 

「いや。悪くは無いが、ミッドナイトステッカーを貼るという事は、お前はナンバー5を名乗らないといけないぞ。」

 

「ナンバー5??」友人Kは不思議そうにオヤジに尋ねてきた。

「そう、クラブミッドナイトは全国で5人いる、ガチの走り屋集団だ。」

 

「じゃあ、なんで6人目の俺はナンバー5なんだ??」

 オヤジは友人Kに30代の頃にナンバ1のSさんと白いFCでポルシェを追いかけまわした、真夜中の高速道路でのバトルの話しをし、クラブミッドナイトの立ち上げた生い立ちを話した。


 そして、リーダーであり、0ナンバーのオヤジ。ファースト・ナンバーのGTR-R33のSさん。セカンド・ナンバーの所長さん。サード・ナンバーの隊長さん。フォー・ナンバー4のミスターXさんという、全国で5人ものクラブ員がいる事を話した。


「だから、ミッドナイトのステッカーを貼るという事は、それなりの責任があるという事なんだ。」

(もっとも、オヤジが言う責任とは、自分のミスで全国の読者に笑いを提供するという、若干勘違いをしているところがあるのだが・・・・)

「そうか。別にファイブ・ナンバーを名乗っても良いぜ!」という事を聞いた途端、オヤジの目がキラリと光った!!

「あっ。ちなみに、このクラブは、いったん入ったなら2度と脱退は出来ずに、オヤジの命令が絶対服従のクラブなんだ。」

 

「あっ!!てめぇ、そんな事ひとつも言わなかったぞ!!汚いぞ!!だましたな!!」

 

「ふふふふ!!会員を集める為なら、オヤジは悪魔にも魂を売るさ!!」こうして、また一人新しい犠牲者が誕生してしまった。(これで、オヤジの世界征服の野望がまたひとっ!!)



 

只今、午前9時。出発から1時間。道の駅でトイレタイムとコーヒータイム。


 その後、たったステッカー1枚でだまされてクラブ員にされたかわいそうな友人Kはガックリと肩を落として、釧路まで走って行った。

 




ただいま、午前10時30分。約2時間30分で釧路市に到達。


その後、友人KのタイプRの夏タイヤを探しに色々と走りまわったオヤジ達だが、季節は真冬。

置いてあるタイヤは全てスタッドレスの為に、彼の夏タイヤ作戦はわずか30分で失敗と化した。


「春先に出直しだな。」友人Kは残念そうにつぶやいた。そして、偶然入ったリサイクルショップであるモノを彼は見つけた。


それは彼の趣味の一つである釣り用のリールであった。

しばらく彼は悩んでいた。そしてそのまま、その場を後にした。

「どうした??」

 

「うん。30年ぐらい前に欲しかったリールが置いてあった。」

 

「買わなかったんだ??」

 

「当時は高くて手が出なかったんだけども、すごく安いんだよな。」

 

「いくら??」

 

「約1万2千円。」

 

「で、思いとどまったんだ。」

 

「ああっ。今の俺には1万2千円もあれば、食費がかなり違う。」

 

「もう、すっかり主夫だな。」オヤジは彼の言いたいことが充分に分かっていた。


その後、何件か予定の店を見て回ったが、友人Kは再び車の行先をさっきのリサイクルショップに向けた。


2度目の訪問。しかし、また彼はここで、買うのを思いとどまった。

「うーーん??どうしょうか??」そこで、オヤジはある提案を行った。


「分かった。もう昼だからそれなら一回、昼飯を食べに行って、そこで本当に欲しいかどうか考えてみろ。」

 

「そこで1時間考えて、やはりどうしても欲しいなら、その商品はお前に縁がある商品だ。」

 

「もし、その間売れたらどうする??」

 

「大丈夫さ。本当にお前の所に来たい商品なら、絶対に売れることは無いよ。」

 

「1時間頭を冷やして本当に欲しいかどうか考えて、どうしても欲しかったら、もう一度戻って来よう。」

 

「そうだな。それが良いな。」友人Kはオヤジの提案に納得して、昼飯を食べに行った。





 

 昼食はオヤジ家の愛用しているシャブシャブ食べ放題の店である。


普段、あまり野菜を食べれないオヤジにとっては肉の食べ放題よりも、野菜も色々と食べれるのが嬉しい。


 こうして、約1時間、お腹が一杯になるまで、昼飯を堪能するオヤジと友人K。

「さあ、どうだ??K。やはりあのリールが欲しいか??」

「ああ。欲しいんだけども、まだすぐには使わないんだが・・・」

 

「それなら、今すぐに使う、使わないで、自分の手元に置いて、いじるだけでも価値があるんでないか??」

 

「3回も考えてどうしても欲しいなら、それはお前の手元に来るべき商品なんだろう??」

 

「そうだな。やはりオヤジ。お前の言うとおりだ。やはりあのリールを買うよ。」


 こうして、約30分後、3回目もそのリサイクルショツプに行った友人Kは、ピカピカの綺麗なリールを手にして満足そうであった。

(良かったなK。気に行った商品が見つかって。)


「うーーん??しかし、不思議だな??このお店、20年ぐらい前に来ていたんだけども、あまり商品が無くて、あれから20年間1回も来ていなかったんだけども、なんでこの商品が、この店に置いてあったのかな??」

 

「それはやはり、今日、お前がこの店に来て、このリールを手に入れることが決まっていたからでないか??」と、言いつつ、オヤジは物を買う時も縁があることを力説した。


 そして、その帰り道、国道を走っていた時であった。


「うわっ!!バカヤロウ!!」と、オヤジは悲鳴を上げた。


 見ると交差点で右折車がこちらが直進しているにもかかわらず、いきなり右折し始めたのだ!!


「チッ!!」友人Kは舌うちをして軽くブレーキを踏みハンドルを左側に切り、走行車線にいた右折車を回避する行動をとった。

 乾いていた路面は確実にココアのタイヤをとらえ、左側の路肩に避けて、そのまま、何とも無かったように走りきる友人K。


 直進車のスピードの判断を間違えた右折車の運転手のおやじは、照れ笑いをしていた。


「お前、ずいぶん大人だな。俺なら、さっきの右折車を追いかけまわして、ドライバーを引きずり下ろす。」


 何ともなかった友人Kの車に安心したオヤジは大口をたたいた。

その言葉はさっき悲鳴を上げたオヤジが一応、ミッドナイトのリーダーとしての威厳を保とうとした事は誰も目にも明らかであった。



 

 帰りの車屋で新しく入荷したS660を見に行く。

今迄は友人Kが積極的に車を見に行っていたのだが、彼がタイプR。オヤジがS2000を買った途端に、彼は中古車に興味を失っていた。

「オヤジ、お前S2000を手に入れたから、もうS660を見ても仕方がないだろう??」呆れて友人Kはオヤジに言った。

「そうか??別の買わなくても、単に車を見るだけども、俺は面白いぞ!!」


 残念ながらこのS660は値段不明。更にオートマだったので、店員が来る前にさっさと引き上げたオヤジ達であった。


 2時頃に釧路を出発したオヤジ達は約2時間30分後、路面が乾いている事も手伝って無事に自分の家にたどり着いた。


「春になったらSがいよいよ活動だな。」別れ際、友人Kはオヤジのガレージに静かに眠っているS2000を見ながら、オヤジに呟いた。

「ああっ。春になったらな。」それが二人の漢(おとこ)達の別れとなった言葉であった。