至福の2時間!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 昨日に続いて今日も休みのオヤジである。


 朝起きたら、やはり道路は濡れていたが、幸いなことに雨はやんでいた。

(今日しかない。今日を逃したらもう今年は多分バイクは乗れないだろう。)

そう、直感したオヤジは朝食もそこそこに外に飛び出した。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 家の周りは今までさぼっていた為に、雑草が伸び放題となっていた。


今日は雑草を処分するごみ処理車がやってくる日だ。




 ひと夏、何もしないままほおっておいた庭。無残にも雑草が生えっぱなしになっている。

 

 当然、持ち家の為にそのままにしても良いのだが、やはり近所付き合いの手前、家の周りを雑草だらけにしてはいけないのだ。


 そこでオヤジは家にいる娘1号を呼び出し、一緒に家の周りの雑草を取り出した。








 約、2時間後の10時頃に、家の周りは綺麗になった。


「よし、これで良い。これなら安心してバイクに乗れる。」と、バイクの用意をしようとした時であった。向かいのおばあさんが、オヤジに話しかけてきた。


おばあさんは自分に庭に案内して、一脚のイスを出してきた。


「実はこのイス。すごく気に入っているんですが、もう半分壊れかけているんですか、直らないですかねぇーーー?」


そして見せてもらったイスは・・・・・・・・・







 強く動かしたら完全に足が1本取れてしまった。



 半分壊れているどころか、脚が1個取れて完全に壊れているイスであった。


「うーーん。直るかどうか分からないのですが、一応、手直し、してみます。」


この段階で、オヤジは今日の休みは終わった。と、思った。


 最近の休みは実質、自由に動ける時間は午前中だけで、午後からは今迄の睡眠不足解消の為に昼寝。


 昼寝が終わったら、娘1号と共に網走に行き、娘2号の学校が終わるのをゲーセンで待ち、次のオヤジの休みまで、二人の食材を買いに行くのが日課となっている。


 だから、これからイスを直したら、今日の休みはもう確実に終わりになってしまうのだ。


(まあ、仕方がない。バイクはいつだって乗れる。だけど、頼まれたらすぐにやらないといけない。)と、思いながら、オヤジは壊れたイスを自分のガレージに持ちこんだ。


 外は薄寒い天気からいつの間にかピ-カンとなっていた。


 今日の天気はまるで真夏のような天気である。


 ガレージの外でイスを直していたら,暑くて汗がダラダラ流れだしたので、ガレージの中の日陰に移動した。


 壊れた足を別な木で作り直し、約1時間30分後、11時半ごろにようやくイスの手直しは終わった。





急いで昼の食事を終えたオヤジは時計を見た。時間は丁度12時になっていた。


その目でオヤジはガレージの中のカタナを見た。


 ガレージの中のカタナは静かにそこにたたずんでいた。


「お前、夏からずっと走るのをそこで待っていたんだよな。」


「1時間だ。1時間だけ待ってくれ。レディ。」


 オヤジは急いでソファに横になった。娘2号を向けに行く時間はあと3時間後である。

 ソファに横になったオヤジは直ぐに深い眠りに落ちた。


 1時間後、頭がすっきりする。


「待たせたな。レディ!!」オヤジは今日のあまりの暑さの為に、バトルスーツとパンツはやめた。

 いつもの普通のズボンとモンスターエナジーのジャケットを着こむ。もちろん、革のグローブとブーツを履くのはかかさない。


「頼むぞ!!レディ!!一発でかかれ!!」


 昨年はなかなか始動しないで苦労したのだが、何故か今日はカタナが一発でかかることを確信していた。


カチャッ!!


キュルキュルキュル!!


ブゥオーーン!!


 オヤジの予想通りにカタナは一発でかかった。残り2時間。まずはなにも考えないで走り始めるオヤジ。そして国道に出た時であった。


 いつのまにかオヤジの後ろに大型のトラックがへばりついていた。


 それは長距離トラックであった。

 北海道は長距離トラックは一般道でも80km/hから100km/hで走る。


「そうか、戦闘開始だな。」


オヤジはカタナを軽く左に振るとアクセルを吹かした。一瞬で大型トラックがオヤジの視界から消え去った。


 そうして行先をいつものB峠にハンドルを向ける。


B峠ふもとになると急にヒヤリとなり空気が変る。


 前を向くと他県ナンバーの車がスピードを出していた。後ろに着いたオヤジは反対車線を見る。対向車は無し。


「ロックオン!!迎撃1台目!!」


シフトは5速そのままでアクセルを無造作に捻るオヤジ。

 

レディは一瞬で加速を行い前走車を追い越した。そしてそのまま加速続けるレディ。


 カタナ1100の排気量の最大の利点は急な坂道でもトップ5速からのアクセル一発で加速する、このふっといトルクにあるのだ。


 前走車を追い越した後、ヘルメットのシールドが急に悲鳴のように聞え出してきた。


「うん?いつものシルールドの風切り音と違う!!」


 あわててオヤジはメーターを見ると・・・・・メーターは尋常じゃない位置をさしていた。


 慌てて前を見るオヤジ。


 すでに次の前走車がオヤジの目の前に迫ってきた。

 前は視界が良くないコーナーが迫っている。


 今、ブレーキやシフトダウンを起こなうと、即、リァがスピンを起こし転倒の危険となる。


「頼むぜ!!レディ!!」


 オヤジは細身なカタナのタンクをしっかりニーグリップを行い、タンクに伏せていた上半身を思い切り起こした。


 そして軽くブレーキングを行い、シフトを次から次にたたき付けた。


ウォン!!ウォン!!


 軽く雄叫びを上げたレディは、次第にスピードを落としていく。


そして視界が開けた途端、アクセルオン!!一瞬にして追い越していく。


「俺ってやっぱりタコだな。スポーツカーなんか目じゃないお前を手元に置いといて、わざわざ、スポーツカーを探しまくっていたなんて。」



こうして、片道40分ぐらいのいつものB峠に到着!!
















 時刻は午後2時30分。そろそろ帰宅しないと、娘2号の迎えに行く時間が迫っていた。


「そろそろ帰ろうか。レディ。」



 こうしてオヤジはたった2時間だけであったが、久しぶりにレディイレブンと至福の時間を過ごしたのであった。







 今日もありがとうな。レディ!!お前のお蔭で無事に帰ってこれたよ。


PS 娘2号を迎えに行く途中。



前でパトカーの赤色灯が点滅!しかも変な位置に車が止まっている。

事故だ!!と直感シタオヤジはすかさずデジカメを用意!!





そこには脇道に移動するガードレールに直撃した車が停まっていた。