最高の休日。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 娘2号と険悪なムードとなった翌日、オヤジは今日の休みはどうしょうか?と考えていた。


 朝5時ごろである。いきなり娘2号がオヤジの部屋にやってきた。

「おとうさん。今日は学校祭で少し早目に学校に行かないといけないんだけども、学校まで送ってくれるかな?」娘2号の様子は今迄と変わらない様子であった。

「ああ。良いよ。」

 

こうして、朝7時30分ぐらいに娘2号を学校に送る事となった。車に一緒に乗っている間、娘2号は学校生活の事を楽しそうに、オヤジに話してくれた。

「うんうん。そうか。そうか。」オヤジが娘2号が学校生活を楽しく送っている事に満足してうなずいた。


 そして学校に近づいた時に、娘2号に「ごめんな。今、お父さんは1号の方で精一杯で、今までお前の事を満足に見てやれなくて。」

「お父さん。お前がぐれないでいてくれることだけが、本当に助かっているんだ。」オヤジは今迄の事や、今の娘2号に対しての事を正直に話した。


 そして学校に着いた時に連絡を忘れるなよ。という言葉を言いたいのをぐっと押さえて、笑って「学校祭。頑張ってこい!!」と送り出した。


 すると、娘2号は「大丈夫だよ。●●(娘2号の事)はぐれるなんで、そんな弱い心は持っていないよ。連絡を忘れるなでしょ。お父さん。」と、明るく言って学校へ向かった。


 学校から出たオヤジは何故か嬉しくなり涙がこぼれた。(かーちゃん。お前の娘は素直にすくすくと育ってくれているよ。)


 時間は午前8時。今日の休みはまだまだこれからだ。オヤジは急いで家に戻り、ホコリをかぶっているレディをガレージから出した。



 昨年は2週間も乗らなければ、エンジンが全然かからなくなり、散々苦労したのだが、はたして今日は無事にエンジンがかかるのか?オヤジは胸をドキドキさせて、セルをかける。


 

キュル!キュル!キュル!!


ドゴーーン!!


 図太い排気音に周りにいた人が一斉にオヤジを見る。


オヤジの期待通りレディはセル一発でかかった。

 

(そうか。レディお前も今日は走りたいんだな。)


 オヤジは充分に暖気をさせている間、バックミラーの調整を丹念に行った。この調整を怠ると、途端に惨劇が自分の身に降りかかるのだ。


 北海道はバイクは遅いと認識されている。60km/hはもっての外、たとえ、一般公道で80km/hで走っても、気を抜けば一気に軽自動車でさえ抜かしにかかってくる。


 バックミラは常に後ろから車がやってこないか確認の為にあるのだ。


 実は最近、オヤジはバイクに乗りたい。という気持ちがさっぱりと起きなかった。


 バイクに乗るときはメンタル的な要素がとても大切だと思う。たとえ、どんなに天気が良くても、何となく乗りたくないと思ったら、その日は止めたほうが絶対に良い。それは多分、自分自身の危険本能が働いているからだと思う。


 そして今年は初めて乗った時から、どうも乗る気が起きない日が続いていた。多分、憧れていたバイクに乗れた途端、自分の目標がなくなったのかとも思っていた。


 バイクから降りる時期が来たんだな。とも悟った。

 


 そして今、レディに跨った途端、オヤジの眼差しはいつもの「キリン」へと変って行った。


 気温は30度超え。バイクに乗るにはかなり厳しい温度だ。しかし、その暑ささえ心地のよい気持であった。

 


 行先はいつものとうり近間のB峠。片道40kmほどの近い所である。オヤジは法定速度の60km/kで淡々とレディを走らせた。

 

 後ろから何台ものツーリング族がオヤジを追い越していく。それでもオヤジは一般公道では60km/h以上出さなかった。


 一般公道は何が起きるか絶対に分らないのだ。そして峠のふもとに入るなりオヤジはレディのアクセルをオープンにした。急な登り坂にも関わらず、ぐんぐん加速するレディ。

 そしてほどなく、レディはB峠に到着した。あまりの暑さに休憩所に到着したオヤジは自動販売機のスポーツドリンクを一気飲みする。


周りには続々とツーリング族がやってくる。




 なにげなく停めているが、実はこの停め方が一番まずい。

 

 フロントのほうが下り坂になっているので、発進するときはバックで出さないといけないので、かなり大変なのである。











峠は相変わらず快晴である。




ゼファーと共にグンちゃんバイクが現われて去っていく。








 この後、このバイクを追いかけたオヤジは「ウサギとカメ」ゴッコを行う・・・・・・・・・という事は全然なく、はるか彼方から遠巻きに彼らを眺める。


 さて、そろそろ帰ろうか。この瞬間が一番緊張する。だって大型バイクに乗っている人が坂道のバックの取り回しが出来なくて、他の人に助けてもらう。という行為は絶対に出来ない。

 

 主(あるじ)さんのように足が長ければ、跨りながら足で地面を蹴りながらバックできるのだが、残念ながらオヤジはバイクに跨いだままバックが出来ない。


 気合を入れたオヤジはレディを最大限、自分の腰に傾けて全体重をかけて後ろに下がる。レデイは少しずつであるが緩やかな登り坂をバック状態で動いていく。数分後、無事に平らな場所に移動できたオヤジは安どの表情を浮かべて、レディに跨りセルをかける。


「さあ、帰ろう。レディ。」そう、言いながらオヤジは静かにカタナを発進させた。


 昼ごろ、無事に帰宅したオヤジは体中汗だらけで、シャワーを浴びた後、体重を測ったら1kgも減っていた。残念ながらオヤジの体力はこれまで。

 今日はこれでレデイとのお散歩はこれで終わり。



昼からは友人Kからの電話で、R32の廃車がタダでもらえるかも。という話が入り、その場所に急ぐ。しかし、流石のGTRは廃車でもタダではもらえない。(当たり前だよな。)



 唯でもらえるという車はRB25(GTRのRB26ではないのだよ。)エンジン搭載のR32型のFRタイプのスカイラインでした。


 ハハハハ世の中、そんなにうまい話はないのだよ。もちろんオヤジは断りました。(こいつをレストァして、後ろにGTRエンブレムを貼って、エセGTRにして乗り回すのも、ある意味面白いかな??)


 そう思いながら、オヤジとしては久しぶりに最高の休日を送りました。