入試前夜。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 いよいよ、明日は娘2号の高校受験の日である。娘2号には悪いが、この1年間、1号の事でオヤジの思いの大半を彼女にとられ、ほとんど2号のほうの世話はなおざりになっていた。


 先日、娘2号と話したことがあった。

「すまんな。今はお父さん、1号の事が精一杯で、お前の事をかまってあげれなくて。」

「別にいいよ。●●ちゃん。(2号の事ね。)かえって、ほおっておかれたほうが、楽でいいもの。」

「そうか、おかげでお父さん。すごく助かるよ。」


 娘2号は気の付く子である。その場の空気をすごく読む。

おかげでオヤジは何度もその言葉に助けられたことやら。

そんな娘2号もたった1回、弱音を吐いたことがあった。

「お父さんは受験の時はどうだったの??」

「うーーん。お父さんは昔からあまり勉強はやらないほうだったからなぁーー。たいした受験勉強はやらなかったからなぁーー。」

「確か夏休み前に一番薄い入試の問題誌を1冊、毎日やったぐらいだなぁーー。」

「あんまり参考にならないね。」

「まあ、そうだな。」


そして数日前、受験に必要なものを確認させて、いよいよ明日が受験日となった。


 そして今夜、普段は即行で帰るのだが、今日は娘2号のゲンをかつぎ、試験に勝つ!!ということで、オヤジはトンカツ屋さんに行って夕食をとっていた。

(本当は本人が食べるのだが・・・まあ、代理ということで・・・・・)

 その時、時間は夜9時近く。娘2号からメールが入った。

「お父さん!!大変!!大変!!受験に腕時計が必要だよ。腕時計持っていないけど、どうしょう!!」普段は落ち着き滅多に慌てない娘2号だが今回だけは違っていた。


「どうして確認しなかったんだ!!」と、言いたいところを、オヤジはぐっと我慢した。一番、本人が動揺しているときに、こんな言葉をかけると、もっと本人は動揺してしまうだろう。

「1号に余っている時計が無いか聞いてみろ。」と、返信してみたが、多分、答えはNOだろう。

少し経ったらまた娘2号からのメール。

「やはりないみたい。」

「いったいどうしたら良い??」かなり娘2号は動揺しているみたいだ。

「分かった。時計の件はお父さんが何とかするから、おまえはもう明日は早いから、なにも心配しないで休みなさい。」

 そう返信を行いオヤジはすぐさま行動を起こした。


ここ、北見は24時間のスーパーがある。安い腕時計なら1本ぐらいはあるはずだと目論んだのだ。案の定、2千円程の時計が何本か売られていた。それから約1時間後、自宅に戻ったオヤジはすぐに娘2号を安心させるために彼女の部屋に向かった。


トントントン。


 2号の部屋のドァーを軽くノックするが返事が無い。そーつとドァーを開けると、娘2号は完全に熟睡していた。完全にオヤジの言う事を信じていた様子だ。


オヤジはそっと娘2号の机の上に買ったばかしの時計を置いた。


「娘2号よ。明日はお前の人生の第一歩を迎える日だ。その為に、1年一生懸命に頑張ってきたはずだ。明日は何も心配なく試験に向かいなさい。」


そう静かにつぶやいて、オヤジは娘2号の部屋から出て行った。




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