アイスバーン・サバイバル!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 数日前のことであった。その日はオヤジはいつもよりも5分、早めに会社に出社しなければいけなかった。


 そのため、いつもよりも15分早めに家を出た。時間的にはゆっくり走っても充分に会社に着くはずであった。

 走り出すといつもよりも車の挙動がおかしかった。

狙ったラインが取れない。

俗に言うアンダーステア状態(車両がコーナーの外側へ向く挙動)になっているのだ。


「いつもと違う!!まさかアイスバーンか??」と咄嗟にオヤジは身構えた。


 通常、日中のアイスバーンは路面が光ってスケートリンクみたいに見えるのですぐにわかるのだが、今日の路面はいつもと変わらない状態である。

 時速60km/hで走っている状態からすぐにアクセルから足を話す。

気のせいか車体が対向車線にはみ出そうとしている。

ふと前を見れば・・・・・




早速、対向車線の脇に落ちている車が1台。


「ヤバイ!!ヤバイ!やはりここはガチに滑る!」と慎重に車を走らせて200mもしないところで、また1台の車が落ちていた。




 

たった今落ちたようで、中のドライバーは呆然としていた。


刻々と時間が過ぎていく。しかし、会社には遅刻はできない。


オヤジは大胆にかつ慎重に、愛機、ミライースを運転していく。


途端にノロノロ運転の前走車が現れる。


アクセル・オフ。が、スピードは落ちない。


みるみるうちに前走車が迫ってくる。


が、ブレーキは絶対にかけられない。

いま、かけたら確実にスピンモードに陥り、路肩に叩きつけられてしまう。

 エンジン・ブレーキのみがたよりの綱である。


さらに前走車が近づく。


ついにオヤジはブレーキを入れ始めた。


ポンピングブレーキよりも素早い、マシンガン・ポンピングだ。


ミライースのタイヤはザッ!ザッ!ザッ!と何度も空転を始めるが、確実にスピードを落としていった。


車、2台ぶん程の車間を空け、前走車の後を走るオヤジ。


40分も走ると前に信号待ちの車が1台。


見れば、TOYOTAのフラッグ・シップ(最上級に位置するモデル)のレクサスであった。


久しぶりにオヤジの血が騒いだ。

「よし!!やってやろうじゃないの。」と、レクサスの隣に並ぶオヤジ。


信号を見る。前は誰もいない。

普通の道では全然かなわないレクサスだが、こんなアイスバーン状態の道では、繊細なアクセルワークがシグナル・グランプリの勝敗を決める。


シグナル・ブルー(青信号)!!


オヤジはミラ・イースのアクセルをベタ踏みにした。


 氷の路面でたちまちミラ・イースの前輪はドラッグレースのように、バーンアウトを起こし、軽い車体は左右に暴れまくった。


 バカ力で震える車体をオヤジは押さえつけて、右足を少し緩める。

路面の抵抗を取り戻した、ミライースはゆっくりであるが、確実に前進し始める。


横を見るとレクサスはまだ発進できていない。


「ふっ!勝ったな!!」


オヤジは満足げにイースで先頭をきって走り出した。

 数秒後にレクサスがものすごい勢いで、オヤジを追い越していった。


かたや200万円以下の軽自動車。かたや家を1件建てれるほどの金額の高級車。

さすがに軽に抜かされたら、フラッグ・シップの威厳もへったくれもない。

 アイスバーンはとても嫌ですが、その走り方によってはささやかな楽しみが伴う。


と、ニコニコしていたら、遠くでパトカーが赤色灯を回していた。


「気の毒だねぇーー。朝から捕まってるやつがいるよ。」


と、思っていたら、やがてパトカーは数台に増え、対向車線には大きな黒い塊が・・・・


「違反でない!!まさか事故か??」



と、スピードを起こしてゆっくり走っていると、片側2車線を塞ぐほどの多重衝突事故であった。



「くわばら。くわばら。明日は我が身。気をつけて走ろう!」


 と、さっきまでの威勢の良さは吹き飛んで、ノロノロ運転と化したオヤジであった。 


 こうして、オヤジは会社に着く頃にはヘトヘトに疲れきっていたのであった。





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