プレゼント | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車





プレゼント
    贈り物。
(その場に)居る。

  本日(11日)、某場所、某時間。(全然、説明になっていないじゃん。)

オヤジは珍しい人と対面した。
多分、ほとんどの読者からは、いや、オヤジ自身の心の中でさえ、本当にいるのかと疑わしかった、GTR33の使い魔伝説のSさんである。
 彼は、我がクラブ・ミッドナイトのファーストナンバーであり、旧型GTR33で現行の35Rを抜かすその硬派ぶりは、ミッド・ナイトの広告塔の役割を果たしていた。

 Sさんはオヤジのもとに実に30年ぶり近くに現われた。(写真を撮ると場所がばれるので、今日は画像無です。)
 しかし、その輝いている目は、昔となんら変わらなかった。
「オヤジ。久しぶり!」
「Sさん。元気にしてた?」

そして、やはり話は買ったばかりのRX-7:FC型で札幌からSさんと帰った夜中の高速での、ポルシェとのバトルの話しであった。
「いゃーー。ほんと、あの時は無茶苦茶な走りだったなぁーー。」
「何言ってるの、Sさん。今だって無茶苦茶な走りでしょう。」
「大体、旧型33Rで現行型35Rを抜かすなんて、普通じゃ考えられないでしょう。」
「もともと、33Rは32や34Rよりも評価が低く・・・」

と話し始めたオヤジにSさんは少しムッとしていた。
(それはそうでしょう。誰だって自分の愛機をけなされると、普通は良い顔なんかする人はいませんよね。)

「でもね、それは、一部のマンガのせいで、間違った情報を流されたせいなんだよね。今、調べると、結構、評価が高いんだよね。」というオヤジにSさんは、
「そうなんだよ。元々、真っ直ぐ走る車は曲がりづらいし、曲がる車は真っ直ぐに走りづらいんだよね。」
「33Rは、この相反する二つの性能と居住性を考えた車なんだよ。」

Sさんは熱いまなざしで、33Rの事を語りだした。

すこし、お互いの近況を語り終えた後、
「で、今日はまたいったい、東京から北海道までどうしたの?」
「うん。もろもろの事情でこっちに休暇で来たんだが、お互いもうこんな年だろう?」
「ああ。」
「多分、もう二度と会えないかもしれないから、今のうちに会える人に会っておこうと思ってね。」
「そうなんだ。」
オヤジの年になると、一部の人であるが同級生がもう亡くなり始めているのだ。
だから、Sさんの言っていることは、オヤジには充分すぎるほど判っていた。

「それじゃ。また。」と、Sさんは右手をオヤジに差し伸べた。
「ああ。またな。」と、オヤジは両手を差し出し彼と握手をして別れた。
(多分、これからもう2度とは会えることのない同士よ。)

Sさんとはたった数十分の短い出会いだった。しかし、それで充分であった。

Sさんと別れたオヤジの顔から不意に涙が流れた。
それは寂寥感でもなく、不意に現れたSさんとの再会の嬉しさでもなかった。

 遠く離れていても想いは一つで走り続ける。「決して夢を諦めない漢(おとこ)達。」と、誓いあった、クラブ・ミッドナイトの同士との別れの涙かもしれなかった。


プレゼント
    贈り物。
(その場に)居る。


 Sさんと出会ったオヤジには、今でも瞼を閉じれば、30年近く昔にSさんと一緒にポルシェを追っかけていった、あの真夜中の高速のFCの車内に自分の姿が居る。




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