「それでも走り続ける。」ファイナル。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車




「それでも走り続ける。」ファイナル。

怜(レン)はひたすらトップを走る片山を追い続けた。

「来たな。カワサキ・ボーィ!!。怜(レン)。昨年、天才ライダーと言われた君とは一度、一緒に走りたいと思っていたところさ。」
「お前はこのハヤブサを凌駕するパワーを持つ14Rだが、俺のハヤブサは世界をまたにかけたマシンだ。所詮、お前のマシンとこのハヤブサとの差は歴然としているさ。」
 そう、片山は怜(レン)の気配を背中に感じながらつぶやいた。



 少しずつではあるが、怜(レン)確実に片山を追い詰めていった。そして、数週目にはついにメイン・ストレートで彼の後ろ姿を捉える事となった。

 時速300km/hでのストリップ・ストーム。
それは、大気の壁が立ちふさがり、流体の中を突き進む感覚にも似ている。
 両者がそれを行うと、トップスピードも数キロ伸びると言われる。

「霧島が前に出る!!前に出る!!」
「今、片山の横に並びました。」
「片山が踏ん張る。」
「ああっと。惜しい!!片山が先行しています。」

場内アナウンスはほとんど絶叫的に叫んでいた。

「S字から逆バンク、そしてダンロップコーナーと、と続きます。」
「テグナカーブ。ヘァピン。スプーンカーブを抜け、今、両車、バックストレッチに入ります。」
「霧島!!再び仕掛ける。両車、200馬力!!パワーとパワーのぶつかり合いだ!!」

「130Rからカシオトライアングルに入り、一気にハード・ブレーキングだーーーっ!!」
「フロントはフルボトム!!ローターからは火が吹いいています。」
「霧島、前に出る!出る!!」
「やりました!!ついに霧島!!片山を抜いてトップに踊り出ました!!」
「最終コーナーを抜けて、再びメインストレート!!」
「レースはいよいよファイナル・ラップです!!」
「泣いても、笑ってもこれで最後となります。」

 場内アナウンスが異様な雰囲気となっていた。

「只今、先ほどのラップでコース・レコードが出ました。」

「ラップタイムは2'09.889秒!!霧島です!!霧島怜(レン)がここ、鈴鹿のコースレコードをたった今、塗り替えました!!」

「速い!!霧島!!やはり天才ライダー霧島怜(レン)は健在でした!!」

周りの観客は総立ちとなり、怜(レン)に向かって歓声を上げた。

その雰囲気で片山は怜(レン)がコースレコードを叩き出したのを知った。

「やるな。怜(レン)天才と呼ばれたのは伊達じゃないいな。」
「しかし、俺も国際クラスのライダーだ!!国内のお前にやられっぱなしとは言わせないぞ!!」
と片山は更にハヤブサのスピードを増していった。


怜(レン)は今、何も考えてはいなかった。無我の境地。まさしくそれであった。

14Rの有り余るパワーで後輪が前輪に追いつこうとする。

怜(レン)はそれができると思い、そのまま行っていた。

マシンは斜めになりながらも、確実に前につき進んでいく。

最終コーナーが近づいて来る。

「スライド!!」

片山は国際GPでトップのごく一部のライダー達しか行わない走りを、今、怜(レン)の後ろ姿で重ねていた。
「なんで国内クラスのやつがスライドを使っているんだ!!」

そして、両車が最終コーナーを抜け出した!!

「先頭のマシーンは!!」

「霧島だ!!霧島怜(レン)が今、トップで通過!!」

「優勝。ゼッケン25番!!霧島怜(レン)!!マシンはカワサキZX-14R!!」

ピットの中では皆が泣いていた。涼子が、美里が、優奈が・・・・・
怜(レン)の監督さえ、帽子を深々とかぶり、涙を隠していた。





表彰式・・・・・・表彰台の真ん中に立つ怜(レン)は進藤幸の遺影を高々と空に掲げた。




周りの惜しみない拍手が延々と続いていた。



その年、霧島怜(レン)は引退を行い、全てのレース活動から身を引いた。



その後、彼の叩き出した鈴鹿のコースレコードは、2年間もの間破られることはなかった。









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