別れ。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 昨日(23日)はオヤジの会社の古くから勤めていた人の送別会であった。


 その人は、オヤジよりも年齢も若く、オヤジよりも後で入って来た人で後輩にあたる人である。

 最初、線が細い人だなぁーー。(神経が細かくて、お客さんと何かあったら耐えられない人)、だと思っていた。


 だが、その人はあれよあれよと店長となり、あれよあれよと今の会社になった時に、社長の懐刀として札幌に単身赴任で行き、実質のナンバー2になった人であった。


 会社内では人望も厚く、今の会社にした立役者として活躍した人であった。

 年収もオヤジよりも何倍も貰っていて、オヤジは、いや、今の会社の大多数の人は、時期社長は当然、その人がなるものだと思っていた。


 恵まれた地位と、年収。まるで、オヤジとは月とスッポンみたいな人生で、さぞかし幸せな人生なんだろうと、勝手に思っていた。


 そして、その人が今、会社を辞めて自分の横に座っている。

その人の横顔は何故だかサバサバとしていた。

「今よりも年収がはるかに低かったあの頃(昔)が一番、俺は幸せだったなぁーー。」と、その人は、昔を懐かしむかのように、遠い目をしていた。


「今は、あの頃よりもはるかに年収は高いけど、数字、数字に追われて、毎日が辛いよ。」

「が、それも終わり。今まで30年間走り続けたから、明日から少しゆっくりしてから、かみさんと新しい生き方を探してみるよ。」と、話していた言葉が実に印象的であった。


 長い人生である。最初は同じ考え方で会社を動かしてきたその人と、社長にいつの間にか、修復のできないずれが出てきたのであろう。

 そして、その人は社長とは一緒に生きていけない事を知り、社長の元を去ることにしたという事であった。

 最後の最後まで今まで自分を支えてくれた人の後の事を心配をしていた人であった。


 実に潔い引き際であろう。


 自分の心を少しだけ偽って生きて行けば、遥かに楽で、地位も名誉もある生き方が出来たであろう。


 誰しも、人の生き方をうらやましがる事が多い。オヤジはトントン拍子で出世をしていったその人が、オヤジよりもはるかに何倍も幸せなんだと、勝手に思っていたが、実は大間違いだったと、今、初めて知った。


  お金なんか無くても、家族と一緒にいられる幸せ。そんな些細な幸せがその人にとってはどれだけ尊いものだったのかを、その人が語った言葉で、ひしひしと感じた。


 その夜の帰り道、オヤジは運転する車で何故だか泣けてきた。


 その人と別れることが、辛くて悲しくて涙するわけではなかった。

 本当に漢(おとこ)らしく、潔い生き方に感動しているんだと涙しながらそう思った。


 今まで本当にお疲れ様でした。

これから少しゆっくりしてから、改めて第2の人生を生きてください。


 そして、今度はもっと人生に苦しくない生き方をしていってください。







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