父として。親として。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

  昨日、娘1号から仕事先にメールがあった。休憩時間に確認すると内容は「生まれて初めて、バイトして給料をもらった。とっても嬉しい。」との事であった。


 まあ、普通は誰でもバイトの初めての給料はとても嬉しいものであるが、オヤジや娘1号にとっては、この給料は特別な想いがあった。

 

話は1ヶ月ほど先に先登る。


 高校3年生の娘1号は、札幌の学校へ行くのを諦め、自宅から働きながら通信教育で好きな美術の勉強を行うつもりでいた。

 また、地元で良い就職の募集を行っていたので、オヤジは当然、その場所に娘1号は面接に行くものだと思っていたのだ。

 どころが、今になってそこには行かない。と言い出してきた。

オヤジは焦った。


 他の子供たちがどんどん、自分たちの進路を決めていく中、いまだ漠然とした道しか決めていない、自分の娘がどんどん、みんなから取り残されていく気がしたのだ。


「一体なんでそこに行くのを辞めたんだ。」

「だって、絵の応募の期限だってあるし、仕事と絵の応募をやっていたら、自分の絵に対するモチベーションが下がるよ。」

「絵のモチベーションが下がる。って言っても、卒業したらどうやって食べていくんだ??」

「お前の使っている携帯電話のお金やコンタクト代だってどうやって支払うんだ!!」


オヤジは強い口調子で、娘1号を叱りつけた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

娘1号は黙りこくったままであった。

「じゃぁー。一体、どうしたいんだ?」


 オヤジは後、半年で高校を卒業する娘が、未だどこにも進路を決めかねている様子にイライラして尋ねた。


「このまま、ずっとお父さんや●●ちゃん(娘2号)の面倒をみるのは嫌だ。」


 オヤジは初めて娘1号が自分の意見を言うのを聞いたような気がした。


 娘1号は親から言うのもなんだが、実に素直な子である。特に母親から「あれがいいよ。」とか、「こうした方がいいよ。」と言われたら、なにも疑問も持たずに素直に従っていた子であった。

 その子が初めて自分でこうしたいと言いだしたのだ。

「小樽に行って、そこから通って札幌で絵の勉強をしたい。」と、ポツリポツリと話しだした。

 

 考えたら母親が亡くなってから、当たり前のように、娘1号に炊事や洗濯などをやらせていたのであった。


「小樽に行くっていっても、おまえまだ働いたことも一度もないだろう。そんな甘い考えで、どうやって暮らしていくんだ。」

「大体、当たり前のように出している、おまえの携帯代の1万円はどれほどの思いでお父さんが稼いでいるのかが判っているのか!!」


 オヤジは一般的な考えで、娘1号を叱りつけた。


このまま娘1号との考えは平行線であった。


娘1号はだまって自分の部屋に戻った。


 途方にくれたオヤジは暗い仏間で電気もつけずに、「かあさん。娘1号がまた夢見たいな事を言い出したよ。一体、どうしたら良い??」と、鏡に写っているかみさんに一人話しかけた。


 頼れるものは誰もいない。一体、娘1号の将来はどうなるんだ。そう考えると、本当に泣きたくなってきた。


 




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