レディ発進!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 今日の休日は久しぶりに予定のない休日となり、オヤジは体力のある午前中にバイクに乗り、しかもその動画をUPする予定を立てていた。

 しかし、現実はそう、うまく事は運ばない。

 銀行の支払い周りやなんやらと細かい用事を済ませると、気がついたらあっという間に昼過ぎの2時近くとなっていた。

 しかも、外は今にも雨が降りそうな、暗く寒い天気となっていた。


 北海道の5月の天気はまだ寒い。

晴れればそれなりに気持ちが良いのだが、天気が悪いと途端に寒くなり、日中でも暖房が必要となる。(今でも日中でも暖房はたまーに入れていますが・・・・・何か。)


 そんな中、オヤジは昼からの時間の過ごし方を考えていた。車で近くの網走に行って、ウインド・ショッピング??

 単に車でぶらりと走り回る。

 

 ダメだ!!どれもこれも、単なる時間の無駄使いにしかならない。


 今日は絶対にバイクに乗ろうと思っていたのに、単なる時間潰しは、今のオヤジには不要だ。


 そう思いつつ、オヤジは自然とガレージに置いてある、バトルスーツを手に取った。


 今年で5年目になるオヤジの戦闘服は、それなりに使い込まれていた。

 (そういえばこいつ、まだ今年は一度も身につけていないな。)


 オヤジがバイクを乗るために買ったこのスーツは、着込むのに時間が掛かりクソ重いので、自然とバイクに乗る為だけの儀式となっていた。


 そして、気がついたらそのスーツに自然に手を出して身につけていた。

「よし。行こう!!雨が降ったときは、降った時だ。」

オヤジは雨が降った時にバイクを乗るのを止める事にして、愛機レディと共に走り始めた。

 しかも、彼女のタンクには動画用のGOPROを装着した。


 目指すは約40キロ先のB峠。相変わらず空気は湿っていて寒い。

が、分厚い革のプロテクターでおおわれたバトルスーツは、絶対の安心感と暖かさを保っていた。(その代わりに、真夏でこいつを身につければ、正に灼熱地獄と化するが。)


 相変わらずに愛機レディは街の中では不機嫌な走りをする。

時速50km/以下では片肺状態でプスン!!プスン!!となり、低速走行では大型Vツインエンジンの独特なシャクリ感が出ながらの走りである。

 そのため、低速時はほとんど半クラを多用してごまかしての走りとなる。


 バイク屋さんで片肺状態を確認されたが、通常の高速状態では問題無いとの言うことなので、多分、マフラーの取り回しの関係でなるのではないか?という決論にされた。

 

 まあ、普通の人間なら振動が激しく、バックミラーもほとんど使えず、低速も苦手なこんなバイクは直ぐに手放すのであろう。

 が、その替りに、5速トップからでもアクセルひと更かしでどこでも急加速する、ぶっといトルク感にオヤジはやられていた。

 しかもこの125ccに見間違う程の小型感も気にいっていた。(実際、友人がオヤジの走っている姿を見て、すごく小さいバイク。とメールしてきたぐらいだ。)


 目的地のB峠の麓にやってきた。気のせいかポツリ。ポツリと何かがヘルメットのシールドに当たる。


 オヤジの近間にあるこのB峠。オヤジ側から走れば、あまりコーナーの少ない、高速コーナーが続く道のために、車がいなければ常時、高速道路並みのスピードで運転ができる。が、今回オヤジが目的とする場所はその反対側の道である。

 タイトなコーナーが連続で続き、180度ターンが数箇所存在する、正にバイク乗りにはもってこいの場所である。


 いつものように、峠の頂上に着くがオヤジは休憩をしないで、直ぐにそのまま降りて目的地の場所に向かう。

 空はだんだん暗くなってきた。


 チャンスはただ一度!!この機会を逃せば、雨が降り始め、もう今日は2度と走れないであろう。


 やがてB峠の反対側の麓に降りて、Uターンを行い、オヤジはGORPOの撮影を開始した。

  後続車をやり過ごし、オヤジはおもむろにレディのアクセルを吹かす。


バゴーーーン!!


 とレディは凶暴な排気音をあたりに撒き散らし、オヤジを前に突き飛ばす。


 みるみるうちに先に行かせた後続車に迫っていく。


 その急加速するレディの存在をバックミラーで認めたその車は、左ウインカーを付けてあわてて路肩によけてオヤジに道を譲ってくれた。


 オヤジは軽く左手を上げて、道を譲ってくれた車にお礼をしてから、身を伏せて戦闘開始を始めた。


 バイクはやはり峠は面白い。しかも急勾配のヒルクライがダントツだ。


 多分、ヒルクライムは公道上の車輪の付いている乗り物での中では最速であろう。という気にさせられる。


 右に傾けたと思ったら直ぐに左に傾け、シートにまたがる暇がない。



しかしここは公道上である以上、一つの絶対的な法則が存在する。


 先の見えないタイトなターンの時は、いついかなる時でも止まれるように、常に右足をブレーキペダルに置いておくのだ。

 そしてコーナリングの先が見えた途端に、アクセルをフル!!

大型排気量のバイクは立ち上がりで充分に加速する。

そのため、絶対的な安全マージンをもってのコーナーリングの方が速いのだ。


 気のせいかフロントの接地感が無い。

急な登り坂にも関わらずに、レディは法定速度の約2倍の速度で走り抜ける。


 一気に峠の頂上まで上りつめたオヤジは駐車場でヘルメットのシールドを開けて、空を仰ぎ見た。

 先ほどの明るさが一気に暗くなってきた。

「目的は達した!!さあ、帰ろう!!このまま雨が降り始めるまでに。」

そう言うと、オヤジは再び帰路に向けて、レディのアクセルを更かし始めた。


 空はだんだん暗くなり始め、ついに隣町までたどり着いた時に、雨は降り始めた。

 
時折、雨水が溜まった道でタイヤを取られながら、オヤジは自宅へ急ぐのであった。


 
冷たい雨で体は打ち震えていたが、オヤジの心は不思議と爽快感で満たされていた。



PS。さて、動画ですが・・・・・早速見たら・・・・とてもUPは出来ませんでした。


理由は・・・わかるでしょう。


今日はレディとオヤジだけのたった二人だけの物語という事で・・・・・



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