卒業式。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

  昨日は娘2号の中学校の卒業式であった。残念ながら天気は今にも雪が降りそうな寒い曇り空であった。


 しかし、まあ、なんですね。あの卒業式の空気というのは一種独特なものがありますね。


 かみさんも一緒に来させたかったが、まさか遺影を持ち出すと流石にみんなからひかれると思い、サイフに密かに、かみさんの運転免許書を忍ばせてオヤジは中学校へ向かう。

 

 受付を済ませるとしおりが渡され、一緒に娘からの手紙を渡された。

 そして控室に入った途端、生徒たちの運動会、修学旅行、学芸会などのイベントの画像がTVから次から次に流れ、卒業式に関係する音楽が流れてくると、まずここで最初に胸にグッときてしまった。(まずいなぁーー。こんなところで、涙なんか流してたらカッコ悪いし・・・)と思い、すかさずに上を向いて涙をこらえるオヤジである。

 そして、先ほどのもらった手紙を読みたかったが、ここで読んだら完全に号泣ものなので、ひたすら我慢して卒業式を待った。


 そして、卒業式が始まり、娘の卒業証書授与。ここで、完全にオヤジはデジカメで娘を撮るカメラモードに入っていたので、先ほどの意識は完全にぶっ飛び、冷静に卒業式を見ていられた。

 終盤にさしかかり、校長先生のあいさつが始まった。

 

 そこで、オヤジは先ほど渡された、娘からの手紙をそっと読み始めたのだ。

 

 娘からの手紙は母親が亡くなってから、今までの事やオヤジに対しての感謝の事が書かれていて、もう完全にオヤジの目からは涙が止まらかった。声を出して泣けなかったので、密かに嗚咽する。多分、後ろにいた人は、オヤジが肩を震わせて嗚咽する姿を見て、不思議だっただろうなぁーー。


 卒業式が終わり、いよいよ娘達クラスの最後のホームルームが始まった。


 いろいろ問題があるといけないので、ここでは娘2号の担任の先生の名前を仮名の神崎先生とします。


 神崎先生は男性で30代ぐらいであるが、以前、何事もクールな態度の娘2号が、担任の神崎先生の事を、「すごく尊敬できる先生だ。」と熱くオヤジに語った事があった。


 神崎先生は2年生から娘達を受け持っていたのだが、


「お前たちも気が付いていると思うが、俺はこのクラスのお前たちの事を全員、名字でなくて名前で呼んでいたんだ。」と話し始めた。


「それは他のクラスや先生達からえこひいきだ。と、言われても、俺はそうしてきた。」


「何故なら、お前たちは全員俺の子供達だからだ。俺のクラスになった奴は、死ぬまで神崎組の一員で家族そのものだからだ。」と語り始めた。


 冷めた時代だと言われる。そんな熱い語りは恥ずかしいとも言われる時代である。が、この神崎先生はそんなこともお構いなしに、このクラス全員を自分の子供の様に接してくれていたのだ。


 母親を亡くして思春期を迎え難しい年ごろになった娘2号が、素直な子に育ってくれたのは、この神崎先生のお蔭げだと思う。

 

 娘を見れば涙をボロボロ流していた。クラスの子供達を見ても全員が下を向いて泣いていた


 大切なホームルームの時間はあっという間に過ぎていった。

「最後に俺が選んだ絵本を読んで終わりにします。」と、神崎先生は1冊の絵本を取り出した。

 

 神崎先生は絵本を開くと、いままで抑えていた感情があふれ出し、声を詰まらせながら読み始めた。


「みんな大好き。」


 絵本の内容はみんな大好き。という言葉しか書かれていなかったが、不思議と、クラス全員の心に、神崎先生の言葉が染み込んでいった。子供達だけではない。父母の人もみんな目が赤くなっていた。。


(娘2号よ。本当に良い先生に出会って、最高の中学生活を送ってきたんだな。)オヤジは肩を小さく震わせ泣いている娘2号の姿を見てそっと思った。


 式が終わり外に出ると、曇り空がいきなり晴天となっていた。帰りに娘の友人の父親と出会った。


「いい卒業式でしたね。」

「はい。本当に、良い先生だしたね。」と、オヤジは答える。

「奥さんに見せたかったでしたね。」と言われた。


そこでもう完全に限界であった。


「本当に。」と、オヤジは短く答え、「それでは。」と頭を軽く下げて素早く後ろ向き足早にその父親から去って行った。


 そして車の中に入り、回りに誰もいない事を確認したら、いつまでもいつまでも泣いていた。


さあ、明日はいよいよ合格発表の日!!

娘2号にはサクラサクのであろうか??



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