「あまり期待するなよ。なにせ、一人8、700円だからな。」
オヤジは先に行く従業員に聞こえないように、かみさんにそっと耳打ちをした。
3時過ぎにホテルにチェックインしたオヤジ達は、どんどん先に進む従業員の後を付いていった。
そして、案内された部屋は角の部屋であった。
(角部屋!!まさか・・・・)
実は角部屋に泊まると、夜中じゅう不思議なことが起きる事があるのだ。
現に数年前に会社の出張時に角部屋にあたり、一晩中廊下で騒がれたことがあったのだが、翌朝、みんなに「昨日は騒がしいお客がいて迷惑だったね。」と話したら、「オヤジさん。昨日は誰も廊下にはいませんでしたよ。」と言われて、ゾッとした体験があったのだ。
(まさか、冗談に幽霊の出る部屋と言ったのが、本当になったのか??)と、ビクビクもののオヤジであったが、部屋に案内されたら、
「うわーーーっ!!」と先に案内されたかみさんや娘たちの叫び声が聞こえた。
「いきなり出たのか!!」
慌てて、オヤジも案内された部屋に入る。
すると、その部屋は・・・・・
入口から入ると右側は4畳半の畳の間があり、その横はカウチと2脚の一人掛用のソファー。
更にその奥には二つのベット。
その横にはお風呂場が付いている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あまりの豪華さに声の出ないオヤジであった。
(本当に、ひ・一人、8、700円だったよな・・・お金足りるか??)
思わずサイフの中を確認する。
「ヘヘヘ!!楽チン!!楽チン!!」オヤジはカウチに横になった途端、今までの疲れがドッと出て、いきなり眠りに落ちた。
「あんた。もう5時だよ。起きなくていいの??」とかみさんの声で目覚めたオヤジである。
「もう5時か。食事前に一風呂浴びてくるか。」
オヤジはお風呂好きである。が、それはカラスの行水であるのだ。1回のお風呂に5分も入ってはいられない。だけど、毎日、お風呂に入れないと、途端に機嫌が悪くなるのである。
だから温泉に行くと、ついてから1回。真夜中に1回。朝方に1回。と最低3回は入らないと気がすまないのだ。
お風呂に入って、午後6時15分。いよいよ今日のメインイベントのバイキング。
80種類の食材を前に、オヤジと娘1号と2号はお腹が破裂するぐらい食べまくり、カミさんはカミさんでオヤジが心配するぐらい食べて、後で食べ過ぎてお腹が痛い。と、メェメェ泣いていた。
食事後、部屋に戻ったオヤジは普段、滅多に飲まないビールを飲んだ。(アルコールをたしまないオヤジはビールを飲むことは、十年に1回あるかないか?というほど、めずらしい事なんですよ。)
その途端にカウチのなかで、また記憶が途絶えた。
真夜中に強い喉の渇きと尿意を覚えて目が覚めた。
「お風呂に行ってきたの?」と半分ねぼけたかみさんの声がする。
(そうだ、2回目のお風呂。まだ行っていない。)
本日、2回目のお風呂に突入。
時間は午前2時近くである。当然、お風呂には誰もいない。
ここで、女の人がいたら、かなりビックリするが、そんなことはあるはずがない。
そんなことがあるのは、世の中の男どもが喜びそうな、DVDの中だけである。
30分ほどゆっくり湯船につかってから、再び部屋に戻る。
(外の天気はどうなっているかな??)
雪はやはり降ってなかった。
吹雪になるという予報は杞憂であったのだろう。
そう思い、安心しながらこんどは本格的に布団の中に入った。
翌朝、いつもの時間に目が覚める。TVを付けると朝から暴風雪のニュースばかりやっていた。
千歳では飛行機が欠航で1500人もの人が、空港でカンズメになったそうだ。
北海道は大体、札幌のほうで猛吹雪になっても、大雪山を超えたら、吹雪が止む場合が多い。その為、今回も、吹雪く心配はなかった。
朝食もバイキングである。
オヤジ達は最後の時間を楽しんでいたら、ホテルの管理者がやってきた。
「昨日は斜里、ウトロ間が夜半通行止めになった事を知っていましたか??」
「えっ!!そうなんですか??夜中の2時ぐらいでも全然、雪はなかったですよ。」と、オヤジは驚いて答えた。
「8時に通行止めが解除されるので、早めに出発された方がよろしいかと思います。」
「そうですか。ありがとうございます。早速、そうします。」
ということで、朝食を食べ終わったオヤジ家は、すぐに帰りしたくをして、チェックアウトを行う。」
精算は税込一人8、790円で、4人で35、160円であった。
なんだかとっても嬉しくなるオヤジである。
宿泊しているお客の中では真っ先にホテルを出るオヤジ家であった。
やはり知床第一ホテルにして、良かったなぁーーー。
ここのホテルは宿泊するお客の期待以上の、いい部屋を必ず用意してくれるなぁーー。
「ありがとう!!知床第一ホテル!!さようなら♪また機会があればやってくるよ♪」
こうして、
ウトロは風は強かったが雪はなかったので、別に普通に帰ることが出来た。
良かった。良かった。斜里まで帰って来たら、もう帰ったも同然だ!!
と、斜里町まで500メートルを切ったところで、とつ然、ラッセル車が現れた。
「??」
その途端、雲行きは急に怪しくなり、いきなりまわりは猛吹雪と化した。
時折、前が見えなくなるホワイト・アウト状態。
オヤジはハザードをかけながらゆっくりと走り始める。
こうゆう時は、いきなり前に車が止まっていたりして危険なのだ。
斜里の町は完全の猛吹雪と化して、コンビニの前では多くの車が避難していた。
(まいったなぁーー。ここまで来て立ち往生か??)
しかし、まだ道路閉鎖は入っていない。
(ココ。寂しがっているだろうなーー。)
(よし、走ろう!!)
オヤジは意を決意して走り出した。
まだ数十メートル前が見える!!
再び、ハザードのかけまくりで斜里の町を抜ける。
絶対に路肩には落とせない。路肩に落ちたら即、脱出は不可能である。
時速は40km/h以下。
いままでの経験の全てをただきだし、ホワイトアウトの道を走り続ける。
通常なら10分もしないで走り抜ける道を1時間近くもかけてもまだ抜けることが出来ない。
「いつも、ここから行ってない??」かみさんは止別からの近道を指差した。
「いや。ダメだ。こんな吹雪の時は、国道以外は通ったら、すぐに抜かって動かなくなる。」国道さえ通ってれば安全だし、もし、万が一動かなくても、他の車に助けを求めることが出来る。」
ここから浜小清水までの道のりは正に祈るように走り続けた。
浜小清水を抜け、原生花園のストレートまでやってきた途端、雪の振り方が少し弱まった。
「今だ!!」そう叫ぶや否や、オヤジはアイスバーンの雪道の中を、猛スピードで走り出した。
そして、8時30分にウトロを出て、11時30分。普段の倍の時間をかけて、無事に自宅に帰宅した。
「ただ今!!ココ!!」
驚いたことに、ココに与えたエサを見ると、全然減っていなくて、トイレも全然していなかった。
「寂しかったんだよ!!オヤジさん。」と、ココはオヤジに近寄り、頭を擦り付けた。
「そうかそうか。ゴメンなココ。」と優しく頭を撫でた途端、ココは安心して置いてあったエサをガツガツと食べ始めた。
その夜、ココは最後までオヤジのもとを離れなかった。
オヤジは寝る直前まで、ココの頭を撫でてあげると、ようやく安心したせいか、目を細めてココは深い眠りに落ちた。
最高の思い出!!2 ー完ー
PS。やはり毎度の事ですが、最近の天気予報は恐ろしい程あたります。
昼からオヤジは神経を使い果たして、コタツの中でダウンしていました。
なんだか、体を休めに行って、かえって疲れにいったような???
○| ̄|_ < プッーー!!
あっ。間違った!!
ガックシ!!

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