ウイドゥ・メーカー | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車


 ウィドゥ・メーカー「未亡人製造機」と呼ばれるバイクがある。多分、オヤジと同年代の50代の方は、すぐにカワサキ・マッハⅢを思い浮かべる人が多いと思う。

 カワサキ・マッハⅢ。500SS・H1 排気量500cc。


最高速200Km/h、ゼロヨン12.4秒

当時、この速度に到達できるマシンはこのH1とHONDACB750FOUR
以外なかったのだ。

このバイクのことをネットで検索すると、

気違いマッハ。
じゃじゃ馬。
3速でもフロントが浮き上がる。
真っ直ぐに走らない。

加速時は振動がすさましく、ハンドルが3倍ぐらい膨れ上がった感じになる。

そして、ウィドウ・メーカー。

という言葉が必ず現れ、多くのライダー達に伝説化されているバイクである。

 1975年より大型バイクの免許所得は、運転免許試験場での限定解除のみとなり、当時、中免小僧のオヤジには大型バイクはどのバイクも伝説化され、免許を取得した現在でも、このマッハⅢの販売価格はオークションでは150万円を下らないバイクで、オヤジの中では今でも伝説化されているバイクである。
 そこのあなた、150万円ったら、もう少し出せば、オーバー300km/hのZX-14Rやハヤブサの新車が楽々買えるお値段なんですよーーー。

 数日前、先輩のMさんからメールが来た。彼は車は好きだが、バイクには全然疎い人であるが、マッハⅢのことは何故だか知っていた。
(それだけ、多くの人にマッハⅢ伝説が一般化されているのであろう。)

 彼から、もし、マッハⅢが値段が高くなく、自分が買える値段だったら、マッハⅢに乗ってみたい??というメールがきた。

 そこで、ふと自分がマッハⅢを乗ることを想定してみた。

 伝説のバイク!!伝説のバイクと騒がれているが、皆の言葉を鵜呑みして、本当のマッハⅢのスペックを、考えたら全然知らなかったのだ。


 まずはシート高。
残念ながらシート高はネットのどこを探しても載っていなかったが、3気筒マシンの為、かなりボディはスリムなので、短足のオヤジでも何とか足は着くだろう。

 続いて車重。
乾燥重量:174kg

おおっ!!軽い!!軽すぎる!!まるで、400cc並だ!!(当たり前か、500ccだもんな。)

そして、最高出力:60hp!!(うーーん。当時の400ccが53馬力規制が入っていたからそんなものなんでしょうねーー。しかし、その馬力で200km/hとは・・・・・)

トルク:5.85kg-m(????一体どれぐらいなのか??)

だだ、どの記事も加速がすさましい。と書かれていた。

 これは、制作当時、わざと前後のバランスを悪くして、体感的に加速感を出すようにしたために、その結果、3速までフロントが上がる。という事になったみたいである。



 ある記事は、原付きのフレームに500ccのエンジンを乗せて、ひたすら速さを求めたバイク。という事が書かれていた。

うーーん。流石に伝説のバイクだけあるなぁーーーー。と、関心していたら、ふと、ある事に気がついた。




 原付きのフレームに500ccのエンジン?????

どっかで聞いたことが???


早速、レディ9のスペックを調べると・・・

 乾燥重量。175kg。
 排気量:1000cc
 最高出力:92hp
 最大トルク:92Nm@


 
おおっ!!何と、レディ9のスペックの方がマッハⅢを凌駕しているではないか??

しかも、レディ9の売り文句は1000ccの原付!!ではないか!!
(ビューエルのフレームはTZR250のフレーム寸法を参考に制作しています。その為、前輪と後輪間のホイルベースは、MAGUNA50の原付き並みです。)



 なんということだ!!オヤジは伝説のマッハⅢという憧れのバイクよりも、もっとすごいバイクを持っているではないか!!

 という事で、オヤの中で憧れの伝説のマッハⅢの仮想乗車実験は終了したのであった。


で、話はこれで終わったら、やっぱりな!!オヤジは盆栽ライダーー!

だよ。

と、多くの読者から失笑を食らうので、オヤジの中では新しい伝説のバイクとなったレディ9を今回も走らすこととした。

 ここ、北海道は数日雨が続き、猛暑も一息ついた時であった。
本当にオヤジの休日の1日だけの数時間、雨が止むことがあった。


 ようやく時間の取れた昼過ぎ、オヤジは久しぶりに、我愛機、レディからバイクカバーを外した。









エンジンをかける。


ドリュ!!ドリュツ!!

ドドドドド!!


うーーん。しばらく乗っていなかった割に、すぐにエンジンがかかったなぁーー。

 マッハⅢのスペックを調べたせいか、気のせいかコイツが伝説のバイクに見えてくる。
(あっ!!そうか!!タイトルに最狂伝説!!とうたっているしなぁーー。)


ドリュ!!ドリュツ!!ドドドドド!! 

プッスン!!

バトルスーツを着込んでいるうちに、エンジンが止まってしまった。


ワハハハハ!!こいつ、しばらく走っていないから、すねていやがる。

再び、エンジンをかけて、軽くアクセルを煽る。

さて、用意は出来た!!

どこに行こう。

 だんだん曇空が怪しくなってくる。

うーーん。雨足が近いなぁーー。あんまり遠くもいけないなぁーー。(というか、オヤジ!!オヤジはいつも、近所しか走らないだろう!!)

ということで、今回もオヤジの近間のB峠。一応、40kmぐらいなので、飛ばせば30分弱で着く身近な観光スポットです。

  町のなかは相変わらず不機嫌な感じで、交通速度を守って走れば、時折、1気筒死んでしまうという恐ろしいバイクである。


 B峠の麓から頂上に上がる時に、5速全開のまま久しぶりにアクセルを開けたオヤジであった。
 その瞬間、200kgも満たない重量を一気に戦闘領域のスピードに持っていく。

 すさましい加速のために、シールトが激しく震え、周りの景色がだんだん見えなくなっていく。

 
 ウイドゥ・メーカー。という言葉がどこからともなく現れた。

 そうか、オヤジの中では伝説のバイクはマッハⅢではなく、このレディだったんだ。

 空気がだんだん湿り気をおび、ひやりとしてきた。しかし、この分厚いバトルスーツのおかげで寒さは感じない。はるか先方に自転車で走っている人がいた。

アクセル・オフ。

オヤジはその人を驚かせないように、静かに抜かしていった。

B峠の頂上。




久しぶりのレディとの出撃で、緊張のあまり背骨が痛み出してきた。







トイレに入ったあとに、自動販売機でブラックのショート缶のコーヒを選ぶ。(本当は疲れて、甘いものが欲しかったんだけど・・・・・あくまでもバトルスーツをきた男のイメージを崩さないように・・・・・・)

 コーヒーを飲んで一息付いたら、先ほどの自転車の人がやってきた。
その人は全身を真っ黒に焼けた青年であった。

「こんにちは。」と、お互い、どちらからともなく声をかけた。

「いゃーー。峠は大変ですねーー。バイクは良いなぁーー。こんな坂ひといきだもんあぁーー。」

 と、彼はオヤジに話しかけてきた。

「ところで、どのバイクに乗ってきたんですか??」
そこで、オヤジは「こいつ。」とレディを指差した。

「随分、小柄なバイクですねぇーー。どこのメーカーですか??」
待ってました!!「こいつは、ビー」と、オヤジはビューエルの事を話そうとすると、
「あっ!!もしかして、このバイク!!ビューエルですか??」
と、その青年は驚いたように話しかけた。
「あれっ??ビューエル知っているの??」

不思議なことに彼は車もバイクの免許も無いそうなのだが、ビューエルの事を知っていた。

「いゃーー珍しいなーー。こいつ。何ccあるんですか?」

「9Sだから1、000cc。」


「ひぇえーーっ。小柄なボディに1、000ccって、すさましい加速をするんでしょうねーー。」

「一体、何キロ出るんですか??」


「うーん。メータ-では250km/h刻んでいるけど、HDのエンジンだから、80km/hであたりが見えなくなり、100km/hで振動が激しくて、120km/hも出したら死神がささやきますよ。」
と、オヤジはビューエルの伝説を広めようと、その青年に吹聴した。

 聞くところによると、彼は栃木から飛行機で千歳に来て、千歳から滝川まで歩き、滝川の友人の父親に自転車をもらって、自転車でここまでやってきたわけであった。さらに、あてのない旅をしばらく続けるそうである。

  うーーん。最近、小さくまとまった若者が多い中、徒歩と自転車でこの広い北海道を旅をするなんて、彼の長い人生の中、きっと多くの経験をこの旅で得ていくんだろうなぁーー。

 彼の真っ黒に焼けた顔はやけにいい顔であった。

遠くを見るとだんだん黒い雲が広がっていった。

「うーーん。そろそろ雨が降り始めそうだねぇー。それでは気をつけて旅をしてください。」





と、彼と別れたオヤジは家路に急ぐのであった。


 30分後、無事に家に帰宅したオヤジであった。

帰宅後。






 
(これからもよろしくな。レディ。お前はオヤジの中での伝説のバイクだよ。)

 そう思いながら、レディの洗車をしていると、走り終えたエンジンが水に冷やされ、チンチンチンという音が、まるでレディの(こちらこそ。よろしくね。)という声に聞こえたような気がした。

 
 洗車が終わったあと、ポッリ。ポッリ。と雨が降り始め、その後、夕方まで雨足は途絶えることは無かった。

その後、雨は降り止まず今日も振り続いている。



 あの時、あの時間。

 まさしくオヤジはレディとういう伝説のバイクと共有した、輝く夏の一瞬であった!!








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