一周忌。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車



今日はかみさんの一周忌。


 オヤジのこの1ヶ月はこの時の為に、いろいろ準備をしていたと言っても、過言ではない。

  だから今まで何かと忙しく、全部一人で決めて、はたしてこれで良いのか自問自答の毎日であった。


いま、やっと肩の荷が下りた気分である。



 さて、今日の為に普段会えない姉たち家族がやってきた。

姉夫婦と子供3人、そして、孫達が7人という総勢12名という大世帯である。


 法要は滞りなく終わり、大所帯の姉たち家族は呼人の「テント・ランド」のロッジを借りて、今日の夜はバーベキューを行うから、オヤジと娘2号も来ないか?とお呼ばれした。

(娘1号はスクーリングの為に、現在は東京にいるのは、今は不在である。)


 娘2号は凄く乗る気であったので、オヤジはすぐにOKをした。



 大所帯の姉たち家族は、ここのロッジに宿泊していた。

中を覗いたら、なかなかいい所である。

(実はオヤジは20年も前からこの場所は知っていたが、中に入ったことが無く、どんな施設かも知らなかった。





眼下にオホーツク海を望み、なかなか景色も良いとこである。







 あたり一面芝生で、子供達は皆元気よく走り回っていた。




 で、今日の最大のメインイベントのバーベキュー。オヤジとお義兄さんが場所の確保をしていたら、姉からライターと炭と新聞紙4枚のみを渡された。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの?」

「あのーーーっ。もしかしてこれだけ?? 薪とか炭を起すうちわとかは無いの???」

「うん。そうだよ。」

と、姉は屈託のない笑顔を見せて、そうオャジに言った。


「せ・せめて、炭を起すための薪は無いの???」

「うん。無い。それなら着火剤買ってくるね。」

と、言って姉は炭の売っている受付場に走って行った。


「あのうーー。着火剤でなくて薪のほう。薪!!」と、オヤジは答えたが、姉の姿はもうそこにはいなかった。


「うーーん。どうしたもんじゃろのう・・・・・・」


 オヤジは薪なしでとうやって炭を起こすか、某・TV番組のヒロインのようなセリフを吐いて悩みまくった。


 男衆はお義兄とオヤジのみ。ここで、炭が起きなければ、バーベキューは失敗というよりも、今回の旅行の一番の嫌な思い出になってしまう。


 しかも食材は14名分もあり、かなりお金もかけていた。


頼りのお義兄さんはもう来てからビールを飲みまくって、完全にできあがっていて、頼りにはならない。


 今、このイベントの成功は、まさにオヤジにかかっているといっては、過言ではない。


 よくテントをして、夜はバーベキューにしょうと思って、炭を使おうとしてもうまく炭を起こすことが出来なくて、「頼りない父親。」というレッテルを貼られる親父がいると思うが、それだけはなんとしても避けたい。「まずは薪が必要だなぁーー。」


オヤジは落ちている小枝を探して、あたりを歩き回った。

しかし、ここは綺麗に芝生になっている場所で、小枝一つも落ちていない状況であった。


ふと目についた松ポックリ。



 

この場所には松の木が沢山植えられていて、やたら松ポックリが落ちていた。


オヤジはサバイバル関係の本を読むのが好きである。

その手のTV番組や本があったら必ず見ている。


小枝、小枝、小枝・木・松ポックリ!!


「そうだ!!松ポックリだ!!」確か何かの本に書かれていたのだが、松ポックリは焚き木を行うのに、良い着火剤になるという。

また偶然に数本の小枝が近くで見つかった。


次に炭を起こすためのウチワである。


単に風を起こせば良いのだから・・・・・・

「そうだ!!ダンボールだ!!」


 炭が入っていたダンボールの箱をすかさずばらして1枚の板にしてあおり、着火した新聞紙に風を送った。


奮闘することわずか数分。





 勢いよく燃え出した火はあたりの小枝や松ポックリに燃え広がり、無事に炭を起こすことが出来た。


 昔は火を起こすことは命がけの仕事と言っては過言では無かった。

火を起こすことが出来なければ、生命の危機も感じる事がある。


久し振りに炭を起こす事を行い、何だか原始の魂が呼び起されたオヤジ

である。


 その夜、バーベキューは大成功で幕を閉じた。


大勢での食事はとても楽しい。オヤジはいつまでも時が過ぎるのを忘れていた。


 ふと、外を見ると娘2号は小さい子供達と走り回り、楽しそうに遊んでいる姿があった。


 オヤジはいまではすっかり母親になった3人の姪に子育ての事を相談していた。

 3人の姪は自分たちの経験などを話して、オヤジの悩みを親身に聞いてくれた。


 今まで自分一人で頑張ってきたと思っていたオヤジである。しかし、それは間違いで、自分の周りにいる人達は常に僕らの事を心配しくれているのだ。


 それが自分の子供であろうと、オヤジの事を心配してくれているのだ。


「自分は一人ぼっちでは無いんだ。」


久し振りに幸せな気持ちになったオヤジである。


 あたりを見回すと暗闇が迫り、涼しい風が吹いていた。


もう秋の気配が感じられる時期となっていた。