RUN ー走るー2 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 第2部  ー250マイル・ラーメン。ー


 ※今回はデジカメの不調により、画像が撮れなかったので、文章のみのブログです。

長い話が嫌いな人はスルーしてください。


2017年11月未明


「で、この時代遅れの恐竜を走らせるつもりなんだ。オヤジは。」友人Kは鈍く銀色に光るS2000を指差してオヤジに言った。


「ああっ。もはや時代遅れになったこいつを走らせるつもりだ。」と、オヤジの返答。


「面白いね。そんな話なら俺も乗った。」と、言いながら、彼はナビ・シートに乗り込んだ。


「本当に良いのか?こいつの横に乗った限りは、一旦何かあったら保証は出来ないぞ。」


「時代御遅れの恐竜に、ノスタルジーを覚える。それはお前だけではないさ。あの時代、スポーッカーが輝いていた時代に生きてきた俺達全員の心に響く話しさ。」


「そうか。それでは、どのルートを使う?」


「もちろん、先日開通したばかりのバイパス。北見から走って、訓子府⇒小利別を抜けて、陸別、足寄、音更に抜けて、帰ってくるのはどうだ??」


「それって、本当に今日1日、朝から走るだけになるぞ?」


「ダメか??」


「ふっ。ダメではないさ。まるで600マイルブレンドだな。」と、オヤジは嬉しそうに言った。


「600マイルブレンドっていったい何だ??」


「昔、横浜から神戸にある喫茶店まで、たった1杯のコーヒーを飲むためだけに、日帰りで走りきった横浜ケンタロスという伝説のバイク・クラブの話しさ。」


「600マイルってどのぐらいの距離だっけ?」


「約、往復1,000キロ。」


「遠いな。やはり無意味な走りだから、止めるか??」と、心配そうに友人Kはオヤジに向かって聞いた。


「無意味なもんか。俺を誰だと思っている?」

 

「昔、一億円のトイレに行くためだけに、徹夜で支笏湖まで走った事がる俺だぞ!!」


「あっ。もしかして、あの走り屋の中ではくだらない伝説の、500マイル(800キロ)う●こオヤジって、お前の事だったのか??」

 


「クソッ!!500マイルう●こオヤジって言うな!!。500マイルオヤジと言え!!」


そう言いながら、オヤジは午前9時にS2000を帯広に向けて走らせた。


いつものように警察を警戒しながら、まずは第一目的地の北見のバイパスの始まりに到達。


「いくぞ!!K。これからの領域は、何かあったらおれも立て直しが効かないから、しっかりシートベルトを締めとけよ。」

 


「ああっ。」少しばかり友人Kは緊張の色を隠せない。


 S2000は冬の始まりの時期である今日の晴れた日差しの中、快適に走り始める。


午前10時10分。


別の道の駅でトイレタイム。


「うわっ速いな。いままでここまで来るのに、頑張っても1時間30分はかかったぞ!!。今日は大した飛ばさなかったけども、1時間10分だ。」

 


「ああっ。そうなんだ。路面も状態が良いから、これから冬場に帯広に行く網走のやつらは、多分、ほとんどこの道を使うと思うぜ。」と、友人Kはつぶやく。


「まずはコーヒーでも飲みながら行こうぜ。俺達もクール・ダウンだ。これからはまた普通の下道だからな。」


 トイレタイムを終えたオヤジ達は、コーヒーを飲みながらゆっくりと足寄に向けて走り始めた。


「なあ、VTECエンジンってこんなに官能的な音がするのか??」友人Kは静かに走りつづけるS2000のエンジン音を聞きながらオヤジに聞いてきた。


「ああっ。お前のRのほうが、i-VTEC搭載エンジンだから、もっとすごいぞ。」

 


「時代はハイブリットだとか、電気自動車だとか言うけど、あれは俺達から言わせればクソだな。この時代遅れの化石燃料で走る、車の走りを覚えた人間にとっては、運転が全然つまらない車だ。」

 


「ああっ。俺達は遅れた時代に生きてきた人種だからな。」

 

「車=移動手段でなくて、俺達にとっては唯一の娯楽だったからな。」

 

「速い車を買うためだけに働いて生きてきた人種だからな。」


「なあ、オヤジ今の若いやつらはどうなんだろうな?」

 

「スマホゲームやゲーセンだけにお金をかけて、俺達のように全然車には興味を示さない。」友人Kは自分の息子が、自分とは違って車に全然興味を示さない事に嘆いていた。


「ああっ。うちの娘も同じさ。こないだこいつで学校まで送って行ってやる。と言ったら、こんな恥ずかしい車乗らない。と言いやがったよ。」

「だけど、お金にも、体にもきついこの車で走っている今が俺は一番楽しい!!」

 

「スマホゲームやゲーセンに興味を示している若いやつらよりも、俺の方が全然楽しい生き方をしていると俺は思っている!!」


 オヤジはうれしそうにS2000のハンドルを握りながら話した。


「さあ、足寄から最終目的地の音更に向かう高速だ!!気を抜くなよ!!オヤジ。」


「ああっ!!」


「ここは今迄一度もパトカーは現れなかった!!飛ばせよオヤジ!!」

と言った途端、対向車線で捕まった車が現われた。


「ちょっと!!いきなりパトカーって何なんだよ。」

 


「悪い!!悪い!!俺も初めて見たわ。」


 こうして、9時に出発したオヤジ達は12時ごろに目的地の音更に到着。

高速を降りたオヤジ達は、音更市街のラーメン屋で昼飯を食べる。


 オヤジにとってはほとんど半年ぶりのラーメン。いやーー。旨かったのなんの。

 


「オヤジ?ラーメンなんか食べて大丈夫か??」と、心配して友人Kはオヤジに尋ねる。

「ああっ。ラーメン1杯ぐらいなら、今までの食生活を続ければ大丈夫さ。」

 


「だけど、ほとんど半年ぶりのラーメンは本当に旨いな。お前も俺みたいに食べ物や飲み物の制限を受けないように気を付けろや。食べる楽しみが無くなったら、もう俺にはこいつしか楽しみは無い。」


そう、オヤジはS2000を見ながら友人Kに話した。


「ああっ。気を付けるよ。」


 昼を食べ終えたオヤジ達はすぐにS2000に乗り込み、今度は子供達へのお土産に帯広郊外の柳月というお菓子屋さんに寄る。


午後1時。


今度は高速に乗らないで、ゆっくりと下道を通って家に向かう。


「今は午前1時。丁度200kmだ。夕方までには帰れる。」

 


「ほんと、たった1杯のラーメンを食べる為だけに200kmを走ってきた俺達もかなりバカだな。」

 


「今ならお前も600マイルブレンドの価値が分かるだろう。」

 


「ああっ。いまは車だけどこれがバイクで往復1,000キロでの日帰り。本当に意味が無いけど、走ったものだけが判る大切な事。俺も何となく600マイル。ブレンドの価値が分かったような気がするよ。」


「さしずめ今日は往復400kmだから250マイル・ラーメンかな?」

 


「まったく、お前は500マイルう●こオヤジとか、250マイル・ラーメンとか、まるで平成のケンタロスだな。」


「だからなぁーー。500マイルう●こオヤジと言わないの。500マイルオヤジとでも呼んでくれ!!」

 

「それにバイクを降りた今の俺は平成のケンタロスなんかじゃないよ。クラブ・ミッドナイトの総長とでも呼んでくれ。」


 そしてオヤジ達を乗せたS2000はいよいよ旅の終わりの最後のバイパス、小利別から訓子府経由の北見の入口に入った。


「俺はここでビッツだけど30分で走りきった。お前のS2000はどれだけ速いかな??」と、横からオヤジをあおる友人K。


「ふふっ。オヤジはそんなバカなことはやらないよ。」と、周りの車に合わせて走るオヤジ。


「あっ。もうこのS2000でゆっくり走りやがる!!」と、悔しそうなK。


 オヤジは知っていた。


追い越し車線の無い区間をいくら速く走ってもタイムは縮まらない。


勝負は追い越し車線で決まることを。

 


 いよいよ最後の追い越し車線に入った。

S2000の周りの空気が震え始めた。

次々とオーバーテイクし始めるS2000。

そして最終地点に到着。

 


「まったくお前は。このS2000に乗って、ビッツよりも遅いとは・・・・いつたいどのぐらい遅れたんだ。」と、時計を見る友人K。そして彼の顔は驚愕の顔へと変って行った。

「まさか。あれだけのんびり走っていても30分を切っている。」


「まあ、何だな。それがS2000という事だよ。」そう言いながら、オヤジはまたのんびりとした走りを続けた。


ー250マイルラーメンー  完!!


PS この話はすべて作者の想像です。

だからS2000で暴走行為などは一切行ってはおりません。と、言う事にしておいてください。チャンチャン♪