昨日に続いて今日も休みのオヤジである。
朝起きたら、やはり道路は濡れていたが、幸いなことに雨はやんでいた。
(今日しかない。今日を逃したらもう今年は多分バイクは乗れないだろう。)
そう、直感したオヤジは朝食もそこそこに外に飛び出した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
家の周りは今までさぼっていた為に、雑草が伸び放題となっていた。
今日は雑草を処分するごみ処理車がやってくる日だ。
ひと夏、何もしないままほおっておいた庭。無残にも雑草が生えっぱなしになっている。
当然、持ち家の為にそのままにしても良いのだが、やはり近所付き合いの手前、家の周りを雑草だらけにしてはいけないのだ。
そこでオヤジは家にいる娘1号を呼び出し、一緒に家の周りの雑草を取り出した。
約、2時間後の10時頃に、家の周りは綺麗になった。
「よし、これで良い。これなら安心してバイクに乗れる。」と、バイクの用意をしようとした時であった。向かいのおばあさんが、オヤジに話しかけてきた。
おばあさんは自分に庭に案内して、一脚のイスを出してきた。
「実はこのイス。すごく気に入っているんですが、もう半分壊れかけているんですか、直らないですかねぇーーー?」
そして見せてもらったイスは・・・・・・・・・
強く動かしたら完全に足が1本取れてしまった。
半分壊れているどころか、脚が1個取れて完全に壊れているイスであった。
「うーーん。直るかどうか分からないのですが、一応、手直し、してみます。」
この段階で、オヤジは今日の休みは終わった。と、思った。
最近の休みは実質、自由に動ける時間は午前中だけで、午後からは今迄の睡眠不足解消の為に昼寝。
昼寝が終わったら、娘1号と共に網走に行き、娘2号の学校が終わるのをゲーセンで待ち、次のオヤジの休みまで、二人の食材を買いに行くのが日課となっている。
だから、これからイスを直したら、今日の休みはもう確実に終わりになってしまうのだ。
(まあ、仕方がない。バイクはいつだって乗れる。だけど、頼まれたらすぐにやらないといけない。)と、思いながら、オヤジは壊れたイスを自分のガレージに持ちこんだ。
外は薄寒い天気からいつの間にかピ-カンとなっていた。
今日の天気はまるで真夏のような天気である。
ガレージの外でイスを直していたら,暑くて汗がダラダラ流れだしたので、ガレージの中の日陰に移動した。
壊れた足を別な木で作り直し、約1時間30分後、11時半ごろにようやくイスの手直しは終わった。
急いで昼の食事を終えたオヤジは時計を見た。時間は丁度12時になっていた。
その目でオヤジはガレージの中のカタナを見た。
ガレージの中のカタナは静かにそこにたたずんでいた。
「お前、夏からずっと走るのをそこで待っていたんだよな。」
「1時間だ。1時間だけ待ってくれ。レディ。」
オヤジは急いでソファに横になった。娘2号を向けに行く時間はあと3時間後である。
ソファに横になったオヤジは直ぐに深い眠りに落ちた。
1時間後、頭がすっきりする。
「待たせたな。レディ!!」オヤジは今日のあまりの暑さの為に、バトルスーツとパンツはやめた。
いつもの普通のズボンとモンスターエナジーのジャケットを着こむ。もちろん、革のグローブとブーツを履くのはかかさない。
「頼むぞ!!レディ!!一発でかかれ!!」
昨年はなかなか始動しないで苦労したのだが、何故か今日はカタナが一発でかかることを確信していた。
カチャッ!!
キュルキュルキュル!!
ブゥオーーン!!
オヤジの予想通りにカタナは一発でかかった。残り2時間。まずはなにも考えないで走り始めるオヤジ。そして国道に出た時であった。
いつのまにかオヤジの後ろに大型のトラックがへばりついていた。
それは長距離トラックであった。
北海道は長距離トラックは一般道でも80km/hから100km/hで走る。
「そうか、戦闘開始だな。」
オヤジはカタナを軽く左に振るとアクセルを吹かした。一瞬で大型トラックがオヤジの視界から消え去った。
そうして行先をいつものB峠にハンドルを向ける。
B峠ふもとになると急にヒヤリとなり空気が変る。
前を向くと他県ナンバーの車がスピードを出していた。後ろに着いたオヤジは反対車線を見る。対向車は無し。
「ロックオン!!迎撃1台目!!」
シフトは5速そのままでアクセルを無造作に捻るオヤジ。
レディは一瞬で加速を行い前走車を追い越した。そしてそのまま加速続けるレディ。
カタナ1100の排気量の最大の利点は急な坂道でもトップ5速からのアクセル一発で加速する、このふっといトルクにあるのだ。
前走車を追い越した後、ヘルメットのシールドが急に悲鳴のように聞え出してきた。
「うん?いつものシルールドの風切り音と違う!!」
あわててオヤジはメーターを見ると・・・・・メーターは尋常じゃない位置をさしていた。
慌てて前を見るオヤジ。
すでに次の前走車がオヤジの目の前に迫ってきた。
前は視界が良くないコーナーが迫っている。
今、ブレーキやシフトダウンを起こなうと、即、リァがスピンを起こし転倒の危険となる。
「頼むぜ!!レディ!!」
オヤジは細身なカタナのタンクをしっかりニーグリップを行い、タンクに伏せていた上半身を思い切り起こした。
そして軽くブレーキングを行い、シフトを次から次にたたき付けた。
ウォン!!ウォン!!
軽く雄叫びを上げたレディは、次第にスピードを落としていく。
そして視界が開けた途端、アクセルオン!!一瞬にして追い越していく。
「俺ってやっぱりタコだな。スポーツカーなんか目じゃないお前を手元に置いといて、わざわざ、スポーツカーを探しまくっていたなんて。」
こうして、片道40分ぐらいのいつものB峠に到着!!
時刻は午後2時30分。そろそろ帰宅しないと、娘2号の迎えに行く時間が迫っていた。
「そろそろ帰ろうか。レディ。」
こうしてオヤジはたった2時間だけであったが、久しぶりにレディイレブンと至福の時間を過ごしたのであった。
今日もありがとうな。レディ!!お前のお蔭で無事に帰ってこれたよ。
PS 娘2号を迎えに行く途中。
前でパトカーの赤色灯が点滅!しかも変な位置に車が止まっている。
事故だ!!と直感シタオヤジはすかさずデジカメを用意!!
そこには脇道に移動するガードレールに直撃した車が停まっていた。