休日2日目。昨日の吹雪の影響は、今日は朝からアイスバーンと化していた。
今日は友人Kも休みの為、朝から二人でどこかにいこうかと計画をしていた。そして、彼からの再三のS2000の出動要請が来たが、無情にもオヤジは彼の強い要請を無視して、今日はパジェロ・ミニを使う事と決めていた。
(とーぜん、S2000の後輪のスタッドレスはもうほとんとグリップを失っていたからなのだ。)
今日の朝の気温はかなり厳しいぐらいの寒さであった。そこで、彼と落ち合う前に、娘2号を網走の高校に4WDのタントで送って行った。その時、高校前の急な登り坂でアイスバーンで1台の立ち往生している車が、周りの車の交通障害となっていた。
しかも更に悪い事に、その前に急な登り坂の途中に信号があるので、そこで停まった車によって、何十台もの車の渋滞が更に広がって行った。
まえの車の車の間隔が空いたので、オヤジも前に出ようとしたら・・・・今度はオヤジのタントが動かずにその場で滑り出した。
雪道に強い4WDがだ。オヤジは心臓をバクバクいわせながら、タントを少しバックさせて、更に前進。しかし、タントのタイヤはまたもや空転を起こした。かなりホイルスピンをさせ、アクセルベタ踏みを行うと、タントは奇跡的に、少しずつ少しずつ前進をし始めたのだ。
(通常はこのような場合は急激なアクセルは厳禁なのだが、本当に今回は奇跡的に坂道を登ったのだ。)
そして、その帰り道、オヤジが登れなくなった場所で、今度は別な車が動かなくなり、道路は完全に渋滞どころか、何十台もの車がその道を塞いでいた。
そんなこともあり、やっと帰宅してオヤジは友人Kの家に、パジェロ・ミニで急いだ。
路面は一部はアイスバーンではあるが、比較的乾きだしていたので、パジェロ・ミニは今迄どうりFR(後輪駆動)としていた。
友人Kと落ち合ったオヤジは今日は90km先の中標津に二人で温泉に行く事と決めた。
時間は8時40分。乾いた路面でオヤジ達は順調に中標津に向かって走る。
「うわっ。こんなに路面が乾いていたら、S2000で来ても問題なかったな。」と、友人Kは残念そうにオヤジに言った。
「まあ、来年になったら、また充分に走れるから、それまでの我慢だ。」と、オヤジが言った途端であった。
「!」
いきなりパジェロ・ミニは横滑りをし始め、反対車線に飛び出した。
慌ててカウンターを切るオヤジ!!
すると今度はパジェロ・ミニは反対側に尻を振りはじめて、今度は運転席の後部からオヤジ達の車線の縁石に向かって突入!!
強い衝撃がオヤジ達を襲い、一瞬、パジェロは宙に舞った!!
ほんの数秒の事であった。パジェロ・ミニは縁石に乗り上げたまま停まった。
「大丈夫か??K?」オヤジはすかさず、友人Kにケガが無い事を確かめた。
「ああっ。大丈夫だけど、お前は何ともないか??」
「ああっ。全然、何ともない。」
とりあえず、後続車を先に行かせ、オヤジはゆっくりパジェロ・ミニをバックさせて、元の道に戻った。
「とりあえず、かなりの衝撃だから、どこかで破損の状態を調べよう。」ということで、近くのコンビニの駐車場に停め、パジェロ・ミニの損害を調べ始めた。
「おおっ!!何という事だ!!あれだけの強い衝撃でも、全然、何ともないぞ!!」
オヤジ達はあれだけの事故で全然何ともないパジェロ・ミニを見て驚いた。しかし、ヨーーク見ると、後輪のホイルが潰れていた。
「仕方がない、あれだけの事故だ。後輪のホイル1本なら安いものだ。」
とりあえず、空気の漏れも無いため、目的地は目の前なので、このまま温泉に行ってから帰る事とした。そこで、コンビニでトイレタイム。
コンビニから出てきたオヤジはパジェロ・ミニが微妙に傾いている気がした。
「おい。K?何だか妙に右下がりに見えないか??」と、オヤジは友人Kに聞いた。
Kはパジェロ・ミニの後ろを見た途端、悲鳴をあげた。
「ダメだ!!オヤジ!!後ろを見て見ろ!!」
オヤジがパジェロ・ミニの後ろを見た途端!!あわれ、パジェロ・ミニは右側の後輪に強い衝撃が走ったため、全体的に車軸が左側に寄ってしまったのだ。
左側の後輪。フェンダーから完全に出ています。
右側の後輪。明らかに後輪がフェンダーの中に引っ込んでいます。
オヤジ達は、一応、自走が出来るので、急きょこのまますぐに帰宅。そしてお世話になっているS車輌の元に急ぐこととした。
事故現場は90km先の中標津。このままいつ何時走行不能になるか分からない。しかも、悪い事にガソリンの残量は一目盛りとなっていた。
帰りは4WDにして、慎重に、慎重に運転していくオヤジ。不思議なことに、事故を起こしたオヤジよりも、友人Kのほうが精神的にまいっていた。
「なんでそんなに楽天的なんだ??オヤジ?」
「不幸中の幸いだろ??これがS2000で無かったし、お互いケガは無かった。車も一応自走が出来ている。」
「車はお金はかかるが、直せば走れる。しかし、ケガをしなった事は何よりに幸いだ。」
それから二人は自宅までの90kmは非常に長く感じた。
いつ何時何があっても良いように、異音を聞きもらさずに走って行った。
まずは20km先の弟子屈に向かう。そこでオヤジは持ち金全財産をはたいて、燃料を入れた。
これで、途中でガス欠の心配は無くなる。次に向かう場所は30km先の馴染みのB峠。
「パジェロ・ミニ!!もう少し頑張ってくれよ!!必ず直す!!だからあと30km先まで頑張ってくれ!!」
ゆっくりだが確実にパジェロ・ミニは第2目的地の峠に向かい出す。
次の目的地はオヤジ達の住んでいる隣町だ。ここまでくれば、最悪、動かなくなっても、バスか汽車で自分達は家に帰ることが出来る。
こうして、一か所、一か所と確実に目的地を決めながら、ようやく馴染みのS車輌に到着した時は、2時過ぎであった。
およそ、3時間近くの長い道乗りであった。
「すごいぞ!!パジェロ・ミニ!!お前は本当に傷ついた体で、ここまで良くたどり着いた!!」
「必ず直してやるからな。少しだけ痛いが辛抱してくれ。」
オヤジは傷つき息も絶え絶えながら、S車輌までたどり着いたパジェロ・ミニの走りに感動をしていた。
微妙に右下がりになった、パジェロ・ミニ。
本来はここは真っ直ぐな所なのだが、完全に曲がってしまった。
修理の担当者の話によると、右側からぶつかったので、簡単にここの部分が曲がったらしい。もし、逆のほうが曲がったなら、かなり被害が大きかったらしい。不幸中の幸いらしい。
今回は多分、オヤジの慢心した心が起こした事故だったのだろう。
今迄、十年近く事故を起こしたことも無く、また、50km/hぐらいなら、多少、滑ってもFRならカウンターを当てれると自負していたのだが、アイス・バーンで一旦、滑ったならどんなことがあっても立ち直せない事が分かった。
また、S2000を手に入れた事で、心の中のどこかで、このパジェロ・ミニの運転を乱暴にしていたのだろう。
今回の件で、いかにこのパジェロ・ミニがオヤジの生活の中で大切な車だったのかが、身に染みてわかった。
所詮、S2000は遊び車なのだ。これからの冬は、パジェロ・ミニのほうがはるかに重要な働きをしてくれるのだ。
パジェロ・ミニ!!
必ずお前を直してやる!!
こんな愚かなオヤジだけど、もう一度、オヤジと共に走ってくれ!!
頼む!!
そう、オヤジはS車輌に修理に出したパジェロ・ミニの後姿を眺め、心に誓うのであった!!