「それでも走り続ける2」ACT3 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

6 悲劇


「クソッ!!あのホライゾンというクラブの隊長という男。このままでは絶対に済まさないぞ。」

警察に逮捕されたランエボVのトライバーは、警察から出たあと、仁への復習を誓っていた。

 そして、彼の仲間の連中に連絡を取り合っていた。



あの事故から1週間が経った。

 麗羅(レイラ)はその後、みんなの勧めもあり、大型自動2輪の免許を取りに行くようになった。

また、廃車になったCB400SFの代車として、ヤマハ WR250 を自分の足としてバイク屋から借りていた。



再びクラブホライゾンのツーリングの日がやってきた。


 いつものように、先に行く奴は先に。ゆっくり走る奴らはゆっくりと。と各自、思うように走る仲間達であった。


 麗羅(レイラ)は借り物のバイクということで、今日は仁と一緒に走っていた。

今日は副隊長は先頭集団に行かせ、仁がシンガリを務めていた。


「なあ。麗羅(レイラ)。たまーにはゆっくりと走るのもいいだろう。」と、仁は麗羅(レイラ)に聞く。

「そうね。たまーにはね。」

「ゆっくりと走れば、見えない事も見えてくる。」

「お前がいつも一人ぼっちだと感じていたのは、他の人の優しさが見えてなかったからではなかったのか?」

 仁は麗羅(レイラ)を責める訳でもなく、ただ淡々と自分の想いを語った。

不思議と麗羅(レイラ)は仁の言葉を素直に受け取ることが出来た。


 と、その時。


「!」仁はバック・ミラーにある黒い影を認めた。

「麗羅(レイラ)先に行け!!どうやら、お前のバイクをお釈迦にした奴の仲間達みたいだ。」

「みんなに気をつけるように伝えてくれ。」

「わかったわ。」


すぐに加速状態に入る麗羅(レイラ)。


 気がつくと仁のZ1000nの周りを取り囲むように数台の車が寄ってきた。

「こいつら。一体何の真似だ!!」


バイクは車社会ではひ弱な存在だ。

ドライバーが殺意を持ってバイク乗りに絡んでくると、確実に事故を起こしてしまう。

あくまでも、ドライバーの意思によって、生かされてる。走れる存在なのだ。


 Z1000の右側面を舐めるように、ランエボVが寄ってくる。


コッン!!


軽く側面をZ1000に当てるランエボV。


「!!」


バランスを崩して転倒をする仁。

そしてそのまま、仁は左手をガードレールに巻き込み谷底に転落していった。



7 バイクを降りるとき。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


それから仁が気がついたのは3日後の病院にベットの中であった。

左手が妙に力が入らなかった。


そばには麗羅(レイラ)が心配そうに立っていた。

「あれから3日間も経ったのよ。あの時、あなたは、谷底に飛ばされて意識不明だったの。」

「助かったのは奇跡に近かったのよ。」

麗羅(レイラ)は涙目で仁を見つめていた。


それからすぐに回診の医者がやってきた。

「いゃーー。すごい回復力だねぇーー。一時期は君が危篤状態だったとは信じられないよ。」


仁は心配になっていることを恐る恐る先生に聞いた。


「先生。俺の左手。感覚が無いんです。もう一度、元に戻るのでしょうか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」医者は難しそうに無言で仁を見つめていた。


「俺。もう一度バイクに乗れるでしょうか?」


「無茶を言っちゃいかんよ。君の左手が元どうりに付いたことさえ奇跡なんだ。」

「普段の生活でさえ、ましてバイクに乗るなんて、言語道断だ!!」

「いいかい、焦らないでリハビリしていけば、普段の生活をすることはきっといっかは出来るよ。」

と、医者は厳しい言葉を仁にはいて去っていった。


「仁・・・・・」と麗羅(レイラ)は何かをしやべろうとした。


「一人にしてくれないか?」

「すまない。しばらく俺の元に来ないでくれないか。」


何も言えないで、悲しそうな眼差しを仁に向けて、去っていく麗羅(レイラ)。


 麗羅(レイラ)が去ったあと、始めて仁は泣いていた。

多分、生まれて初めて生きがいとなったバイク。それがもう2度と自分では乗れないと知った現実。

 誰もいない暗い病室の中、仁は恥も外聞も捨てて、ただひたすら男泣きに泣いた。


一週間後。


「隊長。キズの具合はどうなんでしょうね?」


「ええ。あれから私もしばらく会わないでくれ。と言われたから、様子が判らないの。」と麗羅(レイラ)


「ホライゾン。どうなるんでしょうねーー。俺、隊長のいないホライゾンなんか嫌ですよ。」


「そうだなぁーー。もともと、ホライゾンは、隊長が中心になって出来たクラブだからなぁーー。」としんみりと副隊長が話す。


 ホライゾンのメンバーが銘々と、仁と出会った時の思い出話を話していた。


と、その時、パジャマ姿の仁が現れた。


「隊長!!お元気出したか??」

驚くクラブの会員。


「よう。」その姿は、いつもの陽気な姿であった。


「麗羅(レイラ)悪いけど、お前のWR250、しばらく貸してくれないかな?」


「えっ。良いけど、仁。あなた左手の調子はどうなの?」


「ああ。医者にこれ以上、左手の握力の回復は無理だ。と言われたよ。」

「だから、バイクはもう2度と乗れないから、最後の走り納めに、1週間後に行われる、各クラブが集まるバイクミーティングに行ってくるよ。」


「これが 桐生 仁 バイク人生最後の走りだっ!!」


「隊長・・・・・」


「それと、ホライゾンの後継は副隊長の飯田。お前に任せる。後はよろしく頼む。」

「隊長!!俺!!嫌ですよ。隊長のいないホライゾンなんて。」と、飯田は急に泣き出した。






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